第4話 四捨五入


放課後になった。

私は仕事があった為にその日はそのまま先輩と別れた。

それから私は学校から出てから事務所に来る。

事務所ではマネージャーが仕事をしていた。

私に気が付いたのか顔を上げた。


「おう」

「マネージャー」

「何だかいつも以上に元気ってな顔してんな。どうした?」


マネージャーの柴田博(しばたひろし)さん。

四角い眼鏡を掛けている少しだけ厳つい顔だが内心は柔和な男性。

30代ぐらいだと思うが具体的な年齢は知らない。

私は「そう見えます?」と柔和になる。


「ああ。いつも以上には」

「まあ...そうですね。ちょっと嬉しい事がありました」

「ほう。それはもしかして例の男の子との事か」


マネージャーはそう言いながら私を見る。

恋愛禁止とはなってない事務所。

その為に博さんは時折、こうして色々と学生生活を揶揄ってくる。

椅子に座りながらニヤッとする。


「...そういう関係じゃないですよ」

「だけどそう言うけどお前は好きなじゃないのか?彼が」

「...気になって無いです。...彼には彼女さんが居るので」

「そうか」


マネージャーは私の言葉に苦笑する。

そして「...お前とその聞いている彼とはお似合いだと思うけどな」と肩をすくめる。

私はその言葉に「まあ確かにですね。...私、彼にだけは何でかこうして接する事が好きなので」と言う。

するとマネージャーは後頭部に手を添えて天井を見上げた。


「...お前の生きていく大変さは知っているからな。...その分、幸せになってほしいと思っているからな」

「有難う御座います。...マネージャー」

「...多分これは親としての...感情だろうな」

「...娘さん可愛いですもんね」


マネージャーは恥じらう様にはにかむ。

それから頬を掻いた。

この前、マネージャーに娘さんが誕生した。

結婚したのがこの前の様でビックリなのだけど。

だけど幸せになっている様で嬉しい。


「...私を...ずっとマネージャーはデビューの頃から支えてくれていますから幸せになってくれて嬉しいです」

「...ああ」

「母親が交通事故死したあの日。中学生だった私は...彼に励ましてもらったんです。それで彼が気になっているんでしょうね」

「...そうだったんだな」


私は時計を見る。

それから「マネージャー。仕事ですから」とニコッとする。

マネージャーは予定表をスマホと手帳をそれぞれ開いて確認する。

そして「そうだな」と返事をする。


「陸羽。今日の予定は...」


マネージャーは私に説明し始める。

それをゆっくり聞きながら私はマネージャーと一緒に事務所を出る。

それから車に乗ってから私達は移動を開始した。

仕事場に向かう。



陸羽が仕事に向かったので俺は自宅に帰る事にした。

そして俺は歩いていると「陶冶」と声がした。

イラッとしながら俺は背後を見る。

そこに...飯田翔が居た。

俺を見据えている。


「何だ。...何の用事だ」

「そ、その。えっと」

「...早くしてくれないか。何の用事だ」

「よ、用事は...そ、その。浮気が悪かったって思っているって...」

「で?」

「い、いや。で?、って言われても...そ、その」

「はあ...お前は馬鹿だな。マジに」


コイツ反省が無い。

そう思いながら俺はアホを見る。

すると飯田は汗をかきはじめ。

それから俺を見てくる。


「悪かったから...そ、その。別れないでほしい。取り消してほしい」

「心底馬鹿野郎だなお前。するわけ無いだろ。というか何の為に?」

「わ、私は..,彼氏に捨てられた、から。黙っていたら...大変な事になった」

「そいつは大変だな。じゃあな」


俺はそう言いながら飯田を見る。

それを無視して歩くと飯田が「ま、待って。本当に私が悪かったの。だ、だから慈悲を下さい...」と涙目で言ってくる。

ありえないぐらいマヌケだな。


「正直、俺はお前に期待していた」

「!」

「彼氏彼女関係だからさ。あくまで相手を信じたかったんだ」

「...!」

「だが今のお前にはマジに強い恨みしかない。ただただ強い恨みしかない」

「...」


「お前を信頼していた俺が馬鹿だった」と言いながら俺は飯田を見る。

飯田はビクッとしてから「...」となって泣き始める。

泣いても全てが遅い訳で。

俺は飯田から離れてまた歩き出す。


「待って。でもまだ関係性は回復出来る!関係性はまだ...大丈夫だから。いけるから!」

「何が大丈夫なのか説明しろ。馬鹿かお前」

「えっと...えっと」


飯田は言葉に詰まる。

それから「...ま、まだ2回しか。いや。まさに性行為とかはしてない!」と慌ててから言葉を発した。

俺は「...で?」となる。

そして「どん底に堕ちたな。お前」と言い放つ。

すると飯田は俺の肩を掴んだ。


「お願いだから私を捨てないで...!」


そう言いながら飯田は涙を流す。

流石にイライラしてきた。

俺は「離せコラ!」と言いながら暴れる。


そして俺は飯田を突き飛ばした。

飯田は勢いよく尻餅をつく。

そんな飯田に言い放った。


「いや。調子に乗るな。俺はお前を許したとかまだ思ってないからな。確かに若干、甘い言葉はかけたけど」

「...!」


俺の言葉に飯田は「ゴメンなさい」と静かに泣き始める。

またこれか。

かつてから思っていたが。

鬱陶しい。


「泣いて謝って済む問題じゃない。お前は全てが甘すぎる」

「...はい」

「...じゃあな」


それから俺はそう告げてから泣いている飯田を捨ててから、今度こそ、と思いながらその場を後にした。

最早、一分一秒もこの場所に居たくない。

クソ以下だ。

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