第25話 模擬戦
ベックに名前を呼ばれ、パクスは下へと降りた。
(誰が相手なんだ?俺の【力】でどこまでいけるかな?)
上から見ていたことである程度の情報は手に入れたつもりだ。
「俺が相手だ!」
そんな中、模擬戦の相手は…
「うぇ!?ベック…さん?」
何と、試験監督のベックだったのだ。
(いやいやいや、何でいきなり試験監督が?)
「あの…ベックさん、いきなり試験監督であるあなたが相手は少々酷かと…」
騎士団員の人が指摘しようとしたが…
「うるさい!俺があいつとやりたいんだ!」
と、大声に威圧され、黙ってしまった。
(いや、僕はやりたくないですー)
パクスは内心では嫌々と感じているが…
「おっしゃ!ベックさんよろしくお願いします!」
ここを断ってしまっては試験の合否に関わってしまうと思い、やむを得なかった。
「へっ!良い熱意だ。それじゃ、始めるぞ!」
騎士団員の一人が審判として…
「それでは、始めてください!」
と、二次試験のパクスとベックによる模擬戦が始まったのだった。
「くっ!」
パクスは開始と同時に【力】を発動、全身に流し循環させ、身体能力を大幅に上げる。
「うぁああああー!」
模擬戦前に考えていた、開始から全力で突進、という作戦を実行した。
ベックに目掛けて、何の小細工もなく、真っ正面から突進、声を叫び力を引き上げ、突進した。
そして、タイミング良く、渾身の右ストレートをくらわせた。
だが、パクスはこれで勝てたとは思ってはいなかった。騎士団員の…試験監督でもあるベックがこんな力任せの攻撃でやられるとは思っていなく…
「な!?何!?ぬぉ!?」
と、思っていたら、予想しない声がベックから聞こえた。
ストレートを繰り出した右手からは手応えがあった感触がしている。
(え!?ちょ…え!?)
パクスはその場に立ち、攻撃を受け、そのままぶっ飛び壁に激突したベックを見つめていた。
「…くっ、ぬぉ…」
ベックの様子は突然の攻撃に対応出来ず、吹っ飛ばされ、そのまま身動きが出来ずにいる。
(…え~、終わり…か?)
ベックが一向に立ち上がることがないことからパクスは一回戦目はもう終わりなのではないかと思った。
「………そこまで!」
と、審判も続行不可能と見たのか終了の合図を出し…
(…え、ああ勝った?)
パクスの勝利が確定した。
………
「何だ、あいつは?」
「まさか、ベックを一撃で倒すとは…」
周りからは誰もが予想出来なく、驚きや欲望など様々な視線、言葉が浴びせられた。
「パクス!」
「え!?あ、はい」
騎士団員の人に回復魔法をかけてもらい、万全の状態になったベックが近づいてきた。
「流石だな。俺はもう対応ができなかった」
ベックからは称賛の言葉をもらった。
「…ありがとうございます」
パクスはその言葉に謝意を述べた。
「この二次試験では力の差を見せつけるのが目的だったのだが…まさかの大番狂わせだな」
「あはは…」
パクスも内心やってしまった…と思ってしまっていた。
………
「ほ~う」
パクスとベックの模擬戦を入り口付近のところで見ていた、長髪の赤毛をし、右目の眼帯が目立つ男がひっそりと呟いた。
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