第3話 花火は恋、傍観は常…

花火大会が明後日にあります。

正直、私の住む市の花火は大した規模ではないので、楽しみにするようなものではないのですが。

「彼氏と花火に行きたいんだけどさ、どうやって誘えばいいと思う~!?」

すごい剣幕で相談しに来たのは、低学年の頃から仲良くしているクラスメイトです。話の中から分かると思いますが、彼氏がいます。

学年でもちょっとした噂になっているカップルで、よく一緒に帰っているところを見かけます。彼氏も彼女もいない私には遙か遠くの話だと思っていたのですが。

なぜか、私に相談に来るのです。

ここ最近になって、少女たちが急に色気づき、気になっている人の話や片思いだよね、なんて語ってくる人が出てきました。私が、なぜこんなに相談を受けるのでしょうか。それまであまり話すことのなかった人も、「好きな人がいて…」なんて近づいて来ますし。

聞いてみると、皆「え、だって聞いてくれそうだから。」と。

「色事には無縁の私にそんなこと聞かれても…まあ、ストレートにチラシ見せて一緒に行かない?でいいと思うけど。」

ネットで見かけた少女漫画を参考にそう案を出すと、相談してきた彼女はにんまりと笑いました。確かに可愛いのです、この子は。

「やっぱそーだよねっ!シンプルが一番だよねぇ!うわっ天才!まじありがとっ!」

そう叫んで、鼻歌交じりでスキップしていきました。

私などいなくても一人でその答えに辿り着いていたようなので、私に相談した意味とは?と疑問を持ちましたが、最終確認のために私を頼ったという答えに辿り着きました。

頼られるのは嫌いではないですから、嬉しいのは嬉しいのですが、最終確認なんて重要なところをなぜ私に?とまたもやもやします。嫉妬するわけではありませんが、小学生の頃から付き合って結婚なんて話はあまり聞かないもので、別れの曲が流れるのはいつかな、なんて思ってしまいます。結婚が彼らのゴールなのかは確かではないですが。

話を戻すと、実は私も花火を見に海岸まで行くつもりです。それを話したら、彼氏を連れて行こうと思い立ったそうで、最初に至ります。

ちなみに、いつも教室で話している二人はどちらも図書委員でいません。こういうときは大抵、ボンヤリするか他の人と話すか教室の会話に耳を傾けています。気に入った話題があれば、その中に飛び入り参加したりもします。しかしまあ、性別の壁というものはありますが。

ジェンダーレスだ等とうるさい二十一世紀でも、子供ですらジェンダーがあるのですから、まだまだ先は長いなと思うほかありません。

ついでに一つ。

ある少女から、クラスで気になっている男子のについて相談を受けたときのことです。塾が同じなので、喋りながら帰っています。

学年でもイケメンランキングで上位にランクインしてくる人その男子が好きだ、というものです。夢見がちな子でしたから、少女漫画に憧れてイケメンと端っこ女子が意外にも恋に、なんて考えていたかもしれませんが。

相談を受けて少しして。私は例の彼と同じ掃除の班なのですが、特別教室の掃除当番になりました。男四人に女一人という班なので、当たり前のように掃除はろくにしません。

相談を受けていたこともあり、彼等のことはよく監視していました。すると、いきなり聞きたかった事が話題になりました。

「なんかさ、あいつ面倒くさくない?近寄ってきてうざいんだよね。」

「あ、みはるのこと?」

「そうそう。」

みはるというのは、ずばり相談してきた彼女のことです。

「お前さあ、いろいろ女子に狙われてるよな。」

「面倒くさいんだよー、別に好きじゃないし、うざいし、気持ち悪い。」

おお、面の良いやつは裏でこんなこと言ってたのか、怖い怖いと思い、時間になったので私は掃除を終えました。依頼者には上手くフォローするだけで濁しましたが、それ以来私はこう思うようになりました。

恋も花火も、遠くから見ていれば美しいけれど、近寄れば火花散る危ないものだ、と。

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