第15話 パクスvsエスト

「死ね、風魔法 ウインドカッター」




 エストは杖を突き付け、風魔法を放った。




「ーッは!」




 それに対し、パクスは【力】を剣に纏いエストが放った魔法を叩き切った。




「土魔法 連弾ストーンキャノン」




 エストが唱えた直後、無数の石の塊が現れ、パクスに向かって、飛んできた。




「ーー」




 パクスは焦ることなく右手を前に突きだし【力】を発動させ、バリア(障壁)を張った。




 それにより、数多のストーンキャノンは弾かれ粉々になった。




「ほぅ、やるな。雑魚の奴らはこの程度で死ぬからな…やはり殺すのがおしい」




 エストはパクスの動きに感心したようだ。




「何を言われてもお前のことを生かしておくわけにはいかない」




 パクスは冷徹に返した。




「ふっ、そうか、悪かった。……残り時間ももうない、今日中に目的地につかなければ失格だ」




「………ああ、そう言えばそうだったな」




 時間にしては短いが一瞬の出来事により、今が試験の真っ只中だということを忘れていた。




「時間が惜しいんでな。ここからは本気でいく。苦しみたくないなら、早めに死ね」




 エストからの死の宣告だった。




「いや、死ぬのはお前の方だ!」




 パクスは言い返した。




「土魔法 アースフォール」




 エストが唱えた直後、パクスとエストの両脇の地面が隆起し、崖ができた。




「火魔法 フレイムバースト」




 エストが唱えた直後、炎が広範囲に燃え広がった。




 否、広範囲ではなく、直前にしていた土魔法により炎が、パクスの方向、一方向だけに燃え広がった。




「これで…何だよ、さすがだな」




 パクスは【力】を自分の周りに発動、全方向からでも対処出来るよう、球状に自分を包んでいた。




「これがお前の全力か?だとしたらお前、雑魚だよ?」




「言ってくれるな…」




 パクスはエストのことを挑発して、本気を出させるよう促した。




「パクス、お前に聞きたいことがある」




 挑発したことで逆上して襲いかかって来るかと思ったが、そんなことはなかった。




「お前、強さで言うとどのくらいだ?」




「ー?」




 エストの言っている意味が分からずパクスは黙って先を促した。




「ちなみに俺は上級の魔物を倒したことがある。聖級の魔物にも引けをとらない」




 エストが言ったのは上級、聖級だの何とかについて…




「ああ、その事か」




 どうやらパクスはどんな意味かわかったらしい。




 (爺さんが言ってたな…)




 パクスは老人に教えてもらっていたことを思い出した。




 ………




「え!?魔物や魔法に階級がある!?」




 老人と一緒に向かい合わせになり食事をしているとき、老人が話したことにパクスは身をのりだし驚いた。




「ふぉ、そうじゃ。それぞれ下から順に初級、中級、上級、聖級、国宝級、神級がある」




「へぇ~」




 パクスはそれぞれどのような強さなのかについて聞いた。




 ちなみに魔法についての階級はあまり意味がなく、威力や精度によって階級付けされ、気にしないみたいだ。




 だからほぼ魔物についての知識らしい。




 まとめるとこんな感じだ。




 初級···魔物のなかでも最弱、駆け出しの冒険者でも倒せる




 中級···パーティーを組んだら倒せる。一人だと上級の冒険者で勝てるぐらい




 上級···上級冒険者でもパーティーを組んで倒す




 聖級···村などの小規模の町を単独で損壊させられる




 国宝級···国を単独で損壊させられる




 神級···人類存亡の危機




「ちなみに爺さんの階級はどれくらいなんだ?」




 パクスは好奇心からそんなことを聞いた。




「ふぉ、儂か?儂は昔、国宝級と戦ったことがある」




「え!?国宝級!?すげぇ!」




 驚くべきことに老人はかなりの強者だった。




「昔の話じゃ。それに大人数でやったからのぉ。運が良かったのじゃよ」




「それでもすげえよ!…なぁ爺さん、ちなみに俺はと言うとどのくらい何だ?」




 パクスは自分がどのくらいの位置にいるのか気になり老人に聞いた。




「ふむ、儂の独断じゃが、パクス、お主は…」




 ………




「俺は…」




 パクスはエストを瞳に写しながら口を開いた。




 (俺から見るに精々上級くらいだな…)




 エストはパクスを卑下しながら思った。




「俺は、聖級の魔物を倒したことがある」




「!?何だと!?」




 その一言は、エストが思いもしない言葉だった。




「それに…」




 だが、エストが驚いてもパクスは続けて言う。




「それに、俺はまだまだ強くなる!」

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