第15話 父親

 僕は今戦っている、弟であり相棒だった奴と⋯。

「貴様が生き返ったところで我の方が強いことに変わりはない!」

「人質を取って勝ったのに随分美化しているんだな。僕は歴代“四龍”最強と言われた男だぞ!」

「〈溶岩龍〉《改式・乱打》!」

 ディードがそう唱えると龍を形作った溶岩が四方八方から僕に向かって進んで来た。

「昔は僕との共同でやっとだったのに今や“乱式”まで使えるようになっているとは予想外だ。でも時間が無いんだ、死んでくれ 術式改変〈◼〉」

 そう唱え溶岩の波を粉雪へと変えた。

「なんだ!?その術は!」

「やっぱりは強いな。終わりにしよう 〈時間軸上昇クロックアップ〉“四速トップ”」

 そう唱え最高速度で殴りかかった僕の拳を難なく受け止めた。

「ずっと思ってたんだ時間軸上昇それを攻略したいってな。〈時間軸脱線クロックアウト〉 それが我の出した答えだ」

「そうか⋯でも残念だ」

「なに?」

「時間切れだよ。後は任せていいかな?

 そう言って僕は意識を手放した。


──────────────────


「後は任せていいかな?エンブ」

 そう言われた瞬間俺の意識は身体に戻っていた。

「雰囲気が変わった?!」

「お前か⋯。とっとと終わらせよう」

「どうなっているのかは知らんが、相手が誰だろうと同じことだ。その身体にテッドがいるのなら殺さないとな」

「お前を殺してやるよ 魔術〈炎槍・激〉〈時間軸上昇クロックアップ三速トップ”《改式・付与》」

「〈身体能力強化・土〉〈土流壁〉〈時間軸脱線クロックアウト〉」

 矛と盾のぶつかり合いそれは一見互角に思えたがそもそもとして戦場において矛と盾がひとつずつしかないということはありえない。

「〈回震撃〉!」

 そうディードが唱えた瞬間俺の足場は蠢き脚を絡め取り揺らしてきた。

「〈炎槍雨〉」

 そう唱え上空に無数の“炎槍”を作り落とした。

「〈石流柱〉」

 しかし自由落下程度の速度しか出ていないそれは簡単に伏せがれてしまった。

 だが気を向けさせるには十分だった。

 その隙を突き拳に炎を操り鳥の形にしたものを纏わせ殴りかかった。

 隙を突かれ時間軸にも干渉していないそれはディードにとっては耐えるしか選択肢がなかった。

「〈土流壁〉〈石流柱〉〈身体硬化〉」

 ディードはできる限りの防御を行った。

 〈時間軸脱線クロックアウト〉を除いて⋯⋯。

「〈時間軸上昇クロックアップ〉“一速ロー”」

 “一速ロー”は〈時間軸上昇クロックアップ〉で唯一速度が上がらない。

 だがその代わりに行動のが変わる。

 重くなった行動は世界に

 つまり時間に再干渉しない限り防御不可だ。

「〈フェニックスナックル〉!」

 俺の放った技が炸裂した。

 それは防御を全て破壊しディードを焼いた。

 

「我は⋯俺は!兄貴を超えたかっただけなのに⋯」

「ミーナに手出してなかったら仲良くなれたかもな⋯。“死の海”で後悔しろ」

 そう言ってディードの首を落とした。



「終わった?」

 そう話しかけて来たのはミーナだった。

「あぁ そっちの方はどうだった?」

 そう言いながら歩き始めた。

「残党は一部を除いて全員殺したわよ。フーカもカエラが見てるから大丈夫」

「それよりって本当なの?」

「なんだよ。信じたから着いてきたんじゃないのか?」

「あんなこと言われてすぐに信じる方がおかしいでしょ」

「そうかもな。だがもう大丈夫だからな」

「そうだね。ありがと」

 そんな会話をしながら歩きフーカの居る建物に着いた。


「フーカ大丈夫か?」

 俺がそう話しかけたフーカはまだ身体に力が入らず項垂れていた。

「大丈夫そうに見える?」

「お前が掛けられたスキルは時間経過解除系だ。この系列は術者が定期的に更新しないといけない代わりに術者が死んでもしばらく効力が続く」

「えっ!私いつまでこのままなの?」

 そんな少し恐怖を感じる声色のフーカに自分の分かる情報を与えた。

「フーカは動けるようになるのに2日、完全回復が40日で、シビルは動けるようになるのに20日、完全回復はいつになるのかわからん」

「そんなに⋯⋯」

「だがまぁ そもそも目安だし何か急ぎの用がある訳でもないだろ、安静にしてろ」

「そうも言ってられないと思うけど?」

 そう言ってきたのはミーナだった。

「何故?」

「ディードはあなたのことを警戒してたから慎重に行動してたけど、多分次は大胆な所に依頼が行くと思うからよ」

「でもダスは有名なんだろ、そいつを倒したとなったら普通は絡まないんじゃないのか?」

「1つ教訓。普通な人は暗殺者なんかやらない」

「⋯確かに、違いない」


──────────────────

 

 その会話から一呼吸おきエンブは話し始めた。

「お前ら3人はこれからどうする?ミーナとは話したがそれを変えなくていいか?」

「私は大丈夫。あれで問題ないわ」

「じゃあ残りは2人だ。どうする?」

(私の今の生きる目的は⋯⋯)

「私はエンブについて行きたい」

「ワニャは姉貴について行くッス」

「そうか。なら治してやる、フーカ左目見せろ」

 そう言いながらエンブは横たわっている私の焼けた左目に触れた。

「痛みはあるか?」

「残念なことにないわね」

「多分眼球までいかれてんな。ディードの奴少しぐらい考えて行動しろよ」

 そんな愚痴をこぼしつつエンブは私の左目に回復魔法を掛けた。

「表面の火傷は痕が残らないようにできたが眼球までは治せなかった。すまんな」

「いえ。少しでも治してくれただけありがたいわ」

「ごめんねフーカ、私の治癒系魔法は欠損までは治せないから⋯」

「大丈夫だよ。ミー姉は居るだけで私に“意味”をくれる」

「⋯⋯⋯」

「決まったな。フーカが動けるようになり次第この国を出る。ミーナとカエラはこの国に残りを助けてやってくれ」

「それじゃあ、寝る?」

「そうだな、俺はディードの部屋使うわ。おやすみ」

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