専門技能講習、終了

なんだかんだで三か月、アンジェリカやマーガレーテと楽しく過ごしてたら、あっという間に過ぎてしまった。

もうお別れかぁ。


マーガレーテが連れて来た受講者たちは、医療魔法組がレベル13、それ以外の人たちはレベル11にまで上がった。

魔素感知や魔素制御もかなり上達したので、これなら王都組も充分王命を遂行したと言えるでしょ。

医療魔法組も腫瘍の除去や神経の接合も可能だから、あとは王都に帰って診療しつつ技量を上げてね。


でも、初の有償レベルアップ希望者(受講者たち)受け入れで、ちょっと困った問題が発覚したの。

今回の受講者たちはマーガレーテの魔法技能習得っていう別目的があったから私やマーガレーテが指導したけど、その際、レベルアップで増えた魔素の制御に苦労してたから、そっちも結構指導した。


次から来るお客さんはレベルアップが主目的だから、当初の計画では魔素感知と魔素制御の講習をしたら、あとは自己研鑽してもらうはずだったの。

だけど今回の受講者たちを見てると、自己研鑽では増えた魔素の制御に結構苦労してた。

だから次のお客さんに自己研鑽だけさせちゃうと、なかなか次のレベルに上げられないことになっちゃうの。


単純にレベルだけ上げるなら早いんだけど、そんなことしたら自分の魔素をまともに制御できないへっぽこさんを量産してしまう。

自分の魔素をちゃんと掌握してから次のレベルに行くなら、かなり高い制御力が身に付く。

だけど一気にレベルを上げてからだと、増えすぎた魔素に振り回されちゃって、制御力がなかなか身に付かないんだよね。


だから講習で補助しつつ、着実にレベルアップするのが望ましい。

だけどそうなると、講師はお客さんが目標レベルになるまで付きっきりになってしまう。

そうなると講師できるのが私とフィリーネしかいないから、私たちはめちゃめちゃ忙しくなっちゃうよ。


フィリーネはお城のハウスキーパー的存在だから、そんな講師なんかしたら仕事に支障が出ちゃう。

かといって私が講師するのも、結婚準備や代官夫人のお仕事覚えなきゃいけないから難しいんだよね。

お義母様と手紙で連絡とってるんだけど、箇条書きにされた結婚準備の内容を見て、私、目まいしちゃったもん。


そこで私とマーガレーテ、フランツで悩んだ結果、講師を育てることになった。

だけど講師を育てるために私たちが指導したら意味がないので、マーガレーテの部下候補たちを、ローテーションを組んで指導役になってもらうことになったの。


マーガレーテはこれから継嗣教育が本格化して魔法関連の現場を離れるので、部下候補たちはマーガレーテのお仕事を引き継ぎつつ、領都で実務のお勉強の予定だった。

部下候補は医療、魔導機器、戦闘技能各二人ずつで六人もいるから、医療と魔導機器分野一人ずつのローテーションで、レベル上げに来るお客さんとこちらで採用した講師候補を指導してもらう計画です。

戦闘技能はミシエラの工兵でも教えられそうだから、めぼしい人にあたりを付けておこう。


講師候補は、ミシエラの工兵や診療所からの採用で、やはり各分野二人ずつの六人。


工兵は魔獣討伐もするからとレベル10まで上げてるし、森内で私やフランツの魔獣討伐指導も受けてる。

だから戦闘技能は当然として、もう少し教えれば魔導機器だって作れるはずだ。


診療所の二人も、医療魔法を覚える気満々の人を移住者として受け入れてるから、レベル12までは上げてある。

治療実習見学して感嘆の声を上げてたから、医療魔法習得も早いと思う。


ミシエラは住民が少ないから患者数も少なくて、治療費では診療所は運営できないだろうと診療所は完全町営。

元々診療所には二人しかいないから受講中は閉まっちゃうんだけど、何度もやった医療魔法の治療実習でミシエラの患者さんはほとんどいなくなってるはず。

万一急患が出たら、お城に来るように周知しておけばいいし。


こんな体制でいくことにはなったけど、アンジェリカとマーガレーテが帰っちゃうよー。

お城の外庭でお見送りしてるんだけど、名残惜しくて仕方がない。

二人が改装したお部屋、ちゃんと掃除してきれいに保っておくから、いつでも遊びに来てねー。


なんか受講者(もう元受講者か)たちが軍隊みたいに敬礼して来るけど、ここは軍隊じゃないぞ。

あんたらは技能習得済んだんだから、さっさと帰っていいよ。


「おい、未来の代官夫人。少しは取り繕え」

「あ、そうだった。みなさんは頑張って技能を身に着けました。ぜひその技能を、民のため、領のため、お国のために役立ててください。そうすれば、きっとあなた自身も幸せになれるはずですから。皆さんのこれからの活躍を期待しています」

「変わり身すげぇ」


ちっ、せっかくいいこと言ったのに、元受講者の一人がぼそっとつぶやきおった。声、でけえよ。


「うっさいそこ、シバくぞ!」

「はっ、申し訳ありません!」

「お姉様……。激励のお言葉が台無しですわ」

「……ダメ?」

「近い未来の代官夫人としては、完全に落第点ですわ」

「…フランツ、ごめん」

「アンジェリカやマーガレーテが大好きなのは知っているが、結婚したら公式の場では取り繕ってくれるとうれしいな」

「フランツ叔父様、お姉様に甘すぎですわ。お姉様も、お姉様の失態はフランツ叔父様の瑕疵になりますのよ。叔父様が許してくれると分かっていても、甘えすぎです」

「…はい、反省します」

「アカリ姉様頑張って。今度は遊びに来るから」

「うん、待ってる」

「どうしますのこの空気。受講者を送り出す雰囲気ではありませんよ」

「……ごめんなさい」

「みんなすまん。グダグダになってしまったが、君たちが高度な技能を習得して、これから羽ばたいていくのは確かだ。皆の活躍に期待する!」

「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」

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