加護

「パクスか!?」


「ベックさん!どうも」


 いきなり現れた英雄の称号者パクスにベックは驚いた。否、驚いたのはベックだけでなく、騎士団の面々、当然ルトスとフィリスもだ。


「パクスさん……いったいこれは……」


 ルトスはなぜここにいるか、というより現状について聞き出した。この依頼は称号者がいなく、騎士団に命じられたもの、だったのだから称号者がいきなり現れたのは正直驚くものだ。


 しかし、称号者の人のほとんどは自由奔放、神出鬼没といえる。そのため、もう慣れっこなのだ。


 …………その時、


 森の奥からなにやら禍々しい存在が感じられた。


 ーー現れたのは2m程の魔物だ。


 しかし、ただの魔物ではないのが、パクス達から見ても、明らかだった。その魔物から発せられている脅威から。


「まあ、ひとまずあいつらを倒そうか」


 …………


「シャー!!どんどんいくッスよ!」


 そう言って、魔力の塊を風魔法にのせて放ち、周囲の魔物を一掃したのはラエティアだ。


「ちょっと、ラエティア!調子にのるのもいい加減にしないと、危ないですよ」


 そして、そのラエティアを抑制するためにベレスがついている。


 (これも、"的中の加護"の効果なのでしょうか…)


 ……………………………………………………………………………………


 加護。それは、生まれた時に神から授けられた賜物である。しかし、誰しもが持っているものではなく、世界に選ばれたものしか持っていない。また、どんな人でも、加護を持っている人は一つしかない。


 中には加護持ちの人を崇め称える集団もある。逆に、「呪いだ」と忌み嫌う者達もいる。


 加護の力には様々ある。今回、ラエティアの加護は"的中の加護"、その効果は自分が放った道具や魔力といった力が相手に命中するといった効果だ。


 例えば、1キロの距離がある所から的に向かってナイフを投げたとする。それが百発百中で的のど真ん中に当たる。また、ナイフだけでなく飛び道具ならなんでもいける。


 こんな感じだ。


 しかし、当の本人は自分の加護の存在に最初は気づいていなかったらしい。精霊王であるスピリスに言われ自覚したのだ。


 もう一度言うが、加護には様々な種類がある。


 なので、生まれた時から自覚するものもいれば、ラエティアのように気づかないで一生を終える者もいる。


 ……………………………………………………………………………………


 森の奥深くから、魔物の大群がぞろぞろとでてきた。


「よっしゃーー!!おもしろくなってきたッスよ!ーーいくッスよ!ベレスお姉ちゃん!」


「もう…仕方ないですね」


 そう、やる気満々のラエティアに苦笑気味に微笑んだベレスが隣に立ち、魔物の大群に立ち向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る