仇
「ヴォーー」
熊のような魔物が現れ、パクス達を両の眼で捉え、雄叫びをあげた。
「魔獣…熊、だな」
それは魔物というより獣…魔獣と言った方が正しいだろう。パクスの基準では、動物のような見た目をしているのを魔獣、それ以外を魔物と思っている。
額から角を生やし、推定体重はおよそ300kgくらいだろうか。赤く光った眼を向けてくる。
「あ…あ、あぁ…」
「ー?ベレス、どうした」
横でベレスが何か恐ろしいものでも見るような目を向け、口は開いたまま声をだせずにいた。
「あの、魔物…です」
「ー?」
「この村を襲ったのが、あの、魔物なんです!」
ベレスが突然、口調を強め言った。そして、魔物…魔獣に対して、敵対心を向ける目付きをした。
「あいつが…」
人は見かけによらない。どんなに弱そうに見える人でも、実際自分をはるかに凌駕することがある。それは、今目の前の相手にも当てはまることだ。
パクスは【力】を発動、体が反応し、両の眼の色が変わる。魔獣に注意を払った。
「ヴォーー」
魔獣が雄叫びをあげ、突進してきた。速い速度で、突進してきた。家の柱なんか容易く破壊できるような力があった。
「ふっ!」
パクスは魔獣が自分にぶつかる前に、自分と魔獣の前に【力】による、障壁をはった。
「ヴォッ……」
魔獣は障壁にぶつかった後、判断を変え、数歩下がり、口を開け魔力をためだした。
(…大して強くない。俺なら勝てる。…なら、殺るか)
パクスは魔獣を殺すかどうか考え…
(いや、待てよ…)
「ベレス、チャンスだ!仇を取るチャンスだぞ!」
「え?」
ベレスに任せるようにした。
「どういう意味、ですか…」
ベレスは突然の言葉に対応できずにいた。
「ヴォーー」
そうしてる間に魔獣がためた魔力をパクス達に向けて放った。それは単純に魔力をためて放つシンプルな攻撃。だが、ためにためた魔力の量、密度は人の命、建物を壊すのに十分な威力を秘めていた。
「あの魔獣に家族を、村を奪われたんだろ!なら…仇を取らなきゃならないんじゃないのか!」
「ー!?」
目の前に【力】による、障壁をはった。さっきよりさらに【力】を込めたおかげで魔獣の攻撃を防ぐことができた。
「あの魔獣を殺すことはできるが…俺よりベレスがやらなきゃ意味ないだろ」
ベレスは目を見開き、パクスと魔獣を交互に見た。
「でも…私なんかじゃ…」
「大丈夫。俺がサポートする」
パクスの言葉にベレスはなぜか胸が熱くなるような感じがした。
「怖い気持ちは分かる。でも、いつまでも怖がっているままじゃだめだ!」
パクスは感情を込め、強い口調でいう。
「恐怖という感情を乗り越えなければ、何も手に入らない!チャンスがきたなら、掴みとるんだ!」
ベレスは眼を閉じ、家族と村で過ごした時のことを回想した。
「分かりました。私が、倒します」
そして、ベレスは意を決して、涙を拭き、立ち上がった。
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