少年と少女

 突然扉を勢いよく開け、二人の少年と少女がパクスの前に現れた。




「はぁはぁ…すみません。止めたんですけど…」




「いえ、大丈夫です」




 国や称号者の人のサポート…いわば、事務員として働いている人が息を切らしてやってきた。




 パクスはその人の安否を伺い、何も無いことを確認すると、下がらせた。




 そして、やってきた二人を見る。




 二人は変わらず、パクスに眩しい視線を送っている。




 このまま黙っているわけにはいかない。それに、パクスからの言葉を待っているように見える。ベレスもパクスの出方を待っている。




 深呼吸をして、咳払いを一つ。そして、パクスは名乗った。




「どうも、"ヒーロー"の称号者 パクスです。初めまして」




 パクスはなるべく、笑顔ではっきり聞こえるように言った。初対面の人に好印象を持ってもらうべく、振る舞った態度、パクス自身悪くないと思えた。




「え!?」




「なっ…!?」




 しかし、聞こえてきた返事は予想しないものだった。




「え?何…?」




 咄嗟のことにパクスも訳が分からなくなった。




「初めまして…じゃないですよ!」




「え?」




「僕です!」




「誰?」




 少年の方が身を乗りだし、詰め寄ってきたが、パクスの、誰?発言に意気消沈してしまった。




「お師匠様!あたしです」




「は?」




 今度は少女が師匠と言って、身を乗りだしてきた。しかし、パクスは本当に分からないため、煩わしいような、は?という発言に少女はショックだったのか、意気消沈してしまった。




 その時、パクスとベレスは驚愕の表情を浮かべた。少女の髪の色が金色から青色へと変わったのだ。




 パクス達は驚いていたのに対し、少女の方は、最初は目を輝かせていたのが、すぐに光を失い絶望した表情をしている。




 (え~~)




 何故なのか、パクスは訳が分からず記憶を呼び起こそうとする。




「あの…ひとまず話しを聞いてみませんか?」




 すると、ベレスがパクスに耳打ちしてきた。




 …………




「まず、君たち二人は…誰?」




「そんな…」




 ベレスの言葉通り話しを聞くため、椅子に座り、話しを聞くことにした。




「会ったことがあるようだけど…悪い。記憶にない」




「お師匠様…」




「その…俺のことを師匠と呼ぶことに関しても何でだ?」




 パクスはおそらく自分の記憶力の問題だと思い、二人から話しを聞き、思い出すことにした。




 何故この二人は自分のことを師匠と呼ぶのか。二人はいったいなんなのか、を。




「そうですか…わかりました」




 二人はそれぞれ顔を合わせ、パクスに向き直った。




「僕は"ヴィルト·ウィタス"」




「あたしは"ラエティア"」




「僕たちは前に、師匠とお会いしたことがあり…」




「その時に弟子入りしたと…」




 少年…ヴィルトはこくん、と頷いた。




「…どうッスか?お師匠様」




 パクスは考える素振りをして、天井を見上げた。




 (……や~べ。全然っ思い出せねぇ!)




 パクスは記憶力に関しては強くない。名前ぐらいでは、思い出すのが難しいらしい。




「俺と出会ったところ……教えてくれないか?」




「「ーー分かりました」」

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