文化祭でイチャイチャ編

第40話 文化祭で愛をこめて①/イチャイチャしながら今後の方針

 その後、一度トイレ休憩をはさみ、再びさっきのドッキング形態で座る。

 愛奏がこの座り方を気に入ったのだ。

 なんでも俺の良い匂いと、硬さと、安心感がハンパないらしい。


 実は俺も気に入った。

 だって愛奏の良い匂いと、柔らかさと、安心感がハンパないんだもの。


 お互いが気にっているので、せっかくだからこの合体形態に名前を付けようと、愛奏が言った。

 なるほど。やはり愛奏は理解わかっている。


 合体には名前を付けないとね!

 ということで、この座り方を「安心合体」と命名した。

 愛奏も手を叩いて賛同してくれた。


「で、再開するけど、問題はここからどうするかだな」


 俺は愛奏の話を思い返しながら言う。


「どういう事?」


「いやさ。さっきの話だけど、一周目に赤島とやったことは、今のところだいたい俺とやってるよね?」


「ああ、そうそう。それ。私も話してて思った。ひょっとして日記読んで知ってたの?」


「いや、俺は日記を読んでない。だから無自覚で過去を変えてるんだと思う」


 本当は、見えない何かに動かされているかもしれないけど。


「そっか、それは凄いね。レオンがやる役目だったことを、優真君がやってるんだ」


 確かに、そうとも言える。

 考えてみれば、俺は赤島と同じことをやってたんだな。


 本性を隠して、愛奏に近づき、彼女の信頼を勝ち得る。

 ちょっと自己嫌悪に陥った。


「どうしたの? 優真君?」


「いや、俺って赤島と変わらないなぁって」


 今思ったことを愛奏に言う。

 すると、愛奏が怒った。


「ちがうよ。優真君は私のために一生懸命なの。レオンは自分のために動いただけ。全然違う。もし、次にそんな事言ったら、噛みつくよ。ガブリンチョって」


「どこを!?」


 俺は困惑したけど、立ち直った。


「ありがとう。んで話し戻すけど、これから先も同じように、赤島とやったことを俺とすれば、過去が変わるんじゃないかな」


「なるほど。つまり、文化祭とか体育祭とかで色々するんだね!」


 ふんすっと鼻息荒く、愛奏が頷く。


「えっと、ちなみに聞くけど、どんなことしたの?」


 エロい事はなるべく避けたい。

 たぶん、愛奏のトラウマになってる可能性がある。


「えーっとね。ニシノ祭は一緒に色々と回ったかな。後夜祭も一緒に参加して、その時の帰りに家を教えたんだっけ。あと体育祭は、ほら覚えてる? ベストパートナー二人三脚」


 あー。あったな、そんなの。


「たしか同性でも異性でもペアOKの、リア充専用種目だっけ?」


 一周目はとんと縁がなく、幸治と一緒に血の涙を流したっけ。


「言い方にトゲあるね。とにかくそれに誘われてレオンと出たんだった」


 そういえば、そんな感じだったな。

 愛奏が別の男と出場してて、だいぶ嫉妬した覚えがある。


「あと、それぞれの種目に出て、最後に……そうだ! キスしたんだ」


 記憶の奥底をさらって、思い出したようだ。

 そうか、キスか。

 マジか。


「今にして思えば、あの時のキス上手かったなぁ。女慣れしてることをあそこで気づけば、また違ってたのかなぁ。でもファーストキスで舞い上がってたからなぁ」


 愛奏の目が死んでいく。

 いかん、トラウマが出たようだ。

 俺はぎゅーっと抱きしめて、耳元でささやく。


「はい、そこまで。今は俺の事だけ考えて(イケボ)」


「んぐぅ!」


 またビクビクと跳ねた。

 ちょっと面白い。


「ゆ、ゆうまくん。だきしめるだけでいいから、囁くの禁止ぃ」


 愛奏が顔を真っ赤にして言う。

 俺の彼女、可愛い。


「ごめん。じゃあ、ともかく当面は文化祭に注力するってことだね」


「うん。それでいいと思う」


 そういう結論になった。


「それで、風見さんはどうしよう?」


 彼女も狙われていると分かったのだ。

 放ってはおけない。


「うーん。たぶん大丈夫じゃないかな?」


「なんで?」


「今、雫玖って松葉君とケンカ中でしょ? 実は夏祭りの日に仲直りするはずだったの」


 おっとぉ。俺、また何かやっちゃいました?


「でも今回は優真君のおかげで、松葉君と仲直りする機会がなくなったから。まだケンカ中。しかも最近は私達と行動してるでしょ? 接点がほとんどないと思う」


「つまり、フラグが折れてるってことか」


 なるほど、たしかに大丈夫かもしれない。

 過去が変わっている以上、油断はできないが、それでも松葉から離れていればリスクは低くなるだろう。


「瑠姫も元々、狙われたのは私たちが餌食になった後だから。一周目と同じならだいぶ先だね」


 ふむ、ではやっぱり当面は愛奏と文化祭に向けて頑張ることが重要か。


「じゃあ、そういうことで。これからも何か思い出したら言ってよ。その都度、一緒に考えよう」


 俺は話を締めくくった。


「そうだね。ところで優真君は、どんな大人だったの?」


 愛奏が興味津々で訊いてくる。

 うん。気になるよなぁ。


「あんまり、面白い感じじゃあないけど」


「良いよ。私の真っ黒な未来よりマシでしょ?」


「そ、それを言われるとそうなんだけど。んー、じゃあ、高校卒業したあとの時から、話そうか」


 そう言って、それからしばらくは、俺の未来過去の話に花を咲かせるのだった。


 ■□■□


「とまぁ、そんな感じでタイムリープしてきたってわけ」


 俺は愛奏にこれまでの事を話し終えた。


「そっかぁ。優真君も苦労したんだねぇ。でも、私のことをずーっと想ってくれてたなんて。嬉しいな。ありがとう」


 彼女は俺にもたれ掛かって、より体を密着させてきた。

 俺も彼女をぎゅーっと抱きしめる。


「そう考えると、こうして過去で巡り合えたのはやっぱ運命に感じるなぁ」


 俺はしみじみと言う。


「そうだねぇ。きっと光珠神社でお願いしたことが良かったんだと思う」


「光珠神社? 愛奏、どんなことをお願いしたの?」


「ああ、うん。私、死ぬ前に光珠神社にお参りしたんだ。次の人生は幸せでありますようにって」


 彼女の口から重たい言葉が出る。

 光珠神社か。

 あの神社には本当に縁があるようだ。


「そういえば、この間みんなで神社行った時に、伝説の文助さんに会ったんだよ」


 俺はあの不思議な体験を愛奏に話した。

 すると彼女は驚いたような顔をした。


「そうなんだ。私はしらさんに会ったよ」


 なんと、彼女も不思議な体験をしていたとは。


「文助さんはなんて言ってたの?」


「えっと、たしか、未来を変えるなら諦めるなって励まされた。愛奏は?」


「私は、私のお願いは一人じゃ叶わないから、優真君に全て話せってアドバイスされたよ」


 ほほぅ。神様二人が励まして、アドバイスか。


「ということは、俺達って神様から応援されてるんだなぁ。なんだか勇気が湧いてくるな」


 神に推されてるなら、心強い。

 赤島、何するものぞってやつだ。


「だよねぇ。神様にこれだけしてもらったんだから、全力で幸せにならないとね」


 全くもってその通りだ。

 俺たちは改めて決意した。




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 文化祭編が長くなったので、ここからサブタイトル変更します。



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