第2話 雨上がり、先生と私(達)の小話
梅雨が明けました。
先生の衝撃の告白から、一週間ほど経っていました。
先生は、少しずつ元気を取り戻してきたように見えます。不自然だった笑顔も、いつもの楽しそうな笑顔に戻りました。時々寂しそうにしていることはありますが、私のクラスには面白い人が多いもので、すぐに笑顔になってくれます。
梅雨が明けてからまたしばらくして、先生はまた一日学校を休みました。今度はかぁっと晴れた日です。お葬式だな、というのはあまり賢くない私にも分かりました。
しかし、予想に反して次の日学校に来た先生の顔は晴れやかでした。
踏ん切りが付いたというのでしょうか。
まあ、良いことだと思いました。先生が笑ってくれるのは、悪いことではありません。数年の学校生活を経て、先生の機嫌が悪いときに学期末が来て成績付けが始まると、予想より遙かに成績が悪いことがあるというのが分かっていましたから。
明くる日の20分休み、私はいつもの友達と語らっていました。他愛ない話であることは覚えていますが、内容までは覚えていません。
私の友人達は皆賢いので、つまらないなと思うことは全くありません。私も友人達も少々気が強くて荒っぽいところはありますが、喧嘩などしたこともありません。
すると、珍しく教室で仕事していた先生が私達の方へ歩いてきました。私達は休み時間、特に派手な遊びはせず教室にこもる事が多いです。(それは先生も分かっているでしょうけど)『来ている』と気付いたときは、私達のところに何か用があるのかと身構えましたが、特に用はなく教室を歩いて回っているだけだという結論に至り、会話を再開しました。
私含め集まっている数人皆、この先生が大好きというわけではありませんでしたし。嫌いというわけでもありませんが、外ではしゃぐ方が似合っていると聞いて心が自然と離れたのでしょう。
なにせ、体力テストでは運動不足と言われ、成績表で毎年『教室で静かに過ごすことが多く…』という一言を見かける人の集まりですから。
とにかく、やはり私達に用があると気付いたときにはしっかりと先生の方を向いてお出迎えの体制を取りました。
想像してもらえるなら、是非「司令官!よくぞ我等が小隊を見学にいらっしゃいました!」という言葉を参考にしてください。
「何やってるの?」
ぱっと明るい(私達は向日葵のようだと言っています)笑顔で先生が話しかけてきました。
こんな時の答えはとっくに決まっています。
「特に何も。」声をそろえて答えました。
「つまんないね…」
私達はまたもそろえてため息をつきました。私達としては、つまらないなんてことはないのですが、周りは皆「つまらなくないの?」と聞いてくるのです。そして、その筆頭がこの人。
「何を話してたの?」
諦めて、次の問に移りました。
答えたのは、いつも一緒に帰る友人です。毒舌が名物な賢い人ですが、運動は全くだめです。運動が苦手な私よりも。
「国内情勢についてです。そろそろ総裁選があるんで。」
すると、先生は苦い顔をして去って行きました。「おっとなー、」と吐き捨てたのは見逃しませんでしたよ、先生。
いつものことだと肩をすくめて、また話に戻ろうとすると、もう一度先生が話しかけてきました。
「私の母が亡くなったってハナシ、貴方達ならちゃんと分かってそうだと思ったけど、どうなの?」
今度は、私が答えました。
ピースサインで。
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