第18話 再会

「はい、パクスさんですね。無事一次試験合格おめでとうございます」




 一次試験が終わりパクスは合格したことを知らせるため最初に集まった試験会場である訓練場に来ていた。




「それでは、第二次試験は二日後の水の刻から始まりますので遅れないように」




「ありがとうございます」




 パクスは受付の人にお礼を言って訓練場を出た。




 辺りは暗くなり、人も少ないなか、パクスは今日泊まる宿へと向かった。




 (あ~疲れたな~、休まなきゃ。明日は何をしようか…?明後日だもんな二次試験)




 パクスは明後日にある二次試験を前に明日何をしようかと悩んでいた。




 すると…




 (ん!?)




 突然、不思議な違和感がした。




「いや、何だ?」




 パクスはその場に止まり、目を瞑り意識を耳に集中させた。同時に【力】も発動させ、五感を鋭敏にさせる。




「誰かが叫んでいる…」




 耳に入ってきたのは誰かが叫び、助けを求めるような声だった。




「こっち…あっちか」




 パクスは声がした方向に向けて走り出した。




 ………




「離して!」




「ああ!?俺らに手を出しておいて、ふざけやがって!」




 (…確かここら辺のはず…あ、いた)




 パクスが到着し目にしたのは、三人の男が一人の薄汚れた布を纒ってフードを被った人を囲んでいる場面だった。




 (何だ?どういう状況?)




 パクスが現状を理解しようと立ち止まり考えていると…




「ーッ!?」




 フードを被った人と目があった。




「ー!?君…」




 パクスは目があった人がどこかで見たことがあったように思えたがすぐにわかった。




 騎士団入団試験を受けるために受付の会場に行く際、路地裏で倒れていた女性であった。




 (…元気だった…訳ではないな)




 女性は前見たときと変わらず、痩せこけ、覇気がない顔をしていた。




「何だ、お前!?」




 すると、女性を囲んでいた、一人の男がパクスに気づいた。




「ああ、どうも」




「どうも、じゃねぇ!いったい何のようだ!?」




 男はパクスを邪魔者のように扱うような声で言った。




「ええと…悲鳴が聞こえたので来ました」




 パクスは正直にここに来た経緯を話した。




「それであの、男が一人の女性に対して群がるのは普通に考えてあり得ないかと…」




「黙れ!お前は関係ないだろ!」




 一人の男がパクスに怒鳴り返した。




「それとも、お前、こいつの知り合いか?」




 すると、男は突然言い出した。




「なぁ、お前あいつのこと知ってるのか!?」




 男は女性に対して、ねめつけながら言った。




「ーーッ!?」




 女性は恐怖の表情のまま首を振った。




「へっ、だとよこいつは知らないみたいだ。関係ない奴は…消えろ」




 男はそう言った直後、殺気を放った。




 (…こいつ、脅すなら本気で殺意を籠めろよ)




 だが、パクスは男が放った殺気に対して感想を心の中で呟いた。




「おい」




 先ほど殺気を放った男が残りの二人に合図し、三人の男は女性を連れていこうとした。




「………」




 パクスはその光景をただ見ているだけだった。




 (助けるか…いや、でも)




 パクスは助けるかどうか迷ったが助けて欲しくないのに助けられて嬉しいのか、その後は…




 その事を考え、パクスは動けずにいた。




「ーーッ!!」




 ふと、女性がこちらを向き、その表情には…




「…ちっ、おい!」




 助けを求める感情が籠っていた。




「ーーッ!」




 それに気づいたパクスは




「ーッ!?何だよ?」




 自然に身体が動き、男たちの前に立っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る