第11話 悪事

 ………




「ほら、急げ」




 パクスとヴィドは目的地に向かって、森の中を歩いていた。




 ヴィドは歩くのが遅く、ちょくちょく休んでいた。




「待てよ」




 …ても、なんか変な違和感がしていた。




「おい、期間は残り2日なんだが、このペースじゃ間に合わない。もう少し急ぐぞ」




 期間は残り2日だが、今のペースじゃ間に合わないことから、急ぐとヴィドに言った。




「くっ待てよ!」




 (もう少しか…?今どこなんだよ!)




 (やっぱり何か変だ)




 ヴィドの行動からわざと遅くしていると感じたパクスは、




「なぁ、お前さん、わざと遅く歩いているだろ」




 単刀直入に聞いた。




「な、何を言っている!?僕が、わざと?」




 何か隠しているような、分かりやすい動揺が走った。




「いや、何か遅いわりに全然急がないし、"誰か"待っているのか?」




「ーッ!!」




 ヴィドが驚愕の表情をした。




 …その直後、




「なっ!?」




 パクスに向けて林の奥から岩の柱のようなものが飛んできた。




「くそッ、しまった!!」




 いきなりの奇襲に咄嗟に【力】を発動させ身を守ることが、できたが徽章を落としてしまった。




「ちっ、何だよ!?」




 岩によって広い場所に押し出された後、岩の形状が変化しパクスを拘束した。




 (これは、土魔法か?)




 すると、林の奥から赤毛の髪をツインテールにまとめた女がてできた。




「油断したわね」




 林の奥からでてきた女はパクスを一目見た後、ヴィドの方を向き、




「よくやったわね。えらいわ」




 ヴィドを褒めた。




「ああ、これでいいだろう」




「…はっ、何だよお前さんらグルかよ!」




 二人の関係を見たところ手を組んでいると感じた。




「ええ、そうよ。あなたを排除するためにね」




「でも、何で俺なんだ?俺よりヤバい奴なんて他にいるだろう」




 試験会場にはパクスのほかに強者がたくさんいた。その中で、自分を狙ったことが分からなかった。




「私は魔力感知が使えてね。あなただけ、魔力が感知出来なかったのよ。そこから怪しいと思ってね」




「速いうちに俺を排除しようと?」




「ええ」




 他にも魔力感知が使える奴がいると思うと、油断できないとパクスは感じた。




「でも何でヴィド、だっけか?そんな奴と手を組んでいるんだ?」




 女一人でも十分なことから、ヴィドと手を組む理由が分からずパクスは聞いた。




「試験開始直後に、殺しあいが始まり、この男を助けたことを条件に私の言いなりになってもらったのよ」




 殺しあいにより、暗躍するものがいるみたいだった。




「おい、ヴィド、お前さんはそのままでいいのか?言いなりのままで」




 ヴィドにこのままでいいのかと聞いたところ、




「僕は、合格するためなら何だってする」




 説得できないようなことを言われ、パクスは押し黙った。




「さて、さっさと終わらせてしまいましょう」




「何をするつもりだ」




 女の発言から何をするのか聞いたところ、




「そうね、あなたをこのまま殺すということもできるけど、特別にこれだけで見逃してあげるわ」




 そう言って、女はパクスが落とした徽章を拾った。




「まさか、それを壊すとかしないよな?」




「御明察、壊さしてもらうわ!」




 女が力強く言った。




「おい、やめろ!そんなことしたら、合格できなくなる」




 合格できなくなることを防ぐべく、パクスは止めるよう女に言った。




 だが、




「ばかね、それが目的なんだから…殺さないでいてあげるだけでもありがたく思いなさい」




 女は徽章を地面に落とし、




「やめろー!!」




 女は容赦なく踏み砕いた。










 すると…




「うっ、な、によ、これ?」




「うっ」




 突如、壊した徽章から異様なオーラらしきものが溢れ、女とヴィドはもだえ苦しんだ。




「いっ、たい、何、が!?まさか、あな、た、これ、徽章じゃ、ない、わね?」




 女は苦しみながら、そう言った。




「ふっ、その通り、お前さんが砕いたそれは"魔石"だ」




 パクスは異様な笑みを浮かべそう言った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る