第14話 勃発

 エストが言った恐ろしい言葉の意味を、パクスは頭の中で熟考した。




「どういう意味だ?」




 エストの言葉の意味を知るべく、本人に聞いた。




「騎士団とは国を守り抜く役職だ。お前が言った便利屋というのもあながち間違いではない。そして騎士団の仲間として求められるものは何か、わかるか?」




「"力"、か?」




「そうだ」




 騎士団は国の便利屋であり、国を守る役職でもある。そのため、求められるのは、圧倒的な力だと思った。




「だが、受験者の多くは雑魚ばっかり、お前を狙った二人もそうだ」




「!? 気づいていたのか」




「当たり前だ」




 エストはパクスのことを狙った、ヴィドと女について知っていたようで、パクスは驚いた。




「そんな雑魚ばかりが騎士団に入れたとしたら、いざというとき国を守りきることができなくなる。この試験では、自分の力量を測らせる絶好の機会を与えている」




「なら、無理に殺す必要はないだろ」




 確かに、力量を分からせるためなら、別に殺す必要はないと思えた。




「いや、殺す必要がある。なぜなら、世の中にそんな間抜けは要らないからだよ」




 エストが冷徹にそう言った。




「パクス、お前は自分を狙った二人をどうした?」




 エストは質問の意図を変えそんなことを聞いてきた。




「…さあな、身動きを取れなくして放置してきた。だが、あの様子じゃ魔物が来ても対処出来ないだろう。」




「つまり…」




「つまり…俺が二人を殺した」




 パクスは、そう殺したと認めた。




「ふむ、殺した理由は何だ?」




 エストは二人の死について聞くのではなく、パクスが殺した理由について聞いた。




「二人が俺の敵だったからだ。」




 パクスは簡潔にまとめそう言った。




「ふっ、分かる、分かるぞ!その気持ち、自分の敵は誰であろうと殺すよな!」




「別に俺は誰でもってわけじゃ…」




「でも、お前はあの二人を殺した…」




「ーッ!?」




 エストはパクスを挑発するように言った。




「何が言いたい?」




 エストの心理を聞くべく、パクスは聞いた。




「お前は俺と同類だということだ。邪魔者は排除するということだ」




「違う!俺はお前と同じじゃない!」




 パクスはエストと同類だと言われ…拒絶した。




「何が違う?雑魚も敵も全て邪魔者、排除するだけだろ?」




 エストはパクスが理解出来ないことを淡々と述べた。




「つまりお前は自分にとって邪魔者であれば誰であろうと排除すると?」




「ああ、そうだ」




「大切な人でも!?」




「必要とあらば…誰であろうと」




 その言葉を聞いた瞬間、パクスは強烈な殺気を放った。




「ー!!その様子、お前は俺の敵になるのか?」




「お前さん、道を踏み外してんぞ!」




 パクスは、エストに向かって強い口調でいった。




「俺はただ自分の道を突き進むだけだ」




「お前さん、ムカつくな…」




 エストの言った言葉がパクスの感に障り、パクスは声のトーンを下げて言った。




「ふぅ、パクス、お前のことは正直悪くないと思っていた。他の奴らとは違う、お前を殺したくない。殺すのがおしい」




「…やっぱり、不愉快だ。悪いが俺とお前は意見が会わないな…」




 パクスは前の世界の名残が残っており、敵でなければむやみに殺そうとは思えず、エストとは打ち解けることが出来なかった。




「そうか…なら、お前は俺の敵になるのか?」




「いや、違う。"お前"が"俺"の敵になったんだ」




 パクスはエストを敵として認識した。




「そうか…残念だ…死んでもらう!」




 エストの方もパクスのことを敵と認識した。




「ここで死ぬのはお前の方だ!これ以上、誰も殺させない!俺が守る!」




 そう言いながら…




 パクスは剣を抜き、エストは杖を構え、両者は殺気をぶつけ合い…




 二人による、殺しあいである"死闘"が勃発したのだった。

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