第6話 合格者
試験が終わりベルがいる席に向かった。
「流石ですね!兄貴!でもなんか色々なもの使ってましたけどアイツそんなに強かったんですか?」
「いや?ただスキルも使わずに勝つとイチャモンを付けられるからな」
「なるほど⋯⋯確かに不正が行われたことが無い訳では無いですからね⋯⋯」
「ところでミーナは?」
「あぁミーナさんなら仕事に向かわれましたよ」
そのような会話をしていると⋯⋯。
「君だよね試験官を軽くあしらったのは」
そう言って俺に話しかけてきたのは20代後半といった見た目で上級以上の装備で身を包んでいる男だった。
「はい。そうですよ」
「やっぱりそうか!いや〜用事があったから観戦することができていなかったから見た目が分からなかったけど⋯やっぱり強者には強者のオーラがあるからね」
「早く要件を言って下さい。私も暇という訳ではないのでね」
「ごめんごめん。そんなに怒るなよ。単刀直入に言うぞ。お前をCランクへ推薦したい」
「そうですか⋯⋯なら早くリングに行きましょう」
「話しが早いね⋯でも推薦するには色々と手続きがあってだね」
「それをしていたから戦いが観れなかったのでは?」
「君は心でも読めるのかい?」
「⋯⋯⋯あえて否定はしませんかね」
「おいおいそんな奴に勝てる訳ないだろ!なーんてね。さぁ早く行こうか」
「なんかよく分からないですけど兄貴頑張って下さい!兄貴なら余裕ですよ~」
そうしてもう一度リングに立ったのだった。
「君はCランク昇格戦についてどこまで知ってる?」
「試験官は戦闘能力がBランク以上の者が担当。たとえ相手を殺そうがそれは殺された側の責任。本来⋯Dランクになってから一定の功績を挙げるか知識を問う試験も突破しなくてはならない」
「おぉほとんど知っているな」
「えぇ近年化け物クラスが多すぎて最後の内容が機能していないレベルで例外が生まれていることも知っていますよ」
「そうだ。僕もその例外だった。そして君も⋯⋯」
「それじゃ始めましょうか」
「装備はそのナマクラでいいのかい?創る時間はあげるよ?」
「今作れる物じゃあ誤差でしかないですよ」
「それじゃ。始めるか」
そうしてしばしの静寂の後⋯⋯⋯。
「はじめ!!!」
(スキル発動〈身体能力強化〉〈魔術補助〉)
「魔術〈炎幕・広〉」(〈耐熱膜〉)
そうして俺はリングを埋め尽くす程の広範囲に炎を撒いた⋯⋯が。
「氷・風複合魔術〈吹雪〉」
その一言が発せられた後には俺の創り出した炎が全て消えていた。
「マジか!」
(俺が創り出した炎を全部消したのか!いくら攻撃用の魔術ではないといっても範囲は最高レベルだぞ!それよりも範囲が広いとかどんなバケモンだよ)
「これ疲れるからあんまりやりたかないんだがな 複合魔術〈炎風しょ──」
「防御だけしててもいいのかな?」
気づいた時にはもう既に眼前にまで迫っていたソレに対してとっさに魔術を放った。
「チッ 〈炎幕〉」
「おっと。危ない危ない」
「クソが。余裕かよ」
「君とは年季が違うからね。本来同等の効力を発揮する魔術でも熟達した者が扱えばその効力は何倍にもなる」
「ハッ 先輩ズラすんなよ。今この瞬間に超えてやる」
「君には無理だよ。潜在能力は僕以上だけど⋯“今”この瞬間では僕の方が強い」
「お前の言った“今”と俺が立ってる“今”は違ぇんだよ。俺のスキルは〈成長速度3倍〉だぞ!」
「あぁ それね。まぁ確かに強力ではあるけれど。1回の戦闘で気にしなければいけない程のものでは無いでしょ」
(コイツは強い。この前戦った刺客よりは弱いがコイツには弱点らしい弱点が無い。それに加えて特殊属性の氷属性持ち火属性主軸で戦う俺とは相性最悪だ。今回はどう勝つ?同格以上との戦いだ。どう隙を作る?)
「あ〜」
「どーした?」
「深く考えんのは辞めだ」
(今出せる最高火力 魔術〈炎槍・激〉)
そうして放った槍をアイツは⋯⋯。
「水魔術〈水壁・柔〉」
簡単に受け止めた⋯⋯だが俺の本命の攻撃は炎槍を囮にした俺自身の突撃⋯。
(魔術〈魔剣生成〉 スキル発動〈斬鉄〉)
そうして創り出した炎を纏った剣をアイツは⋯⋯手で受け止めた!
「魔術〈氷籠手〉 どうした?そんなに驚いて纏う魔術は初めてか?」
「いや?ただ珍しかったもんでね」
「それにしても⋯もう打つ手無しか?」
「あぁコレが効かなかったら俺の負けだ」
そう言いながら俺は倒れるように地面に手を置いた。
「彼奴⋯精密過ぎるんだよ。おかげで再現するのに時間掛かった~」
「何言って?」
「〈石流柱〉 頼むからこれでくたばれ」
そうして俺は最後の魔術を発動させた。
それは地面から無数に生えて試験官の逃げ道を無くす様に動き閉じ込めた⋯⋯⋯が。
「〈
それは容易く貫かれた⋯⋯。
「流石強いね~。⋯⋯合格ってことでいいかな?ちゃんと僕に一撃入れれたしね」
「クソが!ぜってー次は勝つ!」
「楽しみにしているよ。あぁそれと君の魔術でこの石柱と僕の氷を退かしてくれるかな?」
「そんくらい自分でやれよ」
「少なくても石柱は君がやってくれないかな?僕の力じゃ術式を解析するところから始めないといけなくなっちゃうからさ。お願い賃金は出すからさ!」
そう言われて俺は立つことすら難しいその体を無理やり起こして俺の創り出した石柱に触れて魔術を解除するのだった。
「ベル~!ちょっとこっち来て肩貸せ~!」
そうベルのいる方向に向かって叫ぶと走って来ているベルを見つけた。言わなくても来ようとするなんていい舎弟を持ったもんだと思いながら俺は意識を落とした⋯⋯⋯。
───────────────────────
「兄貴!大丈夫ですか!」
俺は目の前で倒れた兄貴を支えながらそう言った。
「そのこは疲れているんだ。休ませてあげな」
そう俺に言ってきたのは試験官の男だった。
「そういえば名乗っていなかったね。僕はAランク冒険者のグラエスだ。よろしく」
「自分はベルです。それで兄貴がエンブです」
「それでは挨拶も済んだことだし医務室へ行こう」
───────────────────────
俺はベットで目を覚ました。
「兄貴!起きたんですか!」
「大きい声はやめろ。頭に響く」
「あっごめんなさいです。そっそれよりも兄貴ちゃんと合格ですって良かったですね」
「当たり前だ。BランクならまだしもAランクと戦って一撃かましたんだ。不合格だったら試験員をブン殴ってたわ」
「おや?それは聞き捨てならないよ」
そう言ってきたのは俺をこんなにもボコボコにしやがったやつだった。
「まぁ それは置いといて。はいこれ。君のCランク証明のタグ。無くすなよ。悪用されやすいからね」
「はいはい。肝に銘じておきますよ」
「それじゃ僕はこれで。動けるようになったら帰っていいよ。あぁそうそう君には言ってなかったね。僕の名前は“氷城”のグラエスだよ。よろしくね~」
そう言ってその男はこの部屋から出ていくのだった。
「それにしても凄いですね。この国に数人しか居ないAランクの冒険者と繋がりを持てるなんて」
「あんなやつとの繋がりならいらねえよ。ただアイツのおかげで“予定”を早く済ませそうだな」
そうして俺は立ち上がり宿屋へと向かうのだった。
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