バラ将軍の反撃! 取り出せニューアイテム! 

 再びのブービートラップ!

 簡易式の爆弾が炸裂した!


「うあああああ!?」


 グリーンがその爆風に包み込まれる。

 ダメージが上乗せだ。


「くそ! バラ将軍め、どれだけの罠を仕掛けた!?」


「この瞬間も罠を仕掛け続けているに違いないわ!」


 レッドの悪態にピンクが答える。

 おそらくその通りだろう。あの歴戦の戦士は一切立ち止まることなく、次の手を打ち続けているのだ。


 総統と幹部陣が大ロビーから姿を消した後、5人組はグランシードの探索に入った。

 

 バベルツリーからの連絡はない。

 あの女は自らのやり方で総統を消そうとしているのだろうか。

 あちらが干渉してこないのなら、こちらも勝手にやるだけだ。


 プラントの本部は、ほぼ全ての職員が茫然自失のまま棒立ちとなっており、5人組は何の抵抗も受けることなく進むことが出来た。


 だが、それも途中まで。

 彼らはバラ将軍の姿を目視する。

 

 鮮烈なまでの赤髪はまさしく彼女だった。

 すぐにその姿を隠したが、向かった方向は分かる。

 追跡を開始した……その直後。

 小型の爆弾が5人組のすぐ近くで爆発したのだ。


 そこから先は奇妙な道程となった。

 彼らの行く先々で爆発が発生する。

 その度に、『ジャケット』の耐久値は少しずつ減っていった。

 確実にダメージが入り続ける。


「この短い時間で、これだけの爆弾を用意できるのかしら……?」


 ピンクは疑問を呈した。

 いくらバラ将軍が戦闘のプロとはいえ、ここまで自分たちの動きを先読みするのは難しいだろう。


 ここは一旦、思案の為所しどころかもしれない。


「……待て! この匂いはなんだ!?」


 ブルーが何かに気づいた!


 その場に立ち止まり、しきりに匂いをかぐ。


「どうしたブルー!?」


「これは……分かった薔薇の香りだ! まさか!?」


 レッドの言葉に答えたブルーは、突如奇妙な行動をした。


 今まで通ってきた道を逆走し始めたのだ。


「みんなこの匂いから離れるんだ! 薔薇の香り……こいつのせいで俺たちは行動を制御されていた!」


「なんだって!?」


 他の四人もブルーの後に続く。

 ブルーの推測は以下の通り。


 バラ将軍は爆弾をいくつか設置すると同時に、自らの能力によって特殊な香りを生成した。

 香りは嗅いだ相手の精神に作用し、単純な命令なら従わせることが出来る力を持っている。

 

 通路の左右どちらに進むか。

 その選択さえ操作出来ればいい。


 選択させた道の先に、バラ将軍は爆弾を設置したのだ。

 自分たちは相手の都合のいい道を選び続けてしまっていた。


「しかし来た道を逆走するだけでは……!」


 レッドの言う通りだった。

 あっという間に振り出しに戻る。

 香りから逃げた先は、グランシードの大ロビーであった。


「もらったああああああああ!!!!」


 そして、それもバラ将軍の計画通り!


 飛び出してきたバラ将軍は、自慢の茨の鞭を振るい、5人組を攻撃!


「「「「「ぐあああああああ!!!!!」」」」」


 対応する時間など皆無!

 鞭打はヒーローたちを蹂躙する!


「わたしたちプラントを……舐めるんじゃねえええええええ!!!!!」


 叫びに込められているのは、誇り。

 

 たとえ友に裏切られようと、組織が歩んできたこれまでは決して否定しない。否定させない。

 自分たちにだって意地はある。

 そう主張するが如く。


「ぐう……! みんな! 『ゴーグル』を装着するんだ!」


 鞭の乱舞に耐えながら、レッドは反撃の指示を出す。

 ドクターが準備してくれた、新たなる力!

 それをいまこそ使う時だ!


「「「「おう!」」」」


 ジャケットのポケットから赤、青、黄、緑、桃の5色に塗られたゴーグルを取り出す。

 

 テストをする時間は無かった。

 バベルツリーの催促によって、その力を確かめる前にこの作戦が発動されてしまったのだ。

 

 様々なリスクを考えて、先ほどの総統との戦いでは使用できなかった。

 だが、この局面を打開し、なおかつ次なる総統戦への試金石と考えるならば、ここで使うのも悪くない。


「……強化、スタート!!!」


「なにぃ!?」


 ゴーグルの能力はある意味単純。

 徹底的な身体強化。それのみである。


 だが、その徹底さこそが肝要。

 

 現にバラ将軍は一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

 動きが速すぎる!


「バラ将軍、いくぞおおおおおおおおおおお!!!!」


 それはまさに拳の大噴火!

 

 あるいはキックの豪雨!


 攻撃の物量!


 まばたきの間に、凄まじい数の打撃が将軍を襲う!

 そしてそれらすべてが――重い! 

 

 目にも止まらない速さで移動し、強化された攻撃を続ける5人組に、何の対処も出来ない!


「……」


「む!?」


 しかし、レッドはバラ将軍の動きに不審な思いを抱いた。

 本当に彼女は何の対処も出来ないのだろうか?

 この沈黙は……なんだ?

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