第3話 老人との出会い

 数分の間さっき起きたことを痛みを忘れ、回想していた。




「さっきのって、俺の手?からでたよな…」




 自分の手のひらからでてきた謎の光のようなものの正体が分からず自分の手のひらと獣の死体を交互に見ていた。




 そうしていたところ…また草木が揺れる音がした。




 (な、何だ?まさかあいつの、仲間か?)




 獣の仲間が来たと思いすぐにこの場所から離れようと動くが、獣にやられた傷から血が流れ、同時に痛みが全身を走り、立ち上がることができなかった。




「くそ、痛ぇ…でも、逃げなきゃ次こそ殺される!」




 獣の仲間が来たら、殺されてしまうと思い、焦る気持ちでいっぱいだった。




 逃げることができず恐怖に怯えているなか、茂みの中から現れたのは…1人の老人だった。




 (誰だ?)




 老人が自分にとって何者なのか分からず黙っていると、




 「ふむ、その傷ウルムンガルドにやられたのぉ」




「は?」




 (何だって?ウルムン?)




 老人が何か言ったと思ったら何について言っているのか分からなかった。




「そこに倒れている魔物じゃよ」




「魔物……ああ、そうです」




「ここから、少し離れたところにわしの家がある。傷の手当てをしてあげよう」




 茂みから現れたのは、特徴的な白い髭を生やし、長い髪の毛を頭の上で縛っている、体格は特に大きいわけではなく平均的な体つきで少し猫背気味な、山賊のような服を着た老人だった。




 老人が言うには、さっき襲ってきた獣は魔物、ウルムンガルドと言うらしい。




 ……




「よし、これでいい」




 老人に案内され着いたのは森の中に佇んでいる、一軒家だった。




 寝床に横になり老人に魔物にやられた傷を手当てしてもらっていた。




「ありがとう。爺さん」




「ふぉふぉふぉ、なんのこれしきのこと礼をいわれる筋はない」




「それより爺さん、俺がいうのも何だが爺さんもこの森に住んでいるの危なくないのか?」




 この森には、さっきのような魔物が住んでいる。ましては、さらに凶悪な魔物が住んでいる可能性もある。




 老人は刃物や銃といった武器を持っていなく、手ぶらのことから、危険なことが誰しも思うだろう。




 だが、老人からの返答は意外なものだった。




「ふむ、例えこの老人でも自分の身を守れる最低限度の魔法が使える。それに剣もあるしのぉ。心配には及ばんよ」




「え?」




 (ちょっと待てよ、今なんていったま、ほう?)




「この世界には、魔法があるのか?」




「ふぉ?魔法について知らないのか?」




「まぁ?お、俺の故郷は随分田舎で…な?」




「ふむ、それは仕方ないのぉ。まぁ、このわしでもあれくらいの魔物なら追い払うことくらい可能じゃ」




 (すげぇ!魔法すげぇ!)




 どうやら、初歩的な魔法でも、さっきのような魔物を倒すことができるらしい。




 魔法があることに感動し、興奮していると、




「ま、まぁ、そんなことよりもお主これからどうするのかのぉ?」




「え?ああ、そうかどうしよう」




 突如、異世界にきてから生活の基盤も何も築けていない状態で、当然いく宛もないなか悩んでいると、




「いく宛がないならここに住むのはどうじゃ?」




 老人が言った。




「え?」




 それは予想しない提案だった。




 だが、いく宛がないなかそれは悪くないと思えた。




「いいのか?」




「もちろんじゃ」




 提案を受け入れ老人と一緒に住むことになった。




「そういや、お主、名はなんという?」




「ああ、そういえばそうだな。まだ名乗ってなかったな」




 老人と出会ってから名前などまだ言っていないことに気づいた。




 (名前、名前か…■■■。いや、やめよう。せっかく異世界に来たんだ。なら今日から、俺は…)




 もとの世界の名前ではなく異世界で生きていくため、この世界では…




「"パクス" 俺はパクスだ」




 そう少年…パクスは名乗った。




「ふむ、パクスかいい名前じゃのぉ。儂のことは、自由に読んでくれて構わんよ」

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