何も無い所にあるもの

 突如、ヴィルトが姿を消したことに、そこにいた全員が言葉を失った。


「え?え?ーいったい何が起こったんスか!?」


 ラエティアは落ちつきなく、髪を青色にし、感情を隠すことなく、さらけ出して焦り


「え、まさか…私が…」


 ネネムは自分が何かしてしまったのではないかという、不安や恐怖でいっぱいで目の前が見えてなく


「落ち着いてください。深呼吸を」


 メイド服を着た女性はそんなネネムをなだめようと必死で


「パクス様!いったい何が…」


 ベレスは何がなにやら訳が分からず、パクスの方を向いて聞いている。そして、そのパクスは


「何が起こったんだ?何で…」


 落ち着きがなく、ラエティアと同じで焦っていた。


「お師匠様、どうすれば…」


「パクス様…」


「ヒーロー、何か指示を」


 全員がパクスの指示を待っている。だが、パクスは今の状況を処理できるほど、冷静ではない。だから


「うるせぇ!ちょっと待てよ!」


 怒鳴りたくないのに、怒りたくないのに、怒ってしまった。


「「「ーーっ!?」」」


 パクスの怒りに全員黙ってしまった。


「……悪い。けど、ちょっと待ってくれ」


 そう言い、パクスは一回二回と深呼吸。無理矢理にでも落ち着くようにした。


「…まずは、周囲をよく見渡そう。焦った所でなにも見つけられない。冷静でなきゃ」


「「はい」」


「了解しました」


 落ち着いていなければ、正しい決断ができない、冷静に物事を判断。


 パクスはこの言葉を、異世界に来る前、地球にいたときから教訓の一つとして、胸に刻んでいる。


 焦った所でなにも生まれない。冷静でいれば、正しい判断ができると信じ、みんなに何か痕跡がないか探すよう指示した。


 ……………………


「どうだ?」


「だめです」


「こっちもッス」


 ヴィルトがいなくなって5分くらい経過した。辺りをくまなく探したが、痕跡となるものはなにも見つけられなかった。


 (ー考えろ。こういうときのお約束だと…)


 こういとき、アニメや漫画ではどういう感じで切り抜けていたか。パクスはいままでのことを思いだし考えた。


 (……だめだ。分からねぇ)


 しかし、解決策となるものはなにも浮かばなかった。


 そんな時、ふと周りの木々がざわめくような風が吹いた。それはヴィルトを包み込んだ時と同じような突風だった。


 その勢いに全員が目を瞑った。


「ーーあ!!」


 風が止み、目を開くと、目の前に道ができていた。それも、まるで横に街灯がついてるかのように、先まで不思議な光で照らされていた。




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