第11話 猫が好き。
シヤ一家の王都行きが決まった事を聞いたヴァンは「で?その先ってどうなったの?」と子供のシーナ達に質問をした。
「夜遅いし、私達が寝ちゃったから、次の朝に全員で王都に転移術して、私達は第三騎士団の兵舎かと思ったら、ジェード兄ちゃんがマスターの別荘使っていいって言ってくれて、私達は別荘の玩具で遊んだよ」
やはり派兵は済んでいて、シヤはメリッサに対して少し申し訳ない気持ちになったが、行軍訓練も必要な事だと割り切り、さっさと調書を書き上げて帰ろうとする。
引退したアプラクサスは自領地へと帰っていたので、代わりに軍事や外交の仕事を担ったイイーヨにジェードが「シヤ兄ちゃん達がアンチに寄り道するから手配しておいてよね」と仕事を振る。
「マジかよ…。いや、シヤ達には助けてもらったからそれくらいするけどさ」
イイーヨが書類を用意している横で、クラシが「でさあイイーヨ。俺、休暇が台無しになったんだよね。延長していいよね?」と言い出す。
「え!?それは困るぞクラシ。訓練の予定とかあるし!」
「…団長代理にトゥモ・スティエットが就くからいいよね?」
寝耳に水のトゥモは「えぇ!?」と聞き返し、イイーヨはトゥモならクラシに遅れは取らないので、「おぉ、トゥモならいいぜ!」と言う。
やられたと呟くトゥモに、ロゼが「助かったよトゥモ」と言って笑顔になる。
「ロゼがやればいいだろ!」
「ごめん、俺マアルと訓練の約束とかあるし」
「俺もアルマと約束があるから孤高の天才様にお願いするわ」
クラシは結構ズルい。
奪われたのは約1日なのに、新しくスレイブになった術人間達がズメサに慣れるまでと言い、1週間の延長を認めさせてしまう。
トゥモは「…イイーヨさん、トウテから通っていいよね?」と聞き、「おう、訓練はさ来週からな、遅刻したら翌日から別荘かイイヒートの所に泊まらせっからな?イイヒートの所ならイッツィーのお世話もできて万々歳だな」と言われて肩を落としていた。
元々、ジェードの考えでは不機嫌になるクラシの為にラミィを連れてズメサに行き、祖母を先に懐柔してなあなあで済ませる予定だったのに、王都に寄った結果、それだけが残ってしまう。ズメサに行くと、シアとラミィはしっかりとズメサに来ていて、「お婆ちゃん、お泊まりしていい?」、「お婆様、ラミィは串焼き肉が食べたいですわ!」と甘ったれる。
ソリードの方は「あらあら、じゃあウチも串焼きにして増えた子達の家とか考えなきゃ。エスカさんもお肉をお願いしますね」とニッコニコ、エスカも「泊まってくれるの!?嬉しい!ウチにする?それとも別荘?シアちゃん!お肉を一緒に捌きましょう!」とやっている。
結局トゥモ達が日常に戻れたのは1週間後だった。
アンチに寄ったシヤ達は父達から歓迎されて、アプラクサスから一家で邸宅に招かれる。
出迎えたアプラクサスは老齢で杖をついていて、「助かりましたよシヤ君。キチンとヤァホイ氏の教えが根付いていて、それでいて騎士団の心があるお陰で不義を見つけ裁けましたね」とイイーヨから聞いた報告を元に感謝を告げる。
顔を曇らせて「いえ、道具屋の仕事をやりきれませんでした」と言うシヤに「何を言います。それこそが守破離です。シヤ君の形が出来上がったんです。これからも仕入れの時には大変だとは思いますが、トラブルの種を見つけたら介入をよろしくお願いしますね」と言ったアプラクサスの言葉に、両親は会うたびに立派になってと泣いて喜んでしまう。
アンチに2日ほど滞在したシヤは予定より何日も早くトウテに帰ると、ヤァホイも「ゴタゴタしてたから帰ってきちゃったよ。ただいま。おかえりなさい」と言ってシヤ達を出迎えて、仕入れた薬草にしても「うん。合格。でもここ見てね。もう悪くなり始めてるよね。ジェネシスですぐ使うならいいけど、これだとトウテに持って帰ってきてもすぐに使えなくなっちゃうからね」と評価をした。
シーシーはジェネシスで起きた事をヤァホイに伝えると、「これでシーシーちゃんは寂しくないね」と言って、「僕もお迎えが来るまでにシロー君達に会えるかな?楽しみだなぁ」と言う。
会話の端々に死を連想させるヤァホイに向かって「なんでそんな悲しいこと言うの!嫌だよ!」と怒るシーシーに「ふふ。僕は猫が好きなんだよ」と返すヤァホイ。
「猫はね、死を予測すると家族の元を離れて1人で死んでいくんだ。僕は猫になりたいな。みっともない死に姿を大好きなシーシーちゃん達に見られたくないのさ。今から言っておけば少しなら慣れられるよね?」
「わからないよ!」
「ふふ。シーシーちゃんもお婆ちゃんになればわかるよ」と言ったヤァホイはそれから半年後、シヤ達の仕入れが終わって帰ってきた日に「お見送りして欲しくなっちゃったみたいだ」と言ってシヤ達に見送られて亡くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます