第27話 模擬戦 3

 称号者、それはアウロラ王国の国民だけでなく、魔族や魔人、天使達ですら知っている存在である。




 称号者を一言で表すのならば"猛者"もしくは"最強"と誰もが言うだろう。




 それほど優れた人なのだ。




 称号者がいるのはアウロラ王国だけである。




 依頼であれば、他国だろうと駆けつける。




 称号者は今のところ三人、いる。




 そして、その内の一人、"煉獄"の称号者、フラマが今、ここにいるのである。




「それじゃァ、始めようかァ」




 フラマがそう言い、模擬戦が始まったと思ったが…




「………」




 対する受験者の人が微動だにせず全く始まらなかった。




「おいおい、始まってるぞ!」




 フラマがそう言っても動こうとせず、まるで相手の出方をうかがっているようにしている。




「仕方ねェなァ」




 フラマがそう言った直後、フラマから異様な気配が溢れ周りにいたすべての人達に浴びせた。




「ーッ!?」




 対する受験者は防衛本能のように、自分の身を守るために構えた。




 また、ベランダのほうから、模擬戦を眺めている人達は異様な気配に萎縮されたり防衛本能のように杖や剣を構えている人がいた。




 また、パクスもそのうちの一人であり、【力】を発動させていた。




 (何だ…この威圧…やべぇ)




「うっ…うぉおおおおー!」




 威圧に耐えられずフラマを相手にする受験者は吠えながら、突進した。




「お!きやがったなァ!」




 突進してきた受験者に対しフラマは…




「おらぁ!」




 受験者の突進をかわし、脇腹を蹴り飛ばした。




「…無駄な動きがでけェ」




 そして、どこが悪かったのか指摘した。




「おら、早くかかってこい!」




 そして、またもや攻撃を仕掛けるように促した。




「くっ!土魔法 アースワーム!」




 唱えたあと、地面の一部分が盛り上がり、それぞれ右手、左手に変化した。




 まるで、巨人の腕のように。




「ほ~う…」




 フラマは感心したようにその光景を見ていた。




「はっ!なかなか良いなァ!なら…」




 そう言った後、フラマの周辺が歪んで見えた。




 だが、単に歪んだのではなく、その後フラマの体から火が灯り、炎へと変わり燃え始めた。




 辺りが歪んで見えたのは熱歪みだったのだ。




「おらァ!かかってこい!」




 炎を灯し、フラマは挑発気味にいった。




 (いやいや、何をしているんだ?相性が悪いだろ…)




 魔法の種類についても相性があり土と火の魔法では火のほうが不利である。そのことからパクスはフラマがなぜ不利な火の魔法を放ったのか分からなかった。




「…おちょくるのも大概にしてください!例え称号者でも…」




「いいッからァ!かかってこい!」




 受験者の言葉を最後まで聞かず、フラマは攻撃するよう指示した。




「ーッ!くらえ!」




 その合図と同時に巨大な腕がフラマへと振り落とされた。




「………」




 だが、フラマはニヤッと笑い、右手を前に突きだし…




「…くらえ…」




 その瞬間、炎が圧縮し光線のように噴射され、巨大な腕を粉砕した。




「なっ…!?そん…な…」




 受験者の人はまさか有利な魔法を使ったのに負けたことにショックをうけ、膝をついてしまった。




 さっきの技で圧倒的な実力差が分かったのだろう。




「そこまで!」




 戦意が喪失したことから終了の合図がなった。




 ………




 さっきの模擬戦を見ていた人達が全員、憧れの眼差しをフラマに送っていた。




「さぁて…」




 そして、フラマは辺りを一瞥し…パクスを眼帯とは逆の目で捉え…




「お前ェ!降りてこい!次はお前だァ!」




 と、パクスとフラマの模擬戦が始まろうとしていた。

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