第20話 葵さんの娘

 アプリコットさんの話では、ドバイに駐在している大使館勤めの公使と書記官、それに高校生くらいの美女がいる。

 どう見ても葵さん似の美女だ。

 葵さんの娘だとするとどう考えても計算が合わない。

 葵さんの年齢を聞いたことがあるけど、確かに見た目ほど若い訳ではないことは理解しているが、高校生の子供がいるとは思えない。

 だって……


 ローレン殿下がその少女を呼びつけ、紹介を始めた。

「俺の娘だ。

 認知もしていないから、法的には赤の他人になるけどな」

「永谷幸です」


 え??

 永谷って葵さんと一緒の苗字だ。

 俺がそんなことを考えていると、後ろに控えていた葵さんが耳元で教えてくれた。

「私の娘です」

 え~~という気持ちとやっぱりという気持ちが入り交ざる不思議な感じだ。


「下賜する娘は、彼女だ。

 先にも説明はしてあるから理解はしているとは思うが、日本に連れて行ってくれ」


 要は永谷母娘を日本で保護しろということ言っている。


「殿下の恩情に感謝いたします」

 ハイ、わかりました。

 俺は殿下の云われるように保護しますよって感じでその場で畏まった。


「殿下」

 少女以外にこの部屋にいる人の一人が殿下に声をかける。

 ドバイでの殿下の役割は終わったよって。

 殿下は、この界隈ではわがままで通しているが、決して遊んでいるわけでもないので、結構忙しい身だそうだ。


「そうか、ではそのうち日本にもいくから日本で会おう」

 殿下はそう俺に言い残して外交官を連れて部屋を出た。


 部屋には葵さん母娘とドードンさん、それにアプリコットさんの4人だけが残った。


 へ???


「今晩はここで一泊の予定ですが、明日朝から出港させてください。

 日本へは最悪での2週間で到着させてもらえると助かります」


 アプリコットさんの予定の説明があった。

「私は明日の便で日本に一足先に向かいます。

 東京でお会いすることになりますので、安全な航海をお祈りします」


「ドードンさんも一泊ですか。

 ベッドルームもいくつかありますし、ここで泊まりますか」


「いえ、大使館の配慮で、別のホテルに予約があります。

 ここにはアプリコットを置いて参りますので、彼女もいっしょにクルーザーで日本まで運んでください」


 そういうとドードンさんも部屋から出て行った。

 アプリコットさんを除くと、ここには家族?しかいないことになる。


 日本で俺は何をすればいいのかな。

 そんなことを心配しているとアプリコットさんが話しかけてきた。


「すぐには準備できませんが、準備ができましたら日本で起業してもらいます。

 社長は葵様になる予定ですが、本郷様も役員として会社に参加してください」


「え、起業って、代理店か何かかな」


「ええ、その代理店を日本で起こします」


「代理店のことはわかったけど。幸さんだっけか。

 幸さんはどうなるのかな」


「幸さんは、日本の高校に通ってもらうことになります。

 通う高校は既に大使館の方で確保しておりますので、ご心配なく」


 そうか、幸さんは高校に通うのか。

 ひょっとしなくとも現役JKか。

 そんなんこと考えたら、またぞろ俺の息子が暴れだしそうだ。

 落ち着け、母親がすぐ傍に居るんだ。

 そんなやらしいことを考えただけでもアウトだろう。

 それに、まだ幸さんとは挨拶しかかわしていないが、自分の母親とチョメチョメするような輩は、きっと軽蔑するだろうし、正直困った。

 しかし、そうなると葵さんとのチョメチョメも今晩どころか日本につくまでないよな。


 でもどうしよう。

 確かに新婚初夜の真似事は済ませたからは、一応俺の希望は叶えられたが、一緒にいるんだ。

 あの一回…いや三回はしましたが…だけで我慢などこの先できそうにないな。

 かといって、彼女が学校に通っている時にでもって、真昼間からやろうとも言えるメンタルは俺には無い。

 そういえば俺にハニートラップかけてきた美人メイドさんも二人とも当分一緒に行動を共にすることになるよな。

 ひょっとしなくとも、やばいかも。

 あまりためすぎると、彼女たちを襲って葵さんに嫌われる未来が見えてきた。

 幸い、サラリーマン時代よりも稼がせてくれそうなので、当分は風俗でも通うか。

 でも、こういうのってに大概がばれるものだし、ばれたらばれたで嫌われる未来が………どうしよう。


 そんなことで悩んでいると、部屋に食事が運ばれてきた。

 葵さんがかいがいしく準備を手伝っている。

 どうもこの部屋の主人は俺のようで、食事は全員分あるようなのだが、俺だけが食べるためにに準備しているのが気になる。


「葵さん。

 すみませんがみんなで一緒に食べませんか。

 幸いアプリコットさんも日本語がわかるようですし、お話ししながら楽しく食事を食べましょう」


 そういえば午前中にドバイに着いたのだが、なんだかんだですでに夕方。

 夕食には早いが夕日を眺めながら美女たちとの食事を楽しむことにした。


 美女との楽しい会話を楽しみながらのって、楽しかったのか。

 俺は美女がいればそれだけでも十分に楽しめるが、食事中の会話って、あれ無いわ。

 気のきいたセリフ一つも吐けずに葵さんやアプリコットさんにフォローばかりをしてもらっていた。

 思い出すたびに、黒歴史に含まれそうな気がしてきた。

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