《第一章 少年と少女との再開》称号者の日常

 称号者"英雄ヒーロー"が誕生してから約一年が経った。




…………




「パクスさん。今日採れた野菜どう?」




「ありがとうございます」




 道を歩いていると、野菜を売っている、老婆に話しかけられ、採れたての品物を頂いた。




 …………




「こんにちは!ヒーローさん」




「ああ。こんにちは。今日はいい天気ですね」




 歩いている途中に話しかけられ、ごく普通の会話をした。




 …………




『やぁ、みんな。僕はパクス。称号者"英雄ヒーロー"だ。今日はいつも通りの1日を紹介していこうと思う』




「パクス様。ここにいたんですね」




 すると、後ろから声を掛けられ、振り返ると、


桃髪のショートカットの髪型をしていて、前髪により右目を隠しているが、透き通った水色の目をした美少女がいた。軍服を模したワンピースを着込み、朗らかな笑顔をしている。




「ああ、ベレス」




『僕に話しかけてきたこの女性はベレスという。僕が称号者になる前に出会い、まぁ、わけあって一緒に住んで、僕の秘書をしてもらっている。最初は、さん付けだったんだが…僕の秘書になってからは、なぜか様呼びになった。…………ちなみに僕は、軍服のような服装に漆黒のロングコート、その上に白いマントを羽織っている。これが、普段の服装と言えるかな。ヒーローといったら、マントは必須だからね』




 二人は、王城へと向かって、歩き出した。




『たぶん気になってるかもしれないが、一緒に住んでいるからって、変なこととかはしていないよ!元の世界とは違うからとは言っても、節度ある行動を大切にしている。…それと僕達の家は国から少し離れた森付近にある。近くには花畑や景色がいい高台がある。俺が称号者になってからは、通行税がなくなってな、誰でも出入りができるようになった。ありがたいね。』




「やぁ、パクス。それにベレス嬢も」




 王城への入り口で優男が話しかけてきた。




 男はやや長めの空のような水色の髪をなびかせ、腰に剣を帯剣している。




「よう。フリエス」




『この優男は僕と同じ称号者。"革命"を持つフリエス·フォルマ。ちょっとナルシスト部分があるが、とても良い奴だ。僕が称号者になってからも優しくしてもらっている。フリエスの美貌から、ファンクラブらしきものもある。それくらいモテるのだ。実際、仕事振りや性格、容姿から見て、もし僕が女性だったら、好意を抱いていただろう』




 …フリエスと話した後、王城へと入った。




「よォ。パクス」




 王城へと入ったら、赤毛の長髪に、右目の眼帯が目立つ男がパクス達に話しかけた。




『この男はフラマ。"煉獄"の称号者。容姿が少し厳つくて怖いと思うかもしれないけど…良い奴だ』




 フラマとも少し話した後、自室へと向かって歩いた。




『称号者になってからは、僕専用の仕事部屋が与えられた。歴史の本や国に関わる伝説らしき物…などなど。いろいろある』




「えーと…ーー」




「ふむふむ。なるほど、興味深いわね」




 パクス達が仕事部屋へと向かっている途中に二人の女性が話していた。




 一人は金髪に巫女服の女性。年はパクスとあまり変わらないように思える。




 もう一人は紫髪をツインテールにまとめた女性…否。女性は女性と知っているが、外見が幼女…小学生ぐらいの身長なのだ。




「お疲れ様です。ネネムさん。グロリアさん」




「お、お疲れ様、です」




『この二人も同じ称号者。まず、金髪で巫女服を着た人がネネム·アマデウス。俺の後に"聖女"の称号を与えられた称号者だ。元々は聖職者として活動していたんだが、ある日から聖魔法が使えるようになって…後はまぁ、想像にお任せするわ。…とにかく!称号者になった。』




「お疲れなのよ」




『もう一人はグロリア·カイン。俺が称号者になる時、フラマ達と一緒に並んでいた人だ。見た目は幼女…だが、"魔女"の称号者だ。ちなみに、身長のことについて言うと、とても怒る』




 それから、二人とも少し話した後、自室へと向かった。




『まぁ、仕事をしたり、ゆっくりしたりする。そんな1日を送ってるよ。この仕事上、戦うことや外交関係的なこともしている。大人の気持ちがわかるな。まぁ、異世界に来てから、何とかなってる。目的は…まだ成し遂げていないが。…そんな感じだ。最初は不安だった。称号者になって、後ろ指を指されまくれるんじゃってさ。でも、みんな優しくて、サポートしてくれる。そんな人達がいてくれるだけでも、俺は頑張れる。そう、これからも』




「お待ち下さい!」




 (うん?)




 突如、誰かが呼び止めるような声を発し…




「お「師匠」様!」




 パクスの仕事部屋の扉が勢いよく、開かれた。




「え!?」




 突然のことに、パクスとベレスは驚いた。




 きらびやかな金髪をなびかせた少年と同じく金髪のポニーテールに満面の笑顔をした少女、二人がパクスに向け、目を輝かせたのだった。

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