11月30日

放課後、学校の近くの八百屋でいちごを買い、ここ一ヶ月毎日通っている病院へ向かった。その病院は、みちかの家に近く、お見舞いに行くと、みちかの家族がよくいた。

 今日もみちかのお見舞いで、病院に着き彼女の部屋に行くと、みちかがベッドで寝っ転がっていた。

「みちか元気かー」

「おかげさまで。ってそれ、いちご?」

「退院祝い」

「わぁー! 嬉しい! ありがとー」

 まぁ、退院するのは、正確には明日なんだけど。

 みちかはあの崖を飛び降りたが、結局全身打撲で済んだらしい。にいさが言っていた、死ぬほどの高度ではないというのは本当の事のようで、改めてにいさはすごい奴だと認識した。

「はぁ、明日で退院かー。いやだな……」

 みちかは、上体を起こして天井をあおぎ、睨みつけていた。

「大丈夫、嫌な事があったらあの喫茶店で、愚痴聞いてあげる。みちかのボディーガードもしてあげるよ」

 みちかは僕を見て、ふっと笑った。ボディーガードもー? と言い、嘲笑している。

「でもありがとう、そうだね。私の側にはせいやがいる!」

 ベッドの近くにあるテーブルに、例のパズルが置いてあった。まだ、二ピース残っていた。

 僕とみちかは一つずつピースを取った。そして、同時に型にはめた。そのパズルは、ハートの形を表した。

「せいや、ちょっと私のとこに来て」

 にぃーと笑いながら、ひらひら手招きをしていた。僕は言われるままに近づいた。すぐ側まで近づいた所で、みちかは立ち上がり僕に抱きついた。

「せいや、大好き」

 彼女はそう小さく呟いた。

 僕もみちかの事、大好きだ。が、それを言葉にする代わりに、全力で彼女を抱きしめた。

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