新たな仲間

「あなたは、神の使途ですか?」


 スピリスの言葉に、パクスの頭には「何で?」という疑問でいっぱいだった。


「神の使途…十柱の中には、特殊な力を扱う者がいます」


「俺の【力】はそれだと言いたいのか」


「…はい。以前、神の使途を拘束して聞き出したことがあります。神の十柱は信仰する神より、恩寵が与えられていると」


 つまり、パクスの【力】を神から授けられた恩寵でパクスはスパイだとスピリスは思っている。


 誰が神の使途なのか、まだ明確に分かっていない中スパイがいても気づかない。スパイだと分かっても遅いのだ。


「ふざけるなよ…俺を、あんな奴らと一緒にするんじゃねぇ!」


 スピリスの発言に対し、パクスは声を大にして怒鳴った。


「どうしたんですか?」


 パクスの大声にベレスが何事か、と登場。


「こいつが俺のことを神の使途だと思っているらしい」


「え!?……そんな、パクス様はそんな人ではありません!」


「それを言える根拠は?この方について、あなたはどのくらい知っておられるのですか」


 ベレスがパクスを援助したが、スピリスの発言に黙ってしまう。パクスに助けてもらい、約一年程一緒にいる。


 しかし、まだまだベレスはパクスのことを知らない。


「私は…私はまだパクス様のことについては知らないことが多いです。ですが、これだけは言えます。この方は神の使途ではありません!」


「ベレス……」


 こんな自分のために、そこまで言ってくれるとは……とても感慨深い思いをした。


 ベレスの必死な物言いにスピリスは何も言わない。ただただ目を細くしている。


「俺は…神の使途なんかじゃない!」


 パクスもベレスに続き、言う。


 そんなパクス達の言葉に対してスピリスは、


「…………とても、仲間思いなんですね」


「は?」


 さっきまでの声のトーンとは違う、最初に会った時と同じ優しいトーンの声が返ってきて、戸惑った。


「ふふっ。すみません。少しためさせてもらいました」


「ためさせてもらったって…」


「ーーあなた方のご関係を」


「ーー!!」


 聞くと、スピリスは最初からパクスが神の使途ではないと分かっていたらしい。神の使途の連中には何やら濁ったような魔力が感じられるのだとか。


 パクスからはそんな感じはしなく、パクスが疑われた時、仲間のベレスはどうするのか知りたかったから、という理由でこんなことをしたのだ。


「すみません。少しいたずらが過ぎましたね」


「まったくだ。……それでこれからはお互いに協力していくことは変わらないよな?」


「はい。よろしくお願いします」


 さっきのスピリスの言動から疑惑が浮かんだのか念のため、確認を取ったが、杞憂だったようだ。


 これで、パクス達の新たな仲間が加わった。


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