第6話 地獄の底


私は先輩にバレそうになった。

この気持ちが、だ。

だけど今この気持ちを暴露するタイミングではない。

勿論、知ってほしいのはやまやまだが。

彼に負担をかけさせたくないのだ。


「じゃあゲームでもするか?」

「そうですね。当初の予定通りゲームでもしましょうか」


ゲームをして気でも紛らわそう。

そう思いながら私はゲーム機を借りる。

それから私はレトロゲームのカセットを眺める。

実際、私の家では見ない代物ばかり。


「有難う御座います。先輩。用意してくれて」

「そうだな。まあ父さんの持ち物だから」

「アハハ。お父様はゲーマーなんですね」

「というか幼い頃のゲームがそのまま残っていた、みたいな感じらしい」

「そうなんですね。羨ましいです」

「壊れるぐらいなら遊べって感じだな」

「そうだったんですね」


私はその言葉にゲームを眺める。

カセットは全部で50種類ぐらいはある。

有名企業のカセットばかり。

だけど今はもう無い企業のゲームもある。

その1つ1つを撫でる様にしながら選んだ。


そして2人で遊べるカセットを使って遊ぶ事にした。



無茶苦茶に楽しめた。

この胸の鼓動が高まる位には、だ。

私は心臓をドキドキさせながら車レースのゲームで優勝した。

その画面を見ながら先輩を見る。

先輩はニコッとしながら私を見ていた。


「有難う御座います。先輩。楽しめました」

「...ああ」

「...どうしたんですか?」

「いや。...お前の様子が気になるからな」

「私の様子ですか...大丈夫です。だいぶマシになりました」

「...大変だな。お前も」


そう先輩が言ってくれる。

私はその顔にドキッとしながら「エヘヘ」となる。

そして先輩に寄り添う。

それから私は画面を見る。


「ねえ先輩。来年も再来年も一緒にこうして居ましょうね」

「ああ。そうだな」

「...私、女優業。もう少し頑張ってみようかと思います」

「え?いきなりだな」

「...はい。先輩が居ます。相談する相手が居ますから」


先輩にそう言いながら私はコントローラーを置く。

それから「先輩。そろそろ帰ります」と言う。

その言葉に先輩は「そうか」と笑みを浮かべた。

そして玄関先まで送ってもらう。


「...とにかく気を付けて帰れよ」

「はい。...先輩。有難う御座います」

「何か帰り道が少しだけ不安なんだが。お前の」

「私はもう大丈夫です」


そして玄関を開けてから先輩にお辞儀をする。

それから私は先輩に挨拶をしてから表に出てから歩き出す。

そうしてから暫く歩いているとつけられている事に気が付いた。

新聞記者か何か。

そう思って振り返るとそこに女子が居た。


「...アンタ」

「...な、何」

「もしかして飯田翔?」

「そ、そうだけど」

「つけまわして何がしたいの?」

「...貴方、女優でしょ。...そ、そんな高みで何で彼を取るの」


何を言っているんだこのボケナス?

そう思いながら私は彼女を睨む。

するとその飯田は「...わ、私は話をしたけど全然ダメだったから。貴方と話をしてから考えていこうって思って」と言ってくる。


「...貴方は心底のアホですね」

「彼と私では一対一では話にならないから。あ、貴方も...」

「いや。訳が分かりません。話をする事は無いです。では」


飯田を捨てて私は歩き出す。

すると飯田は「貴方の事、暴露する。色々な事を」と言ってきた。

私は額に手を添える。

それから踵を返す。

そして飯田を睨んだ。


「...それはどういう意味ですか?私の女優業を廃業させたいと?」

「そ、そうだけど。彼を取った責任を...」

「馬鹿ですか?」

「わ、私は...反省もしている。2人目の彼も捨てたから」

「は。そういう問題じゃないです。貴方が浮気したのが問題ですよ」

「...わ、私は...」


ムカついた。

それから私は「私は、私はってマジにうっさいですね!!!!!」と大声を発する。

それから眉を顰める。

このクソ馬鹿女。


「彼は本当に心の底から酷く傷ついています。貴方は何も分かっちゃいない。貴方はセックスもしてないそうですが...もう二度と近付かないで下さい。私達に」

「貴方にそう言う権利は...」

「あります。...私は彼のパートナーだ」

「...貴方は恋人じゃないで...しょ!」

「恋人じゃないとかそういう次元の問題ですかね?今の問題って。違いますよね?貴方より年下ですけどそれぐらい分かります」


私は彼女をキツく睨む。

そして「貴方は死んでもいいぐらいです。何べんか反省して死んでもいいぐらいです。だけど彼が甘いから生かしていますが。...貴方は反省して下さい。目先の事じゃ無くて」と厳しく非難する。

すると彼女は「...」となって何も言えなくなる。


「この際だから彼に代わって言います。...貴方は最低最悪にやっています。今のままじゃ堕ちて行くだけです」

「わ、私は...」

「またそれですか?」

「...」


悔しそうに睨んでくる飯田。

私は踵を返した。

それから私は歩き出す。


頭にくる、と言うかこのまままだあの場所に居たら。

多分、私は彼女を殴っている。

だから頭を冷やさないと。

イライラが収まらない。

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