第5話 燃え尽きた夏

夏休みも半分ほど過ぎました。

しかし、当たり前のように宿題の大部分は終わっていません。さてとと宿題をランドセルから引っ張り出し始めたところで、算数と国語のドリルがないことに気付きましたし。

やる気は全くなくなってしまいました。

暑すぎて、やる気という炎は風に吹かれた蝋燭の炎ように燃え尽きてしまいました。

自由研究なんてものは時間がかかるのでやるはずもありません。毎年、児童画コンクールでごまかしています。とはいえ、入賞なんてするはずもなく、私の画力はウサギすら満足に書けないほど(前も言ったような気がしますが)ですから、絵に込めた物語で勝負したいところですが、どうやら読み取ってくれないようですから。

今年は、少女が天空にかけられたブランコに乗って空を見下ろすという絵を描いています。どのようにしてそんな空に辿り着いたのか、またなぜ空に白い鯨がいるのか、なんてことをいろいろと考えて欲しいのですが、なんにせよ立体感がないので1年生と絵を並べても見劣りするでしょう。

そんなわけで絵を片付けて、次はリコーダーの練習です。

なんと、私の隣の家には同じ学校の同学年の少年が住んでいるのですが、変にプライドの高い私はどへたな演奏など聴いて欲しくありません。そのため、和室の襖を閉め切って(サーキュレーターは最大風量にしてあります)練習をするのですが、コロナの影響でテレワークが常となった父にも演奏を聴いて欲しくはありません。だから、最初は大きな音も出せずに「ひぃょろひょーろぴー」なんて情けない音を出しているのですが、一度大きく「ぴーーー」なんて音が出るともう慣れてしまって練習を始めます。

さて、そんな風に何ともやる気のない馬鹿っぽい小学五年生の夏休みは終わりに近づいていくのです。

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