10月11日

 みちかを殺そうとした女子は殺人未遂で、現着した警察官に逮捕された。それまで、僕とおじいさんで、暴れている女子をおさえつけていた。その女子の目にはギラギラと光る物があり、本物の狂気を感じた。

 おそらく、いや、十中八九その女子は退学になるだろう。

 だがみちかは、その女子が警察官に連れていかれた後も、怯えていた。

「みちか、大丈夫?」

「私は大丈夫。せいやは」

 声も震えており、彼女の真っ白な顔が真っ青に変色していた。

「せいや、ごめん」

「お前は謝る必要はない」

「いや、私が、私のせいで、せいやを危険な目に」

 みちかは、道端にうずくまり頭を抱えこんだ。僕は彼女の背中をさすったが、彼女がそんなんで元気になるはずはなかった。

 その後、僕たちは、残った警察官に事情聴取をされ、親が呼ばれてそのまま家に帰った。

 

 

 昨日がそんな感じでやばかったけど、みちか、大丈夫かな。

 そう思いながら、教室の扉を開けた。

 みちかの席を見たが、彼女はまだ来ていない様子だった。

 にいさとまさきが僕の元に寄ってきた。

「せいや、大丈夫?」

「噂で聞いたぞ。みゆの件、大変だったな」

 みゆ、あの腹黒女のことか。

「ねぇ、みちかはまだ来ていないの」

「まだだな。この時間に来てないっていう事は、今日は休みかもしれない。昨日の一番の被害者だし、仕方ない」

 まさきの言葉には一理ある。昨日のみちか、精神が不安定になっていたし、今日ぐらい休んでも不思議じゃない。

 ただ、一つ疑問に残っている事があった。何でみちかは僕に謝ったのだろう。みちかは別に悪い事など何一つしていない。それどころか、今回の事件ではみちかが殺されかけたというのに。

 もう、みちかについての疑問がつもりに積もっている。

 そろそろ、全てを聞く時かも知れない。



 ただ、次の日も、その次の日も、さらに次の日も、みちかは学校に来なかった。一週間、二週間経っても彼女が来る事はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る