《序章》 暇

 試験の途中で気絶してしまい、目が覚めたら病室にいた。目の前には、まるで別人になったベレスがいた。その後、フラマが来て、試験の結果を聞いたり、内容について語ったりした。




 パクスの試験の結果から称号者にさせるかどうかの審議が終わるまで、パクスは暇になった。審議が時間がかかるかのか早く終わるのかよく分からない。




 そんなことはいい!




 要は、そんな暇な時間ができたパクスは今……




「ここ、か…」




「…はい。ここです。ここが、私が育った"フィム村"です」




 ベレスの故郷、ベレスが育ったフィム村に来ていた。




 …………




「無事に治って良かったですね」




「まぁ、な」




 病室でフラマとしばらく話した後の時点でほとんど体調に関しては問題なかった。




 だが、大事をとって半日くらい休ませてもらった。その間、体のちょっと痛むところを【力】を使って治癒していた。【力】を問題なく使える…体調も万全だ。




 水の刻の3刻…つまり8時くらいにパクスとベレスは王城からでてきた。王城にある病室を使っていたらしい。




 王城からでてきたパクスは動きやすい服装の軽装をしていた。もともと着ていた服は試験でボロボロになってしまい、アイテムボックスに入れていた予備の服装を着たのだ。




「さ~て、どうしようか…」




 暇な時間ができたのは良いがその間なにをするのかパクスは決めていなくただ暇になってしまったのだ。




「ああ!そう言えば、ベレス」




「はい」




「この前の返事を聞かせて欲しい」




 前に聞いた提案のことを思いだし、パクスは返事について尋ねた。




「私は、特に帰る場所がありません。なのであなたと一緒にいます」




 と、一緒にいると返事が返された。




「そうか…なら、これからよろしくな」




「はい!よろしくお願いします」




 パクスは何か胸が熱くなるような、鼓動が速くなったような感じがした。




 (…こんな、気持ちなのか)




 漫画などでよくパーティーに加入したり、仲間になったりするような場面を思い浮かべた。あまり、感情移入はしていなかったが…今なら気持ちが分かるような感じがした。




 (それにしても…一緒にいる、なんて…)




 まるで告白でもしたかのように思えた。




 パクスは生まれてから彼女などいたことはなく、勿論恋愛経験などあるわけない。そんなパクスが告白のような言葉を言ってしまったのだ。




 パクスはベレスの方をチラッと一目し…




 (まぁ、いいか)




 と、考えるのをやめた。




「これからどうしますか?」




 ベレスが聞いてきた。




「それについてなんだが…」




 先ほどの話しのなかから、頭の中に残るワードがあり、前に聞いたことを思い出した。




「ベレスの故郷の村にいきたいな…」


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