第6話 地獄の底
☆
私は先輩にバレそうになった。
この気持ちが、だ。
だけど今この気持ちを暴露するタイミングではない。
勿論、知ってほしいのはやまやまだが。
彼に負担をかけさせたくないのだ。
「じゃあゲームでもするか?」
「そうですね。当初の予定通りゲームでもしましょうか」
ゲームをして気でも紛らわそう。
そう思いながら私はゲーム機を借りる。
それから私はレトロゲームのカセットを眺める。
実際、私の家では見ない代物ばかり。
「有難う御座います。先輩。用意してくれて」
「そうだな。まあ父さんの持ち物だから」
「アハハ。お父様はゲーマーなんですね」
「というか幼い頃のゲームがそのまま残っていた、みたいな感じらしい」
「そうなんですね。羨ましいです」
「壊れるぐらいなら遊べって感じだな」
「そうだったんですね」
私はその言葉にゲームを眺める。
カセットは全部で50種類ぐらいはある。
有名企業のカセットばかり。
だけど今はもう無い企業のゲームもある。
その1つ1つを撫でる様にしながら選んだ。
そして2人で遊べるカセットを使って遊ぶ事にした。
☆
無茶苦茶に楽しめた。
この胸の鼓動が高まる位には、だ。
私は心臓をドキドキさせながら車レースのゲームで優勝した。
その画面を見ながら先輩を見る。
先輩はニコッとしながら私を見ていた。
「有難う御座います。先輩。楽しめました」
「...ああ」
「...どうしたんですか?」
「いや。...お前の様子が気になるからな」
「私の様子ですか...大丈夫です。だいぶマシになりました」
「...大変だな。お前も」
そう先輩が言ってくれる。
私はその顔にドキッとしながら「エヘヘ」となる。
そして先輩に寄り添う。
それから私は画面を見る。
「ねえ先輩。来年も再来年も一緒にこうして居ましょうね」
「ああ。そうだな」
「...私、女優業。もう少し頑張ってみようかと思います」
「え?いきなりだな」
「...はい。先輩が居ます。相談する相手が居ますから」
先輩にそう言いながら私はコントローラーを置く。
それから「先輩。そろそろ帰ります」と言う。
その言葉に先輩は「そうか」と笑みを浮かべた。
そして玄関先まで送ってもらう。
「...とにかく気を付けて帰れよ」
「はい。...先輩。有難う御座います」
「何か帰り道が少しだけ不安なんだが。お前の」
「私はもう大丈夫です」
そして玄関を開けてから先輩にお辞儀をする。
それから私は先輩に挨拶をしてから表に出てから歩き出す。
そうしてから暫く歩いているとつけられている事に気が付いた。
新聞記者か何か。
そう思って振り返るとそこに女子が居た。
「...アンタ」
「...な、何」
「もしかして飯田翔?」
「そ、そうだけど」
「つけまわして何がしたいの?」
「...貴方、女優でしょ。...そ、そんな高みで何で彼を取るの」
何を言っているんだこのボケナス?
そう思いながら私は彼女を睨む。
するとその飯田は「...わ、私は話をしたけど全然ダメだったから。貴方と話をしてから考えていこうって思って」と言ってくる。
「...貴方は心底のアホですね」
「彼と私では一対一では話にならないから。あ、貴方も...」
「いや。訳が分かりません。話をする事は無いです。では」
飯田を捨てて私は歩き出す。
すると飯田は「貴方の事、暴露する。色々な事を」と言ってきた。
私は額に手を添える。
それから踵を返す。
そして飯田を睨んだ。
「...それはどういう意味ですか?私の女優業を廃業させたいと?」
「そ、そうだけど。彼を取った責任を...」
「馬鹿ですか?」
「わ、私は...反省もしている。2人目の彼も捨てたから」
「は。そういう問題じゃないです。貴方が浮気したのが問題ですよ」
「...わ、私は...」
ムカついた。
それから私は「私は、私はってマジにうっさいですね!!!!!」と大声を発する。
それから眉を顰める。
このクソ馬鹿女。
「彼は本当に心の底から酷く傷ついています。貴方は何も分かっちゃいない。貴方はセックスもしてないそうですが...もう二度と近付かないで下さい。私達に」
「貴方にそう言う権利は...」
「あります。...私は彼のパートナーだ」
「...貴方は恋人じゃないで...しょ!」
「恋人じゃないとかそういう次元の問題ですかね?今の問題って。違いますよね?貴方より年下ですけどそれぐらい分かります」
私は彼女をキツく睨む。
そして「貴方は死んでもいいぐらいです。何べんか反省して死んでもいいぐらいです。だけど彼が甘いから生かしていますが。...貴方は反省して下さい。目先の事じゃ無くて」と厳しく非難する。
すると彼女は「...」となって何も言えなくなる。
「この際だから彼に代わって言います。...貴方は最低最悪にやっています。今のままじゃ堕ちて行くだけです」
「わ、私は...」
「またそれですか?」
「...」
悔しそうに睨んでくる飯田。
私は踵を返した。
それから私は歩き出す。
頭にくる、と言うかこのまままだあの場所に居たら。
多分、私は彼女を殴っている。
だから頭を冷やさないと。
イライラが収まらない。
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