《精霊編》精霊王との出会い

「お待ちしておりました」


 体感時間では、とても長い時間が経ったように感じた道の終着点に一人の女性が立っていた。


 その女性は淡い光で包まれており、見る人を魅了するような美貌をしていた。


 女性は特に何も言わず、パクス達を一通り見ると、最後にパクスとネネムの方を向き、口を開いた。女性の瞳は穏やかで透き通っているかのように見えた。


「あなた方が、称号者ですね」


 ようやく口を開いたかと思ったら、開口した途端の一声がこの言葉から、警戒心を抱かせる。


「なぜ、分かった?」


「知っていましたから」


 パクスの警戒した声色に女性は穏やかに返した。


「しっ、知っているって、どうして?」


 今度はネネムが女性に尋ねた。


「あなた方のお仲間の称号者様に聞きましたから」


 パクス達の他の称号者といったら、フラマ、フリエス、グロリアの三人だ。


「私は、スピリス。精霊王と呼ばれています」


 ……………………


「つまり、グロリアと定期的に会って、情報を交換しあっていると」


「はい。その際にあなた方のことも教えてくれました」


 スピリスと名乗った女性は、なんと精霊の中の王、精霊王なのだった。


 "魔女"の称号者であるグロリアと定期的に会って、情報を共有しあっているらしい。


「グロリア様とは昔から、仲が良いん、ですか?」


 ネネムがおずおずと手を上げながら言った。


「はい。私が精霊王と呼ばれてから、グロリア様とは仲良くさせて頂いております」


「昔からって…いつからだ?」


「そうですね…魔同戦争が始まるよりも前から会っていますから…ざっとーー500年は昔ですね」


「ーー500年!?」


 500年という大規模な数字を聞いて、パクスは声を大にして驚いた。


「グロリア様はとても、長生きなのですね……」


 ベレスが感慨深そうに呟いた。


「それでは、本題の話へと移りましょう」


 この場の空気に耐え兼ねたのか、レトが本題の話へと促す。

 

 ……………………


「こちらです」


 スピリスに案内され、着いた所は、洞窟の中にある広い空間の中央に大樹が1本ある所だ。


「ヴィルト!!」


 大樹の側に葉っぱが敷き詰めれ、そこにヴィルトが横になっていた。


「ご安心ください。眠っているだけです」


 ヴィルトは息を吸っては、胸を膨らませ、吐いては、縮まる。本当に眠っているだけだ。


「ヴィルトがここにいるってことは……」


 パクスは言葉を述べながら、視線を首ごとスピリスへ向け、疑うような言い方をした。


「お察しの通り、この方をここへ移動させたのは、私の指示です」


「指示って…どういうことだ?」


 スピリスが自分自身でやったーーのではなく、指示をしたと言った。


 すると、スピリスは右腕をパクス達の目線のところまで上げると、その腕にあの淡い光が一つ二つと、現れた。


「私が指示して、この子達の力を借りたのです」


「この子って…」


 ベレスの言う通り、見えるのは光だけ。とても、"子"とは言えない。


「精霊の一種、"微精霊"です」

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