第12話 召喚術六式。

子供のシーナが「これで全部だよ」と話すと、ヴァンは「ありがとう」と言ってから話の切れ目を狙ってシヤとシーナに「ごめんね。トゥモの宿題があるから話させて」と声をかける。


「どうした?」

「何を話すの?」


「向こうは真っ暗なのにシヤの事は見えたり分かったりしたの?皆で話せたって聞いたんだ」

「ああ、あっちの私に聞いたんだ。うん。シヤの力がある程度貯まると、それを使って目が覚めて、横にはヨンゴ達が居て、心配だねって話すのよ」


「イメージでいいんだけどさ、シーナはなんで離れてるヨンゴ達と話せたんだと思う?」

「んー…?シヤの力で繋がるからかな?」


ヴァンはシヤと手を繋いでシーナとそのまま手を繋いで貰うと「なんとなく分かったよ。ありがとう」と言った。


その日の宴会はコレでもかと続いてしまい、仲間のヨンゴが「歩けねーほど食った」と言うまで終わらなかった。


「また呼ぶよ」

「うん。楽しみにしてるよマスター」


皆と抱きしめあってから別れを告げて消していくミチトが「やっぱり寂しいや」と漏らし、リナが「そうね」と返す。

ヴァンが「え、俺は?いてもつまんない?」なんて聞いて、ミチトが「いやいや、ヴァン君が居てくれると楽しいよ」と孫を見るような目で言う。


ヴァンは静かになって、耳の奥に今もシヤの「さあ食べるんだ」の声や、シヅの「今度はイイヒートも呼んでよマスター」やシイの「トウテの弟子達の剣作りとか見に行きたいよ」の声、ヨンゴの「皆集まれば1番は俺だよなシロー」の声なんかが残る中、真面目な顔をしていた。


ヴァンの表情に気付いたミチトと目が合ったヴァンは「ミチトさん、多分五式は出来たんだけどさ、先に六式を作りたいんだ。考えるから会話に付き合ってよ。呼ぶと皆同い年、25歳くらいだよね?」とミチトに話しかけた。


「ヴァン君?それは多分トゥモがいつか何かの時に生き返った俺と戦いたかったから、全盛期で出てくるようにしたんだろうね」

「そうだよね。それを基礎にしてるからか…、肉体生成時にある程度の手を加えれば…」


ヴァンは暫く考えると「五式の確認は後回し。召喚術!四式!シーシー・トウテ!」と言ってシーシーを呼ぶと「あれ?また?マスター?」と言っていて、ミチトはやや呆れ気味に「ヴァン君が呼んだんだよ」と言う。


シーシーはあまり話せなかったヴァンを見て「ヴァン君?」と問いかけると、ヴァンは「ごめんねシーシー、でもほら、俺って今世の器用貧乏だしさ」と言って「へへ」と笑い、その後で「それに」と呟くとシーシーの手を取って「お節介なんだ」と言ってもう一度笑う。


「六式考えついたから助けてよシーシー。ヤァホイさんの事を教えてよ。シーシーが25歳ならヤァホイさんはいくつ?」

「え?60歳くらいだったはずだよ」

「名前ってヤァホイで姓は?」

「…トウテにしてくれたよ」


「よし、魂の概念は見つけた。年齢も多分うまくいく」と言ったヴァンは「召喚術!六式!ヤァホイ・トウテ!60歳!」と言うと、光と共に現れたのは確かに老人のヤァホイだった。


「あれ?ここどこ?ミチト君?リナちゃん?シーシーちゃん?」と言っているヤァホイにミチトとリナは会釈だけしていると、シーシーが「お爺ちゃん!!」と言って飛びついて「会いたかったよ!会えて嬉しいよ!」と言ってわんわん泣く。



「おやおや?シヤ君は?シーナちゃん達は?」と言うヤァホイにヴァンは自己紹介だけ済ませて、「シーシー、ごめんね。六式は肉体の年齢の関係か、術消費が激しいから10分くらいにさせてね」と言って「ミチトさん、俺あんまり食べてないからお腹すいたよ。なんか食べたい」と甘える。


ミチトは「やれやれ、ヴァン君は凄いね。リナさんと具沢山スープを作るから3人で食べようか、俺もリナさんを手伝うからスープの完成まではヤァホイさんとシーシーの時間にしよう」と言うと、「うん。そのつもり。六式は確かに四式より使うけど実は問題ないんだ。はじめに言っておかないと、終わらせるタイミングが見当たらなくてさ」とヴァンは照れ笑いした。


ヤァホイは耳ざとく聞いていて、10分を過ぎても何も言わないが、スープができそうな頃になると「会えて嬉しいよシーシーちゃん。そろそろヴァン君に悪いから帰ろうか?」と声をかける。


シーシーは目を腫らして「うん。10分はもう過ぎちゃったね」と言うと、ヤァホイは優しく微笑んで「ヴァン君にありがとうを言おうね」と言う。


「また会いたいけど、願ってはダメだよ?」

「うん。マスターとヴァン君が無理しちゃうもんね」

「うん。受肉術も確定術も願ってはダメだよ」


シーシーはヤァホイに抱きつきながら「でも、お願いを聞いてほしいよ」と甘えると、「僕にできる事ならなんでも言ってよ」とヤァホイが優しく微笑み、シーシーは「ヤァホイさ…お爺ちゃ…、お父さんは私のことを必ず、さんとかちゃんで呼んでたから、キチンと名前だけで呼び捨てにして欲しいよ」と言ってヤァホイの胸に顔を埋めた。


「いいのかい?無理してない?」

「してないよ!ずっと呼んでもらいたかったのに呼んでもらえなかったのをずっと気にしてたんだよ!」


「言えばよかったのに」

「言えないよ…。奥さんと娘さんのことしか呼び捨てにしないのかなって思ったら怖くて言えなかったよ」


ヤァホイは優しく微笑んでシーシーを振り向かせると「やだなぁ。それこそはじめに仲良くなったのが僕だから、仕方なく仲良くしてくれているだけで、本当は邪魔なお爺ちゃんだと思ったから言えなかったんだよ?」と言った後でヤァホイは深呼吸をした。



「ごめんね。シーシー」


ヤァホイがちゃんとシーシーを名前で呼ぶと、シーシーは泣きながら「遅いよお父さん!やっと呼んでくれたよ!マスターもお父さんだけど、お父さんもお父さんなの!」と言ってヤァホイを抱きしめる。


「嬉しいなぁ。僕はね、ラージポットに誘われる前、ディヴァントの風土病で妻のジオと娘のビーヴを亡くしてしまった。そこからは命知らずの根無草になったのに、古い友達のエクシィやライドゥが僕を見捨てなかった。命がいらないからこそ、きな臭いラージポットにも参加をした。そこにいる皆と助かっただけでもありがたいことなのに、トウテに移り住んですぐにシーシーにも会えた。あの日は本当に神様がいて、僕に娘を巡り合わせてくれたんじゃないかって思った程だったよ」


ヤァホイの言葉にシーシーは「お父さん、お父さんは私達がトウテに住んだ時に一緒にヤァホイ・トウテになってくれたけど、その前は?」と疑問を口にした。

ヤァホイは「捨てた名前にしちゃおうよ」といったが、シーシーは甘えて「知りたいよぉ」と言うと、諦めたヤァホイが「ソフバァ、ヤァホイ・ソフバァが僕の名前さ」と言って「さあ、帰ろう」と言った。



ヤァホイはシーシーと手を繋いでいて「ミチト君、ヴァン君、ありがとう。リナちゃんも久しぶりに会えて良かったよ」と言うと、ヴァンを見て「お節介はヴァン君かな?無理をして、今度は僕の家族をなんて思ってはダメだからね?」と釘を刺してシーシーと微笑み合う。


「でもさ、一個お願いね。2人同時に帰して欲しいんだ、そこを真っ直ぐ歩くから、見えなくなったら帰してね」


ヴァンは了解すると「さあ、帰るよシーシー」とヤァホイが言い、シーシーは娘の顔で「うんお父さん」と言って手を繋いで歩く。


「暗いけど大丈夫?」

「死ぬ前に比べたら今は元気だから平気さ」


そんな声が遠ざかった所で、ヴァンは召喚術を終わらせていた。


振り返って「お節介し過ぎちゃった。お腹減ったよ」と照れるヴァンの目の前では呆れ顔のリナが「ミチト」と注意している。


「へ?」と言うヴァンに聞こえてきたのは「ヤキモチ妬かない」と言うリナの声と、ミチトの「だって、シーシーはヤァホイさんと仲良しでも、俺の事もお父さんって言ってくれてたのに…、今日の俺にはマスターとしか言ってくれなかった」と言う不満だった。

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