討伐
「大丈夫か?」
ベレスの心情を察するため、パクスはベレスに声をかけた。
「はい。大丈夫です」
だが、ベレスは覚悟を決めた目付きをして、魔獣を睨み付けていた。
「グルル…」
対する魔獣も、自分に敵意が向けられていると感じ低い唸り声をあげた。
(よし…なら)
「ベレス。お前は魔力をためろ。俺があいつの注意を引き付ける。合図をしたらぶちこめ」
「ーッ!分かりました!」
パクスが立てた作戦はいたってシンプルな、相手の注意を引き付け、隙を見て、攻撃を仕掛けるものだった。
獣は人間より、知能が特段に高いというわけではない。パクスはそう思い、この作戦を立てた。
「よし、魔力をためろ!」
パクスが魔獣相手に走りだす瞬間、ベレスに叫び、それを聞いたベレスは手を前に構え魔力をため始める。
「グルル…ヴォーー!!」
パクスが迫り、ベレスが魔力をため始めたのを感じ、魔獣は口に魔力をため、吐き出した。
だが、パクスが前に【力】による障壁を展開したおかげで、当たることはなかった。
魔獣の前まで近づいた時、【力】を使い、俊敏に動き、魔獣の横へと移動した。
移動する際、右手に【力】を宿し、手刀を放ち、魔獣の左前足を切断した。
「ヴォーー!!」
パクスは追撃を仕掛け、右後ろ足をも切断した。
魔獣は悲痛の雄叫びをあげ、うまく立てずにぐらついている。
「いまだ!打ち込めー!!」
魔獣がぐらつきうまく立てずにいるのがチャンスと思い、ベレスに打つよう合図した。
ベレスはすでに、制御しきれないくらい、大きい魔力の塊を準備していた。大きさにして、巨大ボールほどの大きさだ。
「うあぁーー!!」
パクスの合図を受け、ベレスは叫び、ためにためた魔力の塊を魔獣にぶちこんだ。
発射された魔力は迅速に動き、ただ、一直線に魔獣相手に直進した。
「グオォォーー!」
魔獣は足を切られたせいで、身動きが取れず避けることができなかった。
魔力の塊が魔獣に当たり、おもいっきり、爆ぜた。
ドオオォォーと響く音がした。
……音が止まり、爆ぜたことによって起きた煙が消えた時、そこに魔獣の姿はなかった。
唯一、周りに血が飛んでいただけだ。
「やっべぇな…」
ベレスがためた魔力の威力を見て、パクスは思わず呟いた。その威力は想定したよりもさらに上の威力だったからだ。まさか魔獣を吹き飛ばし、粉々にするとは思ってもいなかった。
「ベレス!やったな!」
魔獣を倒したことで、仇が取れたことを祝おうとベレスを探すと…
「はぁはぁ…」
ベレスは地に膝をつき、胸を膨らませたり縮ませたり、息を切らしていた。
「大丈夫か?」
「…はぁはぁ、はい」
おそらく限界まで魔力をためたことによる、魔力切れを引き起こしたのだろう。
顔中汗まみれで、顔色が悪かった。
「…やったぞ!お前が魔獣を倒したんだ!」
「…私が?」
「そう"お前が"だ」
ちゃんとベレス自身によって魔獣を倒したことを報告すると
「そうですか…良かった…仇を、取れたんですね…」
ベレスは涙を流した。
「ああ。そうだな」
その姿をパクスは温かい目で見ていた。
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