第13話 現状報告
「よし、それじゃ軽く会議と行こうか」
私は総統執務室に主だった幹部を集めた。
バラ将軍、水仙子爵、バベルツリー、そしてトウリ博士。
まあ、いつものみんなである。
「5人組とカルテルについて、いろいろと動きがあったからね。ここで一度まとめてみよう」
先日、
また、カルテルの総帥からメッセージが届いた。
ここにいるメンバーは、大体のことを把握しているけれども、認識を共有することは大切だ。
じゃあ、祥子からどうぞ。
「おう。とりあえず5人組の連中と一当たりしてきた。いわゆる『戦隊タイプ』のヒーローなんだが……なかなかやるな。こっちが挑発的な作戦を進めても、冷静に対処してきた。一度は頭に血が上ったんだろうが、危ないと思ったら、すぐに戦域から脱出した」
廃棄体を使うことによる心理的動揺を誘う作戦、か。
人間的な心を持った存在には、的確にダメージを与えられる手段である。
人間から離れてしまった心を持つ私たちからすると、コストの少ないやり方だ。
もちろんやりすぎてはいけないが。
「挑発的なやり方は、恨みと憎しみを集めるからな。人類種ではなく、個々人に対しては『かわいそう』という心が薄いわたしたちだが、それでも線引きは必要だ」
「こればっかりはボクも賛成。
祥子の言葉に、仙が続いた。
さて、5人組のことについては、これからどうしようか?
「あいつらが使っている鉄塊っていう移動拠点、そのエンジン波を記録した。ベル、鉄塊が近づいたら反応するレーダーを作れないか?」
エンジン波は簡単にいうと、次元エンジンから出る波動のことだ。それをレーダーによってキャッチ出来れば、早期に警戒網を敷くことが出来る。
「りょうかーい。バベル祭の準備のついでにやっておくよー」
「ばか、ついでにやるな今すぐやれ。ってそうか、もうすぐバベル祭か」
「ボクの偉大なる叙事詩を聞かせる、朗読会を開こう!」
「誰もいかねーよそんなもん」
「ぜったいおもしろいのに!」
「秘宝館作りたいんだよねー」
うーん、にぎやかだ。
まあ、それはさておき。
今は、5人組に対する警戒網を構築するしかないか……。
少数を相手する時に一番大変なのは、相手の動きが掴みにくいということだ。いつ奇襲されるか分からない。
即応体制を整えないといけないだろう。祥子には申し訳ないけれども、これから次元のあちこちに行ってもらわないといけない。
「みんな、ちょっといいかい。カルテルの総帥から届いたメッセージを再生したい。技術部で精査したところ、トラップは発見されなかった」
周りの様子をニコニコしながら見ていたトウリが、発言した。
大体の中身は調査書で把握しているけれども……アレを実際に聞くのか。少し気が滅入る。
「それじゃ、スイッチオン」
『…………あい? あー…………うんうんうん。べむべむ。けれー。ふぁいふぁいふぁふぁい。ぜむー。こるこるこる。めええええええええええ。ともとも。よりしくー。プラント。カルテル。ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。そうとう。そうすい……………あいあい…………………』
「……なんだこれ」
祥子が頭を抱えた。そうなるよね……。
女の声は、ただひたすらに支離滅裂だった。
トウリはケラケラ笑いながら、解説する。
「親愛なるカルテル総帥のお言葉さ。何かの暗号というわけではないよ。彼女はカルテルの創設以後、ひたすらに自らの欲望を満たそうとしてきた。そのために、自分の力を際限なく強化していったんだ」
そして、その果てがこれか。
自我と空間を融合させ、永遠を手に入れた。
「彼女曰く、最高に幸せらしいよ」
『おまえらー。こっちにくるな。るるるるるるるるるるるる。こんこん。くおん? えいえん? おばかー。じゃじゃおいおいおいおいおい。れ。きききき。みみみみ。ほしい。ほしい。ほしい。まーまーまーまーまー。きたらなぐる。ゆるさない。しいいいいいいいいいいいいいいいいいい』
……彼女が幸せなら、こっちが何か言う権利はない。
「ここからは代理人だ」
『えー、プラントの皆様。わたくしエージェントDと申します。総帥の代理人です。総帥は御社との平和的共存を望んでおります。ですが、御社がここ最近おこなっている、カルテルに対する調査は双方の信頼を損なうものです。やめていただきたい。御社に対し我々が何かしらのアクションを行っているという件に関しましては、多数の顧客の方々に関する、個人情報に触れる恐れがあります。詳細はお答えしかねます』
「ということらしいよ?」
要するに、5人組に関係していないかもしれないし、関係しているかもしれない、か。
よし。
「カルテルの調査はより慎重に、且つ人員を増やそう」
あやふやのままでは、納得できない。
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