第17話 決着

「終わりにしよう」




 それはエストによる終結の宣言だった。




「悲しいな…」




 パクスは話しあいは無用だとエストの言葉から感じ取った。




「なら、最後に立っていたどちらかが勝者、つまり、勝った方が自分の思想を貫き続ける、ということか?」




「ああ、決着をつけよう」




 その言葉を最後に二人は…パクスは剣を鞘に収め、右手を空へと上げた。エストは杖を構え、パクスに向けて突きつけた。




「ふ~、ーッ!」




 パクスは【力】を発動させる。イメージとしてはでっかい球、地面に叩き落とせば、辺り一帯は吹き飛びクレーターとなるだろう。




 エストは詠唱した。




「樹木魔法 ガイア·フェン·ソーン」




 辺りをうごめいていた樹木が一挙に集中、樹木の巨人が現れた。




「…エスト、お前があんな思想を持っていなく心優しい奴だったら、友達になりたかった…」




「何を…!?」




 その言葉は嘘偽りないパクスの本心だった。




「「くたばれー!」」




 二人はそれぞれ、パクスは凝縮させた【力】をエストに向けて、叩き落とし、エストは樹木の巨人を操り、巨大な右ストレート、辺りの根をパクス目掛けて解き放った。




「ーッ!?」




 根が圧縮された球にぶつかるが、貫くことができず先端から朽ち果てた。




「ーッ、やれー!」




 エストが言った言葉に反応し、樹木の巨人が渾身の右ストレートをぶつけた。




「無駄だ。どんなことをしても圧倒的な質量にはかなわない。俺の【力】は俺のエネルギーが原動力、いわば巨大な質量だ」




 パクスが言った言葉にただただ抗うことしかできず、




「あああああー!」




 樹木の巨人が朽ち果て、巨大な質量を持った【力】がエストを飲み込み…




 爆ぜた。




 ………




「ほう、もうそろそろ試験終わりのくせして新人が暴れまわっておるな!」




 デカイ爆発音のした方角を見つめて、試験監督のベックは呟いた。




 ………




 巨大な質量を持った【力】が地面に落ち、辺り一帯は吹き飛び大きいクレーターができていた。




 その中心に満身創痍のエストが倒れていた。




 パクスひ地面に降りエストのもとへとむかった。




「エスト…」




 近くに寄ったことでエストの状態が分かり、長くないことを感じた。




「……うっ、………」




 かすかな呻き声が流れ、エストは死んだ。




「くっ…」




 エストが死んだ。殺した。俺が殺した。自分の意志で、明確な殺意をこめ、殺した。




「やっぱり、魔物でも人でも命を奪うのは慣れないな…」




 ヴィドと女の二人を殺したときは、動けなくして放置した。いわば、間接的にだ。




 だが、今回は自分の【力】を使い、殺した。直接的に。




「ふぅ、先を急ごう」




 パクスは深呼吸し、ゴールに向けて急いだ。




 向かう前に、エストの死体を供養しようかと思ったがそんな時間がないことから、手を合わせ祈るようにした。




 ………




「ふむ、まあまあか…」




 ゴールである森林から抜け出した受験者、20人くらいを見回し、試験監督、ベックは言った。




「おい、残り時間は?」




 ベックが側近の魔法使いに時間を尋ね、




「残り一刻です」




 そう答えた。




 ちなみに、火、水、風、土の刻に別れているが、一時間単位はそれぞれ一刻、二刻といい、分単位は一分、二分という。




「そろそろか…」




 ………




 ベックが側近のほうを向き、




 側近のほうは頷き、その合図により時間が経過したことが伝わり…




「よし!お前ら!」




 その時…!




「な、何だ!」




 突如、大きな音をたて、何かがゴールである場所に到着した。




「はぁはぁ、ついた。間に合っているよな…?」




 パクスが試験時間ギリギリに到着した。




「お前…」




 ベックは突如現れたパクスを睨んだ。




「…ほう」




 だが、ベックは怒鳴ったりすることなく




「現時刻を持って騎士団入団試験、第一次試験を終了しここにいるお前ら全員合格とする!」




 ベックはここにいる約20人を合格とした。




「「よっしゃー」」




 周りの受験者が浮かれるなか、パクスは…




 (え!?合格?やっ、た、よっしゃー!)




 心の中で歓声を上げ、




「よっしゃー!!」




 実際、声も出して喜んだ。

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