第14話 養父

 私はエンブから渡された水筒を持ち上げて森を出ようと歩き出した。

 その途中、エンブとの会話で機嫌を損ねてふて寝してしまったしーちゃんを呼んで会話を始めた。

「しーちゃん」

『なに?』

「起こした?」

『ふーちゃんに呼ばれたらどんな深い眠りからでも目覚めるよ』

「⋯⋯私は今から危険なことをしに行くの」

『大丈夫!ふーちゃんにはアタイがついてるからね』

「⋯⋯しーちゃんには手を出さないで欲しいの⋯たとえ私が死にそうでも⋯」

『⋯⋯分かった!アタイは理解ある“彼女”だからね。ふーちゃんがやりたいことは止めないよ。それにふーちゃんが死ぬ訳が無いからね』

「ありがと」

 もう一度心を決めて家へ⋯敵の居る所へ〈影移動〉で移動した。


  

 スキルを発動させて家に着いた。

 その瞬間、槍が体を掠めた。

(!!待ち伏せ)

「お前を殺せば俺は昇進だ!」

「邪魔」

 そう言って首を刎ねた。

「〈探知〉⋯⋯所属者の大半が居る?!」

(昇進とか言ってたし2人になった四龍の座を報酬にしているのか⋯あのクソ野郎めんどくさいことをしてくれるな)

 そんな考え事をしていると壁があったため少しこもっていたが大きな声が聞こえた。

「“風龍”の反応を確認!2階です!」

「チッ 探知系持ちか」

 部屋から飛び出て向かって来る奴らを斬り伏せた。

(姉さん達が居ないのが気掛かりだけど大丈夫だと信じたいわね)

「アイツは酒場に堂々と居る。舐めやがって!」

 怒りが湧き上がりそうになりながらも押さえ込み冷静になって考えた。

(私はアイツの強さを詳しくは知らない。弱くなってたらそれでいいけどそんな訳がない。私達4人の師匠だから)


 

 歩を進め敵を殺して仇の下に着いた。

「久しぶり⋯って程でも無いか。こんばんはギルドマスター」

「嫌味のつもりか“風龍”」

「アンタは私が殺す!」

「やれるものならやってみろ三流」

(シビルとの契約で私は魔力も身体能力も大幅に向上している。負ける訳がない⋯いつもならそう言い切ってるんだろうな)

「〈風龍〉!」

 私が放った龍を象った風が相手に迫る。

「最初から最大火力か。言ったはずだぞ初撃は2番目以下だと」

 そう言いながら〈風龍〉を容易く消してしまった。

「この魔術は我が作ったのだぞ。術式の改変など造作もない」

「バカ言わないでよ。私の2作った魔術よ」

「⋯⋯記憶が戻ったのか⋯ 火水複合〈蒸気龍〉」

 龍を象った膨張する蒸気の塊が私に迫ったが触れる前に〈影移動〉で避けた。

「こんな程度で死ぬなよ 火風複合〈蒼炎龍〉」

「舐めんな!それは私のために作られた魔術よ! 火風複合〈蒼炎龍〉!」

 相手の出した龍を象った青い炎にぶつけるように私も作り出した。

 だがそこには熟練度の差があった。

 私の〈蒼炎龍〉を打ち消し避けようとしていた私の左目を焼いた。

「クッ!ァ゛」

「お前の戦い方は知っている。お前が記憶を失う前から見てきたからな。避けようとするのは悪い癖だ。今のように簡単に先を読まれ隙を突かれる」

「あ〜あ、説教?随分余裕ね」

『ふーちゃん!本当に大丈夫?!』

「ちょっとヤバいかもだから借りるね。しーちゃん」

(ほんとに私はダメダメだ決めたことをすぐに変える。スキル発動〈魔鎌召喚〉)

「来なさい!魔鎌〈シビル〉!」

 そう唱えシビルを鎌の形にして呼び出した。

「!?鎌だと、ダズが残した悪魔では無いのか!」

「成り行きで、ね」

「まぁいい、お前が悪魔に頼った時点で我の勝ちだ スキル〈悪魔の否定デーモンディナイアル〉」

 その時私の身体中の力が抜けて床に倒れた。

「なぜダズが悪魔との契約を解消して封印したのか考えなかったのか?」

「なに?」

「我のスキルは悪魔の“力”を消すのだ。そしてその影響は悪魔の契約者にも及ぶ」

「なるほどね、だから宝玉が簡単に盗めた訳だ」

「“風龍”本当に戻る気は無いのか?」

「⋯⋯地獄に落ちとけクソジジイ」

 その一言を残し私は目を閉じた。

 だが私に攻撃が来ることは無くその代わりにキーンという金属音がなった。

「大丈夫か?フーカ」

 と最近よく聞く声が聞こえた。

「エンブ!」


──────────────────

 

「貴様なぜここに!」

が居たらまずいかい?ディード」

「なぜ貴様が我の名を!」

「こんな程度で死ぬなよ〈時間軸上昇クロックアップ〉“二速セカンド”」

 そう唱えて僕は殴りかかった。

 ⋯が、それは受け止められていた。

「勘は衰えてないみたいだね」

「今のは!それを使えるのはだけのはず!なぜ貴様が!」

「もう答えは出ているじゃないのかい?」

「まさか!貴様!なぜ生きている!」

「死んださ。僕ももね」

 そう寂しく呟きながら壁を壊して外へ投げ出した。

「フーカが近くに居るとやりずらいからね。ここでやろうか」

⋯聞いた時にまさかとは思ったがまさか本当に貴様だったとは」

「君を倒したら襲撃は終わるのかな?」

「暗殺を生業とするギルドはここだけではないことは知っているだろう」

「そういう意味じゃない。君の強さは裏でにどれだけ有名なんだい?」

「なるほどな、そういう意味か。それならば“土龍”ダズの方が有名だがお前にとっては変わらんな」

「オーケー。ならあと2つだけ。なんでまで殺した」

「どちからと言えば貴様の方がついでだ」

「そうか⋯⋯。最後に1つ、ミーナの髪をのはお前か」

「言っている意味が分からんな」

の体質を忘れたとは言わせねえぞ」

「ああ、そのことかならば肯定しておこうか」

「⋯もうこの世に未練は無いか!ディード!」

「こっちのセリフだ!テッド!」

「最後のだ!」

 そうして僕たちは喧嘩殺し合いを始めた。

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