第29話 模擬戦 5 "ヒーロータイム"
フラマが炎を纒い狂喜的な笑みを浮かべていた。
「それじゃァ、いくぞォ!」
フラマが両手を広げ前屈みの姿勢をとり、威勢よく咆哮すると…広範囲の炎が襲いかかってきた。
「エグいな…」
パクスはそう言いながら、手を前に突きだし【力】を発動させ、障壁をはって守った。
「はっ!いいぞ!その【力】!」
フラマはパクスの【力】に興味津々のようだ。
「ーなっ!?」
炎が広範囲を締めていたことから、目眩ましになり炎のなかから飛び出してきた。
「おらァ!」
そのままパクスを殴りつけ…パクスは鼻血が出た。
「くっ…」
「まだまだァ!」
それでもフラマはやめることなく攻撃し続けた。
「…ーッ、そこっ!」
だが、フラマの隙をつき、一発喰らわせることができた。
「ぐっ…まぁ、一筋縄じゃ無理だよなァ」
パクスから一発をもらい、フラマは下がり距離がうまれた。
「…いってぇ」
フラマに殴られたところの皮膚が焼け、酷いところでは肉が見えていた。どうやら、攻撃中炎を操り自分の攻撃に混ぜていたらしい。
「ーふぅ」
パクスは【力】を発動させ、治した。
「「おおっ!」」
そうすると、周りから驚きの声が聞こえた。
(え!?何!?)
「お前ェ、何をした?」
すると、フラマが口を開き、聞いてきた。
「…普通に治しただけですが」
パクスは自分が何か変なことでもしたのかという風な態度を取った。
「お前、光魔法でも使えるのかよ」
光魔法の中には傷を癒す回復魔法がある。パクスが傷を治したことから光魔法が使えるのではと思ったのだろう。
「いや、残念ですが俺は魔法が使えなくてですね、これは俺の【力】による効果です」
イメージとしては傷ついた細胞を修復、神経などを繋ぎ合わせるといったところだろう。だから例え腕や足を切断されても部位が残っていれば元に戻すことができる。火傷やかすり傷くらいお茶の子さいさいだ。
医学に関しての知識がないからわからんげど…
「へ~、お前のその【力】いいなァ」
「…ありがとうございます」
フラマに【力】の効果について話したところ羨ましそうな視線を向けられた。
「だが、その【力】でこの俺を倒せるかどうかは分からねェぞ」
フラマは戦闘態勢に入っていた。
「そうですね。でも、どうしても勝たなくてはいけません。なので…」
パクスは言葉を区切り、言った。
「本気でいきます」
その直後、パクスは【力】を発動させ、全身に循環、周囲の空気を乱れさせながら、力を全身に張り巡らせてパワーアップした。
空気を乱れさせたことで髪は揺れ、瞳の色は輝き【力】のオーラのようなものが溢れていた。
「なん…だ、それは」
この状態は老人との修行で身につけた、奥の手、パワーアップした姿。
ヒーローに憧れているパクスはこの状態を…
「"ヒーロータイム"」
と、名付けた。
(だっせぇ…)
パクス以外の誰もが心のなかでそう思った。
「はっ!すげェと思ったがネーミングセンスがなァ…」
フラマはどうやらヒーロータイムという名前が気にくわないようだ。
(…別にいいじゃねぇか)
「それじゃあ、いきます」
そういい、パクスはフラマに突進した。
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