第13話 過激

 (…誰だ?)




 突如現れた男のことに注意を向け、パクスは体を硬直させていた。




「おい、お前、何者だ?」




 先に口を開き声を出したのは男の方だった。




「俺は…パクスだ。あなたは?」




 名を名乗るか、考えたが、敵対しないため素直に応えることにした。




「俺は"エスト"」




 すると男…エストはそう名乗った。




「登場するには派手すぎじゃないか?自然は大切にしないと」




 エストは目的地であるゴールに向けて一直線に進むため、進行方向にある木々を次々と斬り倒していた。




「邪魔だったからな、仕方ないことだ」




 (風魔法かな…?)




 木々を斬り倒していたことから風魔法だと推測できた。




「それで、お前は何者だ?」




 エストは最初にした質問と同じことを聞いた。




「何者って、さっき名乗ったろ?」




「俺が聞いた質問の答えになっていない。俺は"何者だ"と聞いたんだ。名前は聞いていない」




 質問の答えになっていないと言われ、パクスはなんて答えるべきか分からず、押し黙った。




「何故答えられない!!簡単な答えだ!俺にとって他人は"敵"か"味方"ただその二択だけ!お前はどっちだ?」




 エストは急に声を荒げ聞いた。




「あのさ、簡単って言うけど、どう受け取るかは問われた本人が決めるのであって、決してお前さんの価値観に合わせると言う…」




「どっちだ?」




 パクスの言葉に耳を傾けず、答えを急かした。




「まぁ、俺は別に敵対するつもりはないから…敵ではない」




「そうか…」




 敵ではないと聞き、エストは興味の無さそうに目を逸らした。




「まあいい、お前も先を急ぐんだろ?敵じゃないなら、協力ということにして進まないか?」




 エストは協力を申し込んできた。




 (協力か…こいつはできれば敵に回したくないな…)




「わかった、ゴールまで協力ということで」




 パクスはその申し出を引き受けたのだった。




 ………




 パクスとエストは二人で協力し、ゴールに向けて進んでいた。




 途中、魔物が現れたては、二人で討伐していた。




「ここの魔物くらいどうってことはない。はっきり言って、雑魚だな」




「ふ~ん、そうか」




 エストが言った言葉に興味無さそうにパクスは頷くだけだった。




「パクス、お前は時に、この試験お前はどう思う?」




 エストが進む足を止め、突然質問してきた。




「どうって?」




「この試験、どのような目的、何の意味があると、お前は思う?」




 エストが聞いたのは試験の意味であった。




「どうも試験なんだから、合否を決めるため…」




「そんなことを聞いているんじゃない!俺が聞きたいのはこの目的の真の意味だ!」




「真の…意味…」




 エストが聞いたのは、この試験に秘められた真の意味だった。




「どんな行いにも必ず意味がある。その意味を理解出来なきゃ、生きていくことは出来ない」




「………」




 エストの主張に対しパクスは、ただ黙って聞くしかなかった。




「もう一度聞こう。パクス、お前はこの試験、どう思う?」




 エストの質問に対し、どのように答えるのが正解か分からず、パクスが言えるのは自分の考えていることだけだった。




「…俺が思うに、二次試験は何か知らないが、この一次試験は単純に役目を果たせるかどうかを試されていると思う」




 パクスはエストに向かって自分の意見を言った。




「ほぅ…」




「俺の師匠が騎士団は国の便利屋だと言った。つまり、頼まれごとをこなせるかどうか…時間を守り、指定された場所にいき、荷物を届ける。それらをちゃんとこなせるかどうかをこの試験で試していると思う」




 パクスがこの試験の意味、つまり騎士団の仲間、国の便利屋として問われていることを淡々と述べた。




「ふむ、まぁ悪くない答えだ」




 エストはパクスの主張に対し、随分上から目線の返答をした。




「だが、違う!」




 エストはパクスに向かって、きっぱり違うと言った。




「何が違うんだ?」




 パクスは自分の意見をそのまま述べたので何が違うのか分からなかった。




「この試験の真の意味、それは…」




「それは…」




「邪魔者の抹殺だ!」




「は!?」




 エストが言った、恐ろしい一言にパクスは理解出来なかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る