第22話 理由

「私は小さい頃、この国から少し離れた村に住んでました」




 ベレスは自分のことについて語り出した。




「村は平和で、私も不自由のない生活を家族と続けていました」




「家族、か…」




 家族と聞き、パクスは元の世界の自分の家族について切ない気持ちになった。




 ベレスは続けて言う。




「でも、突然近くの森に魔物が現れ、村の中でも屈強な人達が討伐しに出たんですが…そのまま帰って来ないで代わりに、魔物が出てきたんです」




「ちょっと待て!その魔物は単体か?それとも複数いたのか?」




「いえ、一体だったかと…」




「単体の魔物…村を襲ったということは、聖級…最低でも上級には分類されるな」




 単体で村を襲う魔物は聖級…最低でも上級の魔物でなくては出来ないこと、そのことから魔物の判別を行った。




「…国から助けは来なかったのか?」




「いえ、来たらしいんですけど…タイミングが遅かったみたいで…」




「間に合わなかったのか」




 国からの助けが来たなら大惨事は免れることがて来たと思えるが、どうやら間に合わなかったらしい。




「それで…両親を亡くし、村のみんなも…」




 ベレスは涙を浮かべ、嗚咽まじりに言った。




「そうか…それで頼れるところがなく盗んだりしていたのか…?」




「…はい」




「………」




 ベレスの過去を聞き、パクスはベレスのことをどうすべきか悩んだ。




 (このまま別れてしまっては、また同じ境遇に戻すだけ…どうしたらいいんだ)




「「………」」




 そのまま二人の静寂な時が流れた。




「あ、私邪魔、でしたよね?すみません」




 そう言いベレスは出口の方へ向かった。




「いや、待ってくれ!」




 パクスは出口の方へ向かったベレスをひき止めた。




「…俺と、俺と一緒に来ないか…?」




 パクスはそう勇気を込めて言った。




「え!?」




 ベレスは驚愕の声を発し、固まった。




「いや、別に嫌ならいい。ただ、このまま一人で行かせたらまた同じ境遇に戻るだけだ。なら、ちゃんとした道を歩めるように、衣食住は必要だろ」




 パクスは真面目に現状のことについてまとめ提案した。




「…そう、ですか、確かにそうですね。私はこのままだと同じ生活に戻ります」




 ベレスは少し考えるようなポーズをとった。




「べ、別に今答えを聞きたい訳じゃない。俺は明後日、二次試験がある。それに合格すれば、騎士団に入れる。だから、返事は明後日、二次試験が終わった後でいい。どうだ?」




 騎士団入団試験は明後日に行われ、それに合格すれば安定した生活を得られる。その時に返事を聞ければいいとパクスは言った。




「…わ、分かりました。その時まで考えておきます」




「ああ、頼む」




 こうして一緒にいるという件は保留になった。




「そ、それじゃあ、私はもう行きます」




 ベレスは別れを告げ、出口へ向かった。




「別に、泊まってっていいぞ」




「ふぇ!?」




 パクスから泊まっていいと聞いたベレスは戸惑いの表情を見せた。




「で、でも、食べ物をもらっただけでも十分です」




「いい、いいから泊まってけよ。大丈夫、何も変なことはしない!」




 パクスはベレスに告げ、ベレスは少し考え…




「…わ、分かりました。じゃあ、ありがとうございます」




 ベレスは泊まるように決断した。




「そういや、ここに風呂とかって、ないんだな」




 パクスが宿屋に風呂がないことに違和感を感じ、言った。




「お風呂とかは貴族の家に主にあると思います」




「貴族の家だけ!?マジか」




 貴族の家にしか風呂がないと聞き、パクスは膝から崩れ落ちた。




「そんなに、お風呂に入りたいのですか?」




「まぁ、さっぱりしたいじゃん?それに、汚れとかも落としたくないか?」




「そうですね…」




 ベレスは身体中汚れでおり、髪の毛も汚れで茶色くなっていた。




「まぁ、ないならしょうがないか…」




 そして、二人は次第に眠りについていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る