第5話 受験者
「やっと見つけた〜〜“ヤムヤ亭”」
(ここ安いから好きなんだよな〜。あいつまだ店主やってるかな?)
「うるせぇーなー!!!いいからメシを早く出せよ」
「あっあの ですからこの時間からでは⋯」
「うるせぇな!つべこべ言わずにやりゃ〜いいんだよやりゃーよー」
カウンターの前で騒ぎ立てている男を開幕早々うるさいなと思いつつ。
「ちょっといいですか?私とっとと休みたいのでどいてくれますか?」
「なんだオマエって⋯⋯あっ⋯あなたさまは!」
「おや?どちら様かと思えば貴方でしたか」
そう⋯なんとこの騒ぎ立てていた男は俺に絡んで一発で気絶させたヤツだったのだ。
「あっあの〜あの時はしっ失礼しました〜」
「別に良いですよ。あの時の失礼はお金を貰いましたからね。それよりも私は今とても眠いのでとっとと受付終わらせて寝たいのですが⋯⋯いいですか?ニコ^^」
「はっ⋯はいー!」
「えっあっあの一体何が起きて??」
「まぁまぁ何があったかは知りませんけどコイツももう悪さはしないと思うのでね。部屋空いてますか?」
「えっあっはい空いています。2号室です」
「ありがとうございます。今は本当に眠いのでコレ預けるので勝手にお金抜いといて下さい」
そう言って金袋をカウンターに置き自分の寝る部屋へ向かうのだった。
コンコンという扉を叩く音で目を覚ました。
「お客さ〜ん朝食の準備が出来ましたので起こしに来ました〜起きていますか〜」
「ああー今起きたぞ リナ 」
と言いながら扉を開けた。
「?!お客さんなんで私の名前を知っているですか!?」
「そう警戒すんなよ。お前の母親と友人だったんだよ」
「えっ!お客さん母を知っているですか?!」
「あぁ俺もお前も小さかった時にな。あと俺の名前はエンブだ。よろしくな」
「エンブさんなんだか昨日よりフランクですね」
「あぁこっちが素だから」
「でしょうね」
そんな雑談をしながら一階に降りて朝食を食べようとすると⋯⋯
「あっ!兄貴!!おはようございます!!」
という暑苦しい挨拶をしてきたのは昨日までの悪態が嘘かのようになった男の姿だった。
「自分!ベルって言います!よろしくお願いします!」
「うるさい。声量下げろ」
「あっ了解です兄貴」
「お前の兄貴になったつもりはないが別にいいぞ。それよりも朝食を食えせっかくリナが作ってくれたものだからな」
「はい!」
「そういえば今日は火曜だったよな」
「そうですね。⋯⋯もしかして兄貴も見学するんですか?Eランク昇格戦」
「いや 俺が受けるんだよ」
「えっ兄貴Fランクなんですか!」
「悪いか?」
「いえとんでもないです。ただDランクの自分より強かったのでてっきりCかBかと⋯⋯」
「まぁ昨日登録したばっかりだからな。他にも登録してない強い奴なんて山のようにいるだろ」
「確かにそうかもしれませんが⋯⋯」
そういった話をしているとリナが朝食の乗ったお盆を持ってきた。
「今日のメニューはポークシチューと黒糖パンです。と言ってもこれ以外のメニューの方が少ないですけどね」
「まぁ他の食材は高いからな。でも俺はこの味は好きだぞ。昔から変わらない味だからな。頑張って親から継いだんだな」
「はい!エヘヘ」
「そういえば他の客はいないのか?昔だと朝食だけでも食べに来るような奴がいただろう」
「はい⋯⋯。母が亡くなってから近くに宿屋ができてほとんどの人はそっちに行っちゃって⋯一部の常連さんは残ってくれてたけど体を悪くしている人も多くて最近は火曜の夜と風曜の朝に来るぐらいですかね」
「そうか⋯⋯大変だったな」
「そういえばなんでエンブさんやベルさんはなんでうちに泊まりに来てくれたんですか?」
「俺は昔馴染みに会いに来ただけだけど⋯お前は?」
「自分ですか?自分は親父が若い時ここの常連だったんですよ。なんで泊まるならここにしておけって言われてたから来たんですよ」
そんな会話をしながら朝食を食べきった。
「ありがと。美味かったよ」
「はい!ここは片付けておくので用事がある様でしたし頑張ってきて下さい」
「それじゃ行くかベル」
「はい!兄貴!」
そうしてしばらく歩いて昨日来た冒険者総合ギルド支部に着いた。
「受付はこっちよ」
と声を掛けてきたのは昨日会ったミーナだった。
「あぁありがとうございますね」
「いえそもそも誘ったのは私ですから。それにしても本当に来てくれるとは嬉しいですね」
「それにしても貴方仕事はどうしたんですか?」
「あぁそれですか?今日は午後の当番なので午前は暇なんですよ~なのでご一緒しても良いですか?」
「はいはい ベル。コイツの相手任せたわ。俺はとっとと受付してくる」
「ちょっとつれないですね」
「兄貴この人の相手ってどうしろと?!」
「適当に会話して俺の勝つところでも見てろ」
「指示が雑過ぎませんか」
そんな嘆く声を聞かずに俺は受付をしに行った。
「貴方登録してから1日しか経っていないのに受けるんですか?そういう人多いんですけど本当は辞めて欲しいんですよね。昇格しなくても受けるってだけでこっちの仕事量が増えるんで」
「大丈夫ですよ。絶対合格するので」
「ハァーそういう問題じゃないんですが⋯こんなことで辞めるような人はここに来てないでしょうね。まぁ受理しました。待ち人数は四人です。受験者待機席で待機していて下さい」
「了解です」
そうして席に座ってから10分も掛からずで俺の番になった。
「よお〜試験を舐めてる若造ってのはお前か?最近は減ってきてたんだがな」
「多分⋯そうだな」
「ルールはどうする?ハンデでもいるか?」
「いや?スキル,魔法,武器なんでもありの一般で」
「ハッそれがどういう意味かわかってんのか?」
「何言ってんの?俺は実力差を知りに来たんじゃない。お前を倒して昇格しに来たんだ。ハンデなんて付けたら昇格が無効になるじゃねえかよ」
「クソガキに世界の厳しさってのを教えてやるよ」
カーーンという鐘の音がなり試験が始まった。
「スキル発動〈腕力強化〉!」
「スキル発動〈身体能力強化〉」
相手が腕力を強化して放った大剣の大振りを持っている片手剣で受け止めたのだがそんな無茶は剣の方が持たなかった⋯⋯パキッという音を鳴らし折れるのだった。
「どうした?あんな伊勢が良かったのにこの程度か?」
「勝負はここからだろ」
「武器を失って何をするって言うんだよ」
「何言ってんだ?俺は剣士が本職なんて言ってないぞ (スキル発動〈魔術補助〉 魔術)〈火球〉」
「クッ 魔法も使えんのかよ」
試験官の男はそう言いながらその下級を払い除けていた。
「スキル発動〈魔術補助〉 魔術〈剣生成〉」
そう唱えてランクE相当の剣を創り出した。
「まぁ剣士が本職なんだけどな スキル発動〈斬鉄〉」
そう言いながら相手との距離を詰めて相手の剣を斬るのだった。
「俺は武器を壊されても対処する方法があったがお前はどうだ?」
「なっ何が起きたんだ??」
「あ゙ぁお前見えてなかったのか?力は凄かったが動体視力はそこまでなんだな。いやだからこそのランクEか」
少しの沈黙の後
「「「オーーー!!!」」」
という合格者を称える声援が響いた⋯⋯⋯。
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