問題が訪れるのはいつも突然

 ………………………………


「あ!お師匠様!」


 ヴィルトの精霊による修行を手伝っていたラエティアがパクスを目にすると、大きく手を振り呼んだ。


「師匠」


「ヴィルト、どうだ?」


「思ったより難しいです。精霊と心を通わせないといけないのですが、なかなか上手くいかなくて」


「焦ることはありません。その子達にもいろいろな性格があります。時間をかけていけば心は通じ合います」


 ヴィルトの精霊術はまだまだ。これからに期待が膨らむ。


「師匠達は何を話していたのですか?」


「うん?まぁ……ちょっとした世間話ってところだな」


 いきなり精霊王にお遊び半分で疑われていた、なんて言えずパクスはなんとか誤魔化した。


 パクスに続き、その場にいたベレスとスピリスも口を閉じて、何も言わない態度を取っている。


「ーー!お師匠様!その剣はどうしたんスか!?」


 見ると、パクスの腰に剣がぶら下がっている。しかし、今までもそうだろう。パクスは剣を武器に【力】を工夫して使って戦うような戦法をしている。


 だが、パクスが使う剣は武器屋に売っているような普通の直剣だ。それゆえ、普段とは違う物があることに注目してしまう。


 ーーパクスの腰に今までの直剣とは違う。見るからに貴重な、装飾された剣がぶら下がっている。


 ………………………………


「武器?」


「はい。パクスさん。あなたはこのままでは神の使途に対抗する者として力不足です」


 スピリスがパクスの武器である直剣を見ながら言った。確かに、パクスが使っている剣は老人からもらったものだ。年季が入っており刃こぼれしやすくなっている。


「あなたにぜひ渡したい武器があるのです」


 そう言い、現れたのは装飾が施された綺麗な剣だった。


「この剣は?」


 (かっこいいな…)


 その剣の美しさ、かっこよさにパクスは思わず呟くとこだった。


「昔、私のことを助けてくださった方が使っていたものです」


「そんなのもらえねぇよ」


 形見と思えるものを受けとるのは気が引けて、パクスは拒んだ。


「いえ、受け取ってください。それがこの剣を扱っていた方のご意志です」


「そう…なのか?なら、ありがたく」


 スピリスから剣をもらい、パクスは感無量の思いでいっぱいだ。


「とっても素敵です」


「ありがとう」


 剣を腰に下げたり、持ったりしてかっこいいポーズなどを取るほど、パクスは浮かれていた。


 (確か、この剣の元所持者の方も"英雄ヒーロー"と名乗っていましたね……)


 スピリスは昔、英雄ヒーローと名乗る人と会ったことを思い出した。


 "俺がいなくなっても次のヒーローが現れる。その時にこの剣を渡して欲しい。"  


 その人がこの世界では珍しいとも言える、パクスと同じ黒髪黒目をしていた人だったことは、心の中にとどめておいた。


 ……………………


 剣について長々と話していると、


 ドオオォォォーー


 と、大きな爆発音と共に、鳥の鳴き声が響いた。


 

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