レバノン人美女の策略

これは前回の話の続きになる。


韓国人の上司の代役を務めた後、また少し経ってから彼のもとに出張で訪れた。


相変わらず韓国人の彼は明るく面白く、個人的にはとても魅力的な人であったにも関わらず、あいも変わらず良い女性がいないか探していた。


僕は珍しくTinderでレバノン人女性とマッチした。


20代前半の大学卒業したばかりの女性だった。


すごく可愛らしい、髪が長く、背の高い女性だった。


アジアが好きという彼女と僕が会うのにそう時間はかからなかった。


僕はまだメキシコ人彼女と付き合っていたので、友達として出会うことにした。


最初はルーフトップテラスのおしゃれなレストランで会った。


人見知りの激しいコミュ障の僕でも楽しめるほど、彼女はよく話した。


漫画のこと、アニメのこと、レバノンの経済不況のこと、彼女の将来のこと・・・。


真面目な話をいくつかした後に、少し散歩をした後に、二軒目に向かった。


二軒目はアジア料理のレストランだった。


そこでもまあまあ話は盛り上がった。


しかし、どうにも盛り上がりに欠けていた。


決してつまらなくはなかったのだが、楽しくもなかったのだ。


それでも彼女は僕とのツーショット写真を撮っていたし、なんだかんだ気があるのかななんて少し浮ついた気持ちでも会った。


ところが、だ。


彼女の一言に僕は少し引っかかるものがあった。


「アジア人と会うのは初めてじゃないよ。韓国人の友だちもいるし、フィリピン人の友だちもいる」


・・・ん?韓国人・・・?


僕はふと、上司が浮かんだ。


「韓国人の彼はとくに優しくしてくれている」


・・・ん?彼・・・・?


その国には他にも韓国人男性は数人いた。


しかし、若い女性と遊ぶような男性は、上司の彼しか思いつかなかったのだ。


まさか・・・と思いつつ、その日は忘れることにした。


それなりに仲良くなったと思って、レバノン人の彼女に友人として一緒に出かけることを提案したのだが、彼女からの返事はいつも冷めていた。


特に気にしないでいたのだが、次の出張の機会に韓国人の上司とも言える彼を食事に誘ったところ、とんでもない話を聞いた。


「最近、女性探しはどうなんですか?彼女できました?」


「うーん、何人かの女性とデートはしたけどね。シリア人、トルコ人、レバノン人・・・」


「あ、レバノン人ですか・・・?」


「うん、サイラと言ってね、20代の若い子なんだけど、うちに勝手にやってきて寝泊まりしてるんだ。うざくてしかたないよ、ほんと・・・。」


「サイラ・・・?20代・・・?え?待ってください。もしかしてこの子ですか?」


と僕は言いながら彼女の写真を見せた。


「ああ、そうそう。あれ?知り合い?」


「知り合いも何も、Tinderで出会って食事行きましたよ」


「ああ、日本人と会ったと言ってたけど、君だったのか」


「まさか韓国人の男友達はあなただったのですね・・・」


「そうね。でも、あの子、臭くない?あそこがさ、臭うじゃん?性病とか怖いから本当は嫌なんだよね。ここ数ヶ月ずっと無視してるんだけど、彼女元気?」


僕はサイラと寝ていないので、臭いとか何もわからなかった。


「あ、ええ・・・。最後にあったのは1ヶ月くらい前ですが、あのときは元気でしたね」


「そうかー。」


と彼は全く気にしていない様子だったが、彼の頭の中では僕ら2人ともサイラと肉体関係を持った、兄弟分だということにされてしまったのである・・・。


なんだか事情を説明しても、言い訳がましいかなと思って、何も言わずにいたのだが、あれが正解だったのかはよくわからない。

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