第28話 模擬戦 4

 (お、俺…?)




 確かに 順番でいえば次がパクスの番である。が、相手が称号者だと言うのは知らなかった。




「おぉ!これはいい。俺に勝ったパクスと称号者との模擬戦!白熱したものになりそうだ!」




 ベックが興味津々に言ったので断りにくくなった。




「おらァ!パクス!速く降りてこォい!」




 フラマは準備万端でパクスと模擬戦がしたいと誰しもが分かった。




 (…しょうがないか…)




 当然、断ることが出来ず、パクスは模擬戦をするべく、訓練場の中央付近へといった。




「へへっ!さっきの試合見てたぜェ。ベックを吹っ飛ばすとはなかなかやるなァ!」




「どうも…」




 どうやらベックとの模擬戦を見ていたようで見どころがあると思われたらしい。




「さぁて…お前の力を見せてくれやァ!」




「始め!」




 フラマの大声と同時に開始の合図がなり、パクスの最後の模擬戦が始まった。




「あぁああああー!」




 ベックとの時と同じやり方で、パクスは【力】を発動させ、そのまま突進した。




「ふん!」




 そして、そのまま速度を保ち渾身の一撃を打ち込んだ。




「なっ…!?」




 だが、フラマは両手をクロスさせ受け止めていた。




「お前ェ、この力魔法じゃあァねェなァ!」




「ー!?」




 フラマはさっきの一撃からパクスの【力】について気づいた。




 だが、それもそうだろう。




 他から見れば魔法が使われていないことが簡単に分かる。




 パクスもばれることくらいは覚悟していたが、実際に先に称号者の人に言われたことに驚いた。




 また、ベックを吹っ飛ばすほどの威力をフラマは受け止めたのだ。




「ははっ!いいなァ。さぁ、きやがれ!」




 パクスは臆することなく向かっていった。




「「………」」




 その後は二人の闘いが続いた。




 殴り、蹴り、掴んで投げ、防御して…攻防一体の状態が続いた。




 (す…すげぇ!)




 周りでパクスとフラマの模擬戦を見ている誰もが思った。




 称号者の人と互角で渡り合える者はそういない。パクスとフラマの闘いは周りにいる全員が注目していた。




「ああああー!」




 パクスはフラマの隙をつき、懐に一発をぶちこんだ。




 最初に攻撃したときよりもさらに力を込めて…




「ごほっ!」




 フラマから苦しさから息をはく音が聞こえた。




「…へへっ!なかなかやるなァ!いい、実にいい!」




 フラマはパクスとの闘いを楽しんでいるように見え、パクスは狂喜に感じた。




「それじゃァ、俺もやろうかァ」




 フラマがそう言った直後…




 (…きたか…)




 さっきの模擬戦でも見せた…火がフラマの辺りを灯し始めた。




 火が灯り、さらに温度が上がっていく。




「さぁ、パクスゥ!続きを始めようか」




 第二ラウンドが始まろうとしていた。


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