第23話 準備
次の日、つまり第二次試験の前日になった。
「あ…あの、ありがとうございました」
パクスとベレスは宿の入り口で立ち話をしていた。
帰るところがなく、何か食べる物もないなか、自分の借りている宿に泊めてくれたり、食事も与えてくれたパクスにベレスは感謝してもしきれない恩があった。
「いいよ。別にこれくらい。困ったときはお互い様だろ?」
ベレスの感謝に対しパクスは、当然のことをしたまでだと返した。
(やっぱり、この人は他の人と何か違う…)
ベレスの心境でパクスが他の人とは違う存在だと思えた。
「それより、これからどうする?」
「え?」
パクスの質問にベレスは答えられなかった。
「いや、昨日の返事はまぁ、明日聞くとはなったが、今日、ベレスはどうするんだ」
昨日の話しでパクスと一緒に生活するように話し、その返事は二次試験が終わってから聞くとなったが、今日は別々に行動するのか確認する必要があった。
「…パクスさんは、今日、何をするんですか?」
ベレスが逆にパクスに聞いてみた。
「俺か?そうだな…武器を見てみたいし、後は森のほうにいって、修行でもするかな…」
パクスは今日、主に森で修行する予定だった。
「私は…」
パクスの予定を聞いたがベレスはなかなか答えられずにいる。
「私は…いつも通りのことしか出来ません」
それは、質問の答えになっていない返答だった。
「いつも通りって、盗みでもするのか?」
いつも通りと聞いて、ベレスの事情を聞いたパクスは盗みをするのではないかと思った。
「まぁ、必要とあれば…ですかね」
ベレスは苦笑気味に答えた。
「そうか…なら、ほら」
パクスはそれに対し、懐から小さい袋を取り出し、ベレスに渡した。
「これは…?」
渡されたものが何か分からずベレスは戸惑っていた。
「金だ。金貨一枚、銀貨五枚しかないが…」
その袋の中身は貨幣だった。
「え!?何で…」
突如、金を渡され、何の理由かが分からず、ベレスはさらに戸惑った。
「このままじゃ、また盗む生活に戻るんだろ?生きるためとはいえ、盗みは良くない」
元の世界では法律により盗みはご法度だった。
この世界ではどうか分からないが、許容すべきではないと、パクスは思った。
「でも、いただけません。こんな大金…」
だが、ベレスは受け取るつもりはないらしい。
「いや、貰ってくれ。新しい服や食べたい物でも買えば良い」
今のベレスの服装は薄く汚れた服装で、ボロボロである。
「でも…」
それでも、ベレスは受け取ろうとはしなかった。
「なら、交換条件といこう」
パクスは突然、条件を提案した。
「交換条件…?」
「ああ、この金を受け取ってくれ。」
「え!?いや、だから…」
パクスの言葉に先ほどと同じように返そうとすると
「その代わり、いつかこの恩を返して欲しい」
「え!?」
それは、交換条件と言えるのか分からない、提案だった。
いつか、という時間制限がなく、有耶無耶に出来る条件だったのだ。
それでも、ベレスは…
(まったく、この人は…)
「分かりました。このお金ありがたく頂戴します。そして、この恩いつか返します」
ベレスは受け取り、恩を返すと言った。
「オッケー、それじゃ、俺もういかなきゃ」
そう言い、パクスは修行をしに、ベレスはどうするのか考えながら歩きだした。
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