バラ将軍出現! 地獄の包囲網!

 プラント基地に閃光が走った!

 爆音と共に、基地は木っ端みじんに吹き飛ぶ!


「みんな大丈夫か!?」


 人間大のコンクリート片が数百、空中を舞う中、レッド他4人は必死に走り続ける。基地の自爆に巻き込まれないために。


「おれたちは大丈夫だ……しかし、中の人たちが! イエロー! お前が背負っていた女の子はどうした!?」

「くそ……なんてこった……!」


 5人組が今回やってきた場所は、とある次元に存在するプラントの秘密基地。この基地において、恐るべき人体実験が行われているという情報をキャッチしたのだ。

 

 囚われている人々を救うべく、潜入を敢行した彼らであったが、探索中に突如として連鎖的爆発が発生!

 基地の崩壊を背に、脱出の途中であった。


「ここまでくれば大丈夫だ! 爆風に何度か巻き込まれたけど、ジャケットのおかげでなんとかなった!」


 グリーンが額の汗をぬぐう。

 

 彼らが着ている『ジャケット』は科学と魔術の粋を結集した、スーパーアイテムだ! 

 一見単なるジャケット(それぞれ赤、青、黄、緑、桃、の色をしている)にしか見えないが、5人に超人的な力を与えてくれる。

 

 防御力も優れもので、むき出しの顔面に巨石がぶつかってもへっちゃらなのだ! 

 だが、もし大量のガレキの下敷きになってしまっていたら、無事で済んでいたか分からない……。


「思えば最初から変だったわ。基地の中に、プラントの構成員が少なかった。もしかしてこれは……」


 ピンクが呟いた、次の瞬間であった!


「ははははははははは!!!」


 荒野に高笑いが響いた!


「……あそこだ!」


 ブルーが指さしたのは、崖の上。

 そこに誰かが立っている。

 何奴!?


「さすがだな5人組! そう簡単には死なないってことか。面白くなってきた!」

「誰だおまえは!?」


 軍服を纏った妙齢の美女である。

 髪は燃えるように真っ赤であった。

 女はレッドに答える。


「はじめまして、だな。わたしはプラントのバラ将軍! お前らを倒すために、今回の作戦を指揮している!」


 レッドは驚愕した。


「バラ将軍!? プラントの中でも特に武闘派として知られている、あのバラ将軍か!」

「わたしも有名になったもんだなぁ。ははは。でもよ、プラントの中じゃお前らも有名人だぜ? 最近うちの基地を次々と攻撃して潰している。あれ、なんでだ? お前らに何の得がある?」


 拳を握りしめ、レッドは叫ぶ!


「人々が苦しんでいる! 人々が泣いている! そして助けを求めている! 見過ごすことはできない……俺たちは必ず助けに行く! それだけだ!」

「ははははははははははは!!! まさしくヒーローとしての答えだ! だが。それが仇になったな?」

「なに!?」


 バラ将軍は崩壊した基地の方を見ながら、語り始めた。

 楽しそうな笑みを浮かべながら。


「プラントの人体実験に使われている被検体を救い出すのが、目的だったんだろう? 残念だったな。全部わたしが仕掛けた罠だよ。あの基地はお前らを誘い出すために、わざわざ用意したやつだ。プラントの構成員は誰も死んではいない!」

「なんだと!?」


 ブルーは信じられなかった。偽の基地だと? しかし捕らえられた人たちは確かにいたのだ。

 

 ガラス張りの壁の向こうに、何十人もの人たちがうずくまっているのを、この目で見た。


  助け出そうとしたその時、部屋は爆発した。人々は粉々になった。それがあの基地における自爆のスタートだった。


「被検体が50人ぐらい死んだが、別に惜しくはない。全員、実験に失敗して廃棄用の個体だったからな」

「廃棄、用……?」


 イエローの脳裏に、先ほどの光景がリフレインする。

 

 イエローは基地への潜入中、他のメンバーと別れて行動していた際に、一人の少女と出会った。

 

 少女は裸足で通路を彷徨っていた。聞けば自分の名前も分からないという。完全な記憶喪失であった。


 イエローは彼女をおんぶし、基地の外まで連れ出そうとした。ブルーにそのことを伝え、いざ行動を開始しようした、その時である。


『あつい……あついあついあついあついあついあついあつい!!!!!』


 少女は突然苦しみ始めた。

 イエローが振り返ると、少女の顔から何かが落ちた。

 

 目玉だった。

 彼女の体は凄まじい勢いで、溶けだしていたのだ。

 

『おにいちゃん、たすけてえええええええええええ!!!!!!!』


 絶叫が通路に響く中、イエローはどうすることも出来なかった。

 少女が溶けきるまで、わずか30秒。

 残ったのは、立ちすくむイエローと、床に広がる赤黒い泥だけだった。


「……あの子がああなったのも、全部お前らのせいか!?」


 イエローは咆哮した!

 いつも穏やかであるはずの彼からは、想像もできない声であった!


「さて、どうだろうな」


 バラ将軍はとぼけた感じで答えると、5人組の方へ向き直る。


「基地の自爆は乗り越えた……だが、それだけで終わるはずがないだろう? 次はこれだ!」


バッ、と将軍が右手をあげると、物陰からプランター戦闘員が何体も飛び出してきた。そのまま5人組の周囲を、一定の距離を保ったまま囲む。

 

 彼らの手には、銀色に光るロケットランチャーが握られていた!


「撃て!」

「「「「「プラ!!」」」」」


 歯車頭の兵士たちは、一斉に攻撃を開始。

 たちまち5人組は、爆炎に包まれた!


「「「「「ぐわああああああああああああ!!!!!!」」」」」


 灼熱が体を包む。ジャケットが無ければ即死だっただろう。

 だが、ジャケットも無敵ではない。

 先ほども基地の自爆時のダメージも重なり、耐久力が減りつつある。


「下がれプランター! お前たちはよくやった、充分だ! あとはわたしに任せろ!」

「プラ!」


 バラ将軍はプランターを下がらせると、崖からジャンプして降りた。

 そして、5人組の下へと近づいていく。


「お前たちご自慢のジャケットも限界があるはずだ。どこまでやれるか……わたしと一緒に試してみないか?」

「くっ……」


 5人組はなんとか立ち上がる。

 死力を振り絞ってでも、この場を切り抜けなければいけない。

 最初に動いたのは……ピンク!


「霧よ怒れ!」


 一瞬にしてバラ将軍の周りに桃色の霧が発生する。

 

 これは敵に対して緩やかなダメージを与え続ける霧である。

 敵が霧に囚われている数十秒間、5人組はエネルギーガンによる射撃戦を行うのだ。


「鬱陶しいんだよ! はっ!」

 

 だが、今回は勝手が違った。

 バラ将軍は自らのエネルギーを周りに放出。

 たちまち桃色の霧を吹き飛ばしてしまった!


「「いくぞ!!」」


 続いて、ブルーとグリーン!

 両者は共に光の刃をつかから展開。

 

 青色と緑色の光刃が、バラ将軍に切りかかる!

 鋼鉄すら切り裂く力は果たして……!


「おらよっと!」


 ……バラ将軍は素手で受け止めた!


「なんだと!?」

「そんなバカな!?」

「温い攻撃してんじゃねーよ!」


 光刃を両方とも握りつぶす。そのまま両手をブルーとグリーンの腹に叩き込んだ。


「がっ……!」

「ぐ……!」

「さあて、次は……」

「「うおおおおおおおおおおおお!!!!」」


 今度はレッドとイエローの肉弾戦!

 怒りを込めた拳が、将軍の顔面に向かう。

 

 レッドの一撃!

 イエローの一撃!

 これはどうだ……!


「……いいパンチだ。だが、効かねぇ」


 バラ将軍は微動だにしていない。

 凄まじい。

 これが、プラント幹部の力なのか!


「今度はこっちの番だ。うなれ赤鞭!」


 将軍のベルトに差し込まれていた鞭が取り出される。

 彼女が振ると、鞭は何倍にも、何十倍にも伸び始めた。

 

 鞭が躍る。風と共に踊る。死と共に踊る。

 5人組へと襲い掛かった。


「なんて速さの鞭だ……ぐああ!!!」

 

 鞭を掴もうとしたレッドだったが、そのスピードの前に手も足も出ない。他のメンバーも一緒だった。数秒間に何十回も激痛が走る。ジャケットが破ける。このままでは、本当に危ない!


「どうした! お前たちの力はこんなものか! この程度で終わるのか、お前たちは!」

「く、くそ……こい、『鉄塊』!」


 レッドは右手を天にかざした。

 

 すると、どこからかジェット音が響いてきた。

 こちらに近づいてくる。


「なに……?」


 いぶかしむバラ将軍。

 その時であった!


「みんな、鉄塊に飛び乗れ!」

 

 全長50メートルほどの飛行物体が急速降下! バラ将軍に向かって、レーザー砲を乱射する。


「くっ!」

「いまだ! バラ将軍、勝負はあずけた!」


 鋼鉄製の飛行物体にむけて、5人組はジャンプ。そのまま機体の中へと入っていった。


「……ふん。まあいい」


 鉄塊とは5人組が保有する航空機型の移動基地だ。次元を渡る力を持ち、彼らにとって拠点の一つとなっている。

 

「戦闘機隊に告ぐ! 5人組が乗った機体を撃墜しろ! マルチバース空間へと脱出される前に、叩き落とせ!」

 

 バラ将軍の包囲網はまだ終わらない。

 5人組は危機を脱することが出来るのであろうか……?

 

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