第10話 不死鳥
俺は今ファース王国の最果ての土地“始まりの森”にいる何故ならばこの森の奥地の“神殿”に用があるからだ。その用とは“幻獣”と契約をすること⋯。
「久しぶりに来たな⋯とは言っても1週間程度か⋯⋯」
そんな独り言を呟きつつ歩を進めて“大扉”の前まで来た。
「魔術〈意思伝達〉」
俺は古代に使われていた言語を用いて合言葉を唱えた。
『我契約者となりて世界を掻き乱す者』
そう唱えた直後に“大扉”が動き出し俺に見合う幻獣の居る場所へと空間を繋げるのだった。
「少し緊張してきたな⋯⋯まぁ なるようになるだろ」
そんなことを思いながら俺は淡く光っている空間の歪みへと歩を進め、その光に身を包んだ。
光が収まるとそこは無限に続いていると感じられるほどに広大な全面が白い空間に居た。
「何も無い⋯⋯」
そう思いながら周りを見渡していると小さな火種を見つけた。
その火種が大きくなり鳥の形になった。
『そう感じるか?』
その言葉が頭に直接入り込んで来たような感覚と共に気持ち悪さを覚えた。
「これが俺と初代の幻獣の“格”の差か⋯⋯」
『何故お前のような混じりものがここに来た?』
そんなことを言われ少し戸惑ったがあの時から決めていた野望を言った。
「俺が!アイツを超えるためだ!」
『“創造主”に歯向かうのか?』
「それが“今”の俺が生きる意味だ!」
『世迷いごとを⋯我の“力”が欲しいのならば示せ!貴様が我の“力”を使いこなしヤツを超えられる可能性を!』
そう言って目の前にいる火の鳥は俺の見た目を模した人形を生み出した。
『コイツには“今”のお前に“今”の我の“力”を一厘も満たないほどだが与えた。超えろ!“今”のお前を』
その時、俺は足がすくんでいた。理由は簡単だ。圧倒的な力の差を感じていたからだ。
(これで弱体化してかつ封印されている状態。これが⋯⋯初代の中でも最強と言われた幻獣の“力”⋯その一端!)
「ありがとうな」
『どうした?』
「“今”の俺に超えられる程度の壁にしてくれて⋯⋯」
(そうだ。目の前にいるのは今の俺が耐えられるだけの“力”しか与えたられていない人形だ。その気ならば本体で戦ってもいいのにこいつはそれをしなかった。なら!その期待に!応えてやるぞ!)
「俺は今!この瞬間に!寸秒前の自分を超える!」
『示せ!我にお前の可能性を!』
(相手は俺にできることは全部できるがスキルはアイツが創ったものだ。いくら幻獣でも再現はできない。だが!それで勝負したら俺は俺を超えられない!だったら真正面からぶつかり合う!)
「魔術〈炎膜〉」
炎の膜を纏い人形に攻撃をした⋯⋯が、それは当たることはなく俺の腹に人形の拳がめり込んでいた。
その攻撃で吹き飛ばされた俺は気を失った⋯⋯。
『こんなものか?混じりものに少し期待し過ぎたか⋯』
数秒後に俺は目を覚ました。
(これほどの差が⋯⋯。俺はどうすれば勝てる?どうすれば⋯⋯アイツに頼らないと勝てないのか?)
『変なプライドがあるのなら捨てろ。譲れないものを作れるほど“今”のお前は強くない⋯⋯。お前は言ったな?超えられる壁だと⋯その通りだ。お前が全てを使えば勝てる相手だ』
「それでも⋯⋯俺は⋯⋯⋯」
『アイツを利用して!我を下に付けてアイツを超えろ!!そのためにここに来たんだろ!』
その言葉を聞いて俺は立ち上がり人形に近づいた。
(俺の身に余る強大な力⋯⋯。肉体だけじゃない魂すらも自壊しかねない力⋯⋯。消えるかもしれない⋯だけどこんなところで死ぬようならアイツには絶対に勝てない!やれる近道は全部やる)
「⋯⋯スキル⋯発動〈▓▓▓の加護〉禁術⋯〈魂燃焼〉魔術⋯〈炎拳・神・激〉⋯⋯」
そう唱えて莫大なエネルギーを纏った右拳を人形にぶつけた。
その瞬間、俺の腕は消し飛び本来壊れるはずのない幻獣の心象空間にヒビを入れて俺は意識を手放した。
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『ここまでしろとは言っていないんだがな。流石⋯混じりものの“使徒”は凄まじいな』
(それにしても無茶をする。この傷では数日で魂が崩壊するだろうな⋯。だが見させて貰ったぞお前の可能性⋯)
『肉体程度は治してやるか』
そう考えながら右半身が消し飛び剥き出しになった心臓に触れてそこを基準にして再生させるのだった。
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しばらく経った後俺は目を覚ました。
「ここは⋯」
『起きたか?』
「何があった?」
『覚えてないのか?あんな無茶をしておいて。貴様は後数日で死ぬぞ』
その言葉を聞いて意識が完全に覚醒した。
「そうか。俺はあの時魂を燃やして⋯⋯」
『そうだ。本来あんな量のエネルギーを魂から生み出すとなると出し切る前に消えるはずなんだがな。流石混じりものと言ったところか』
「それで⋯⋯。お前は俺を認めてくれたか?」
『あぁ 契約内容を作っておいた。確認しろ』
そうして俺の目の前に出されたのは契約内容が書かれた板状の魔力だった。
(スゲェな魔力にこんなに細かい形を持たせて維持させるなんてなんつー技術だよ。あぁ違う違う今は契約に集中しないと)
そう思い契約内容へと目をやった。
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契約獣が契約者へ与えるもの
・契約者が耐えられるだけの“力”
・契約獣と対等関係での眷属化
契約者が契約獣へ与えるもの
・契約獣の依代(契約者の肉体)
・一年につき二日以上の肉体の操作権
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『読んだか?』
「あぁ 随分と俺に有利な契約だな」
『本来なら寿命の半分でも貰おうかとも思ったんだがな。今のお前の寿命は4日程度だ。そんなもの貰っても何の足しにもならん』
「!!」
『安心しろ。我の眷属になれば時期に魂も治るだろう。あんな傷を治すには100年は掛かるだろうがな』
「じゃぁもう俺はお前の眷属になるしかない訳か⋯」
『選ぶのはお前だ』
「⋯⋯契約成立だ」
そう言った直後に俺が持っていた板状の魔力がつる状に変わって俺と火の鳥を繋いだ。
『1つ言い忘れていた。もしお前が我という存在を受け止められない存在ならば魂が砕け散るぞ』
「は!?もっと早く言えよ!」
『もう既に儀式は始まっているからな。我でも止められん』
「まぁ 大丈夫だろ。アイツがそんなやわな体に創ってる訳ないだろうし」
最後の最後で締まらないな~、なんて思いつつ契約の儀が終わるのを待つのだった。
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