第4話 四捨五入
☆
放課後になった。
私は仕事があった為にその日はそのまま先輩と別れた。
それから私は学校から出てから事務所に来る。
事務所ではマネージャーが仕事をしていた。
私に気が付いたのか顔を上げた。
「おう」
「マネージャー」
「何だかいつも以上に元気ってな顔してんな。どうした?」
マネージャーの柴田博(しばたひろし)さん。
四角い眼鏡を掛けている少しだけ厳つい顔だが内心は柔和な男性。
30代ぐらいだと思うが具体的な年齢は知らない。
私は「そう見えます?」と柔和になる。
「ああ。いつも以上には」
「まあ...そうですね。ちょっと嬉しい事がありました」
「ほう。それはもしかして例の男の子との事か」
マネージャーはそう言いながら私を見る。
恋愛禁止とはなってない事務所。
その為に博さんは時折、こうして色々と学生生活を揶揄ってくる。
椅子に座りながらニヤッとする。
「...そういう関係じゃないですよ」
「だけどそう言うけどお前は好きなじゃないのか?彼が」
「...気になって無いです。...彼には彼女さんが居るので」
「そうか」
マネージャーは私の言葉に苦笑する。
そして「...お前とその聞いている彼とはお似合いだと思うけどな」と肩をすくめる。
私はその言葉に「まあ確かにですね。...私、彼にだけは何でかこうして接する事が好きなので」と言う。
するとマネージャーは後頭部に手を添えて天井を見上げた。
「...お前の生きていく大変さは知っているからな。...その分、幸せになってほしいと思っているからな」
「有難う御座います。...マネージャー」
「...多分これは親としての...感情だろうな」
「...娘さん可愛いですもんね」
マネージャーは恥じらう様にはにかむ。
それから頬を掻いた。
この前、マネージャーに娘さんが誕生した。
結婚したのがこの前の様でビックリなのだけど。
だけど幸せになっている様で嬉しい。
「...私を...ずっとマネージャーはデビューの頃から支えてくれていますから幸せになってくれて嬉しいです」
「...ああ」
「母親が交通事故死したあの日。中学生だった私は...彼に励ましてもらったんです。それで彼が気になっているんでしょうね」
「...そうだったんだな」
私は時計を見る。
それから「マネージャー。仕事ですから」とニコッとする。
マネージャーは予定表をスマホと手帳をそれぞれ開いて確認する。
そして「そうだな」と返事をする。
「陸羽。今日の予定は...」
マネージャーは私に説明し始める。
それをゆっくり聞きながら私はマネージャーと一緒に事務所を出る。
それから車に乗ってから私達は移動を開始した。
仕事場に向かう。
☆
陸羽が仕事に向かったので俺は自宅に帰る事にした。
そして俺は歩いていると「陶冶」と声がした。
イラッとしながら俺は背後を見る。
そこに...飯田翔が居た。
俺を見据えている。
「何だ。...何の用事だ」
「そ、その。えっと」
「...早くしてくれないか。何の用事だ」
「よ、用事は...そ、その。浮気が悪かったって思っているって...」
「で?」
「い、いや。で?、って言われても...そ、その」
「はあ...お前は馬鹿だな。マジに」
コイツ反省が無い。
そう思いながら俺はアホを見る。
すると飯田は汗をかきはじめ。
それから俺を見てくる。
「悪かったから...そ、その。別れないでほしい。取り消してほしい」
「心底馬鹿野郎だなお前。するわけ無いだろ。というか何の為に?」
「わ、私は..,彼氏に捨てられた、から。黙っていたら...大変な事になった」
「そいつは大変だな。じゃあな」
俺はそう言いながら飯田を見る。
それを無視して歩くと飯田が「ま、待って。本当に私が悪かったの。だ、だから慈悲を下さい...」と涙目で言ってくる。
ありえないぐらいマヌケだな。
「正直、俺はお前に期待していた」
「!」
「彼氏彼女関係だからさ。あくまで相手を信じたかったんだ」
「...!」
「だが今のお前にはマジに強い恨みしかない。ただただ強い恨みしかない」
「...」
「お前を信頼していた俺が馬鹿だった」と言いながら俺は飯田を見る。
飯田はビクッとしてから「...」となって泣き始める。
泣いても全てが遅い訳で。
俺は飯田から離れてまた歩き出す。
「待って。でもまだ関係性は回復出来る!関係性はまだ...大丈夫だから。いけるから!」
「何が大丈夫なのか説明しろ。馬鹿かお前」
「えっと...えっと」
飯田は言葉に詰まる。
それから「...ま、まだ2回しか。いや。まさに性行為とかはしてない!」と慌ててから言葉を発した。
俺は「...で?」となる。
そして「どん底に堕ちたな。お前」と言い放つ。
すると飯田は俺の肩を掴んだ。
「お願いだから私を捨てないで...!」
そう言いながら飯田は涙を流す。
流石にイライラしてきた。
俺は「離せコラ!」と言いながら暴れる。
そして俺は飯田を突き飛ばした。
飯田は勢いよく尻餅をつく。
そんな飯田に言い放った。
「いや。調子に乗るな。俺はお前を許したとかまだ思ってないからな。確かに若干、甘い言葉はかけたけど」
「...!」
俺の言葉に飯田は「ゴメンなさい」と静かに泣き始める。
またこれか。
かつてから思っていたが。
鬱陶しい。
「泣いて謝って済む問題じゃない。お前は全てが甘すぎる」
「...はい」
「...じゃあな」
それから俺はそう告げてから泣いている飯田を捨ててから、今度こそ、と思いながらその場を後にした。
最早、一分一秒もこの場所に居たくない。
クソ以下だ。
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