第2話 召喚者

 俺は今かなり絶望している。

 何故かって?

 それは俺の目の前にいる奴らの会話を聞けばわかるだろう。

「ジース、貴様この責任をどうやって取るつもりだ!まぁよいこの話しの続きはまた後でしよう」

 そう言った陛下と呼ばれていたおそらく国王は俺に頭を下げてこう言った。

「巻き込んでしまってすまなかった」

 一国の王が頭を下げるなどそうそう有っていい事では無い。

 そのことに驚いていると

「だが君を元の世界に戻すほどの魔力を我々は保有していないのだ。この転生も先々代から貯めてきた魔力を使ったに過ぎない。だからこそ頼みたい。我々に力を貸してはくれまいか。この世界を混沌へと沈めようとしている“魔王”がいる。その魔王さえ倒せば魔力は充分貯まるはずだ」

 頼むっと深々と下げられた頭を見てとっさに考えた偽名を答えた。

「俺の名前はテッドだ」

「ん?お前も俺たちと同じ日本から来た訳では無いのか?」

 と召喚された勇者の内、男の方がそう言った。

「ああ悪い俺の名前は和也だ。三輪みわ 和也かずや、よろしくな」

「えっと 私の名前は田川たがわ 由良ゆらです。よろしくお願いします」

「テッドは一応本名だハーフなんだよ」

 (こいつらはこの世界の本名を教えることが何を意味するのか知らないんだろうな。だがまぁ教える義理は無いか)

「挨拶も終わったか?それでは能力の測定を始めようか。おい!ジース」

「はい。陛下、準備は出来ております」

「それではまずカズヤ様からお願いします。この水晶に手を置いて下さい」

「あぁ、わかった」

 そうして和也が手をかざした水晶が白く輝いた。


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 【名前】ミワ カズヤ(三輪 和也)

 【魔力適正】(強) 光、雷、全 (弱)、聖力〈強〉

 【能力スキル】〈絶対切断〉〈身体能力強化・A〉〈���鑑定不能

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「こ、これは強力な光属性の魔力と聖力です!スキルは〈絶対切断〉〈身体能力強化・A〉それと〈���鑑定不能〉?〈���コレ〉については私の〈鑑定〉では分かりかねますが、とても強力なことに変わりはないでしょう。シンプルでとても強力なスキルばかりで素晴らしいです。」

「そうなんですか?」

「はい、私が見た中でもトップクラスですよ。ましてや一切研鑽を積まずにこれ程までの力があるなど。これはユラ様にも期待できますかな?」

「わ、私なんかにそんな凄い力なんてあるんですかね?」

「もちろんです、それでは始めましょう」

 そうして由良が手をかざした水晶が淡い白を纏った様々な色へと輝いた。


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 【名前】タガワ ユラ (田川 由良)

 【魔力適正】(強) 光、全 (弱)、聖力〈魔、強、軟〉

 【能力スキル】〈調教テイム・A〉〈魔力循環路〉

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「これは聖力を強く帯びていますねこれ程までに魔力と調和している聖力も珍しい。いや、それ以上に四大元素以外にも様々な色の魔力を持っているようだ。美しい。スキルは〈調教テイム・A〉〈魔力循環路〉ですか。使いこなすには時間が掛かるでしょうがとても強力なスキルですね」

「本当ですか!やった〜」

「それでは次にテッド様」

 そう言われ俺はその水晶に手を置いた。

 すると赤く燃えるような光が少しだけ出た。


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 【名前】テッド

 【魔力適正】(強) 火、光 (弱)

 【能力スキル】〈魔術補助〉〈ストレージ〉〈成長速度3倍〉

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「これは⋯火属性の魔力か、期待し過ぎましたかね、えースキルは〈魔術補助〉〈ストレージ〉〈成長速度3倍〉ですか⋯⋯〈魔術補強〉は使いこなすのにかなりの時間が掛かると聞くし、〈ストレージ〉は貴方の魔力では上手く扱えないでしょうし、〈成長速度3倍〉に至っては珍しいものでもないですが、まぁ気にしないで下さいそもそも貴方は巻き込まれただけですから」

「おまえ⋯⋯俺に雑魚っつってんのか」

「そうではなくてですね。もちろん平均よりは圧倒的に上ですよ」

「まぁいいや。そもそも“アイツ”に敷かれた道を進むってのが気に入らないんだよ」

「え、なにかおっしゃいました──」

 俺はその時ジースと呼ばれていた奴に殴り掛かった。

「おい!国王!俺はお前らと敵対する!掛かって来い!」

 そう言った俺に対して国王は言った。

「何!? 兵共!子奴を捕らえよ」

(こんな雑魚どもいくらいようが問題無いない⋯⋯気にするべき奴は四人か和也、由良、ジースとか呼ばれてた奴、それとあの騎士か)

 そう思って向けた目線の先には強力な武具を纏った見るからにやり手な青年だった。

 そうして分が悪いと感じだった俺は二十人以上いた衛兵の内五人程度倒した後に窓から飛び降りた。

「じゃあな、探せるもんなら探してみな!」

 そうして俺は城の壁に触れて落下エネルギーを弱めながら着地して街へ向かうのだった。

 

───────────────────────

 

「兵が五人もやられるとは彼奴は危険だな」

 そう言っている我に話しかけてきたのは、たった十八にして騎士団の副団長に上り詰めた男クレースだ。

「そうですね陛下。私の実力も一目でバレていたようで、常に警戒されていて行動出来ずにいました」

「なに?貴様でも勝てんと感じるのか!」

「いえ、戦えば勝てるでしょう。ですが、誰かを護る余裕は無いでしょうね」

「それほどか」

「あのー、今ってどういう状況なんですかね」

 そう申したカズヤを横目にクレースに我は小さく言った。彼奴を殺せ⋯⋯っと。

「カズヤよ少し待たせたな今から説明しよう。奴は我らに反抗をした。だが奴も急に別の世界に連れて来られて気が動転しているだけだろう。すぐに保護しよう。だから気にするな」

「な⋯る ほど。それでは頼みました」

「そうだな。それではこれからの予定をジースに聞いてくれ、我には仕事があるからな」

「分かりました。それではまたお会いしましょう」

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