危機的状況
「はっ!」
「やっ!」
いざこざが解決し、依頼内容である魔物の討伐をしていた。
魔物は犬…狼?みたいな魔物で、集団で行動していた。個々の危険度はまぁ、それほど高くない。しかし、集団戦法に長けているらしく、いつの間にか背後から襲ってきたりした。油断していたら、やられてしまうかもな。
「だっ!」
しかし、ヴィルトとラエティアにそんな心配は必要なかった。
ヴィルトは直剣を使い、ラエティアは少し短い剣を二本使って戦っている。ヴィルトは剣での近接戦闘だけに対しラエティアはちょくちょく魔法を使い、場合に応じて臨機応変に戦っている。意外と器用なんだな。
え?僕?弟子を見守るのも師匠の務めだろ?でも、ちゃんとやっている。
パクスは【力】を発動させ、小さい球の状態に維持、それを操り、魔物を倒していた。【力】は魔法と同じくイメージすれば大抵のことはできる。速度を速くしたり、形を変え、尖った尖型にしたりすれば貫くこともできる。
でも…一番注目すべきは、ベレスだ。
「風魔法 エア·スラッシュ」
ベレスが杖を構え、唱えると、辺りの空気を操り魔物の体を切り裂いた。
俺の秘書になってから、頼もしくなったんだ。最初は魔法なんか使えなかったんだが、練習でもしたんだろ。依頼でも活躍してくれている。
…………
ある程度の魔物を倒したら、他の魔物は勘づいたのか逃走し始めた。
「お師匠様…」
ラエティアが髪を黄緑色へと変え、聞いてきた。内容は聞かなくても分かる。"追う"か"追わない"か。
場合に応じた追うか追わないか考える所だが、パクスは
「いや、追わなくていい。…もう、終わった」
見ると、魔物の逃げた方向に逃げたはずの魔物の死体があった。【力】により、逃げた瞬間、撃退したのだ。
「さすが、師匠!」
ヴィルトが称賛の声をあげた。
「これで、終わりなんですか?」
「ああ。これ以上はいいだろう」
探せばまだ仲間はいるかもしれない。しかし、魔物の毛皮などで生計を立てている冒険者や、自然の摂理や秩序といったことを守っていくためにも全滅するわけにはいかない。
「さて、後は村に戻って、終わりにしようか」
「「「はい」」」
…………
「そうですか……ありがとうございます」
「いえいえ。当然のことです」
終わったことを報告しに、パクス達は村へと戻り、村長と話していた。
「それにしても、村を守る魔石はどうしたんですか?」
普通、どんな小さい村でも人が住むならば魔石を配置しておく。弱い…まぁある程度の魔物は魔石には近づかない性質がある。この村にもそのための魔石があるはずなんだが…
「それなんですが…」
「ちっ!おい、離せ!」
すると、向こうから手を縛られた一人の男が連れてこられた。年齢は三十代くらいだろう。まだまだ動ける冒険者のような人だ。
「先日、この男が村に来て、魔石を壊したんです」
「ー!?」
「なるほど…」
「今回、この男を引き渡そうとも思いまして…」
「そうですか、分かりました」
そう言い、パクスは男の方を向いた。
「ー!!」
すると、男と目が合い……否、目が合ったのはパクスではない。その後ろにいた、ヴィルトだった。
ヴィルトと目が合った男は不気味に笑い、こう言った。
「全ては、神のために!」
その瞬間、男の体が突如、黒い霧へと変わり、拘束を解いてヴィルトへと迫った。
「ー!?まずい!」
咄嗟のことにヴィルトもパクスもベレスもラエティアも反応できず、ヴィルトは霧に飲み込まれた。
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