許せない思い
今から数年前、突如、『獣王国 レフェーラ』へと入国しようとする者がいた。
人間への対応が厳しく、中には人間を忌み嫌うことで、人間と獣人との間に境目がある中、人間が…ましてや単身で獣王国へと入国することなどできることがなかった。
ちなみに獣人とは別で"亜人"もこの世界にいる。基本的な外形が人間と同じで、人間でない身体的特徴のある種族を言う。獣人程ではないが、獣の特徴をもったり、個体によって様々いる。
そんなことより、話を戻そう。
しかし、男は獣王国へと入った。門番をしていた獣人を丸焦げに焼き付くして。
そこからは聞くも残酷なことだった。当時、襲撃された際、獣王は別件で国にいなく、有力者の面々もいなかった。そのため、抵抗することも空しく、たった一人の男に国が滅ぼされたのだ。
そのことを聞いた獣王は腸が煮え繰り返る思いをし、激昂したと言われた。
ーー獣王国を単身で滅ぼした男は、燃えるような赤髪に、ギラついた目、さらに特徴は、男の心情を表現したような赤黒い上着を羽織っていたーー
……………………
「以上が、我が子を通して聞いた全てです」
スピリスからの神の十柱に関する、情報をパクス達は黙って聞いていた。
当たり前だが、聞いていていい気分はしない。逆に怒りを覚える。
「皆様にお願い申し上げます。どうか、これ以上我らの森を失わないためにも、お力添えを!」
スピリスは頭を下げ、懇願した。その態度からどのような思いをしたのか、奴らに対する恨み、憎しみの憎悪が感じられた。
「私は、奴らに村を家族を奪われました。スピリス様のお気持ちが分かります。私でよろしければ微力ながら、力になります」
スピリスの言葉にベレスが賛同の意を示した。
「私は、その…神の使途達には会ったことが、ありません、が、今の話しを聞いて、称号者として、助けたいと、思います」
「私は、我が主の命に従うまでです」
「あたしも、スピリスさんの助けになるッス!」
ネネムの従者であるレト、またラエティアも協力の意を示した。
「ーー」
このまま全員がスピリスに協力、「打倒!神の使途!!」と言った目標を立てるのかと思われたが、一人、パクスだけが、黙っていた。
「パクス様?」
「どうしたんスか?」
「どうか、したのですか?別に協力したくないのであれば、無理にとは…」
「いや、精霊王であるお前がどんな気持ちなのか、察することはできる。俺も神の十柱と名乗る奴と会ったが、許せねぇと思った」
「でしたらーー」
「ただ」
パクスはスピリスの言葉を片手を上げて、途中で待ったをかけた。そして、パクスは言った。
「共通の敵であるのに、一方的に頼みこまれてるっていうのはおかしいんじゃないか」
パクスは言葉を続ける。
「話を聞いていると、どうも俺たちの方が立場が上みたいな言い方をしてる。そうじゃないだろ」
周りのみんなは、きょとんとしているが、スピリスはすぐに、ニコッと微笑み
「分かりました。神の使途達を倒すために、あなた方のお力を貸してくれますか」
そう言い、スピリスは右手を差し出した。
「ああ。こちらからもよろしく頼む」
パクスの方も、スピリスの差し出した手を取った。
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