自慢しぃ仲間は、気持ちが共有できて楽しい

昼食をはさみ、午後からはフィリーネはお洗濯。

フランツは私と一緒に魔獣罠の視察。

他の兵士さんたちは、町にどれだけの家が建てられそうか確認に行ってます。


家の建築予定地横に建材用の石材積んでおいたから私は建てられる戸数を知ってるんだけど、先遣隊のお仕事としてちゃんと確認するのは当然だよね。


建てられる戸数は、普通サイズの一軒家としたらおよそ千二百戸。

商店や宿泊施設、共同住宅や公共施設なんかも建てるだろうから、多分千戸くらいになるんじゃないかな。


家を三階建てにして、一戸当たり七人が居住すれば、町の人口はおよそ七千人。

だけどこの町は食料自給率が壊滅的だから、そんなに居住させると食料運搬がとんでもないことになる。


しかもこの町を作る目的が魔獣討伐によるレベル上げだから、他の町みたいに農家さんは要らない。というより、いても畑作れないから仕事が無い。


さすがに町民数十人では町を維持できないから、数百人単位に留めるのがいいんじゃないかな。


あれ? 住居エリア、そんなに要らないじゃん。

だったら段々畑にして、作物作るか?

そうすれば食糧輸送の回数減らせるし、地産地消だから価格も安く抑えられるぞ。

この町は、マチュピチュ目指すべきなのかも。



フランツ、罠に掛かった魔獣見て『魔獣の前に無防備に立てるとはな』ってつぶやいて変な顔してるな。

魔獣が鉄格子にかじり付いてうるさいけど、ぽけーっと鉄格子の前に立ってる。


実はこの魔獣罠、稼働してるのは全体の十分の一くらい。

魔獣は小さいのやスライムもいるから、普通の牢屋みたいな鉄格子だと抜けられちゃうんだよ。

だから通路との仕切りは、グレーチングみたいに細かい格子で仕切ってます。


そのために必要な鉄が多くて、私の手持ちだと少ししかできなかったんだよね。

だから大半の罠エリアは、鉄格子無くて入り口ロックしたままです。

「あ、スライム発見! 捕獲したいから他の魔獣倒していい?」

「お、おう」


飛剣魔法でドスドスドスドス、よし、スライムだけになった。

スライムを盾魔法で箱詰めして、鉄格子の扉を開けて確保。魔獣の死骸は他次元庫行きです。


「なるほどな。個別に仕切ってあるから、その部屋の魔獣だけ倒せば、中にも入れるわけか。しかも部屋の奥行きが狭いから、短槍で充分届く。考えられてるな」

「こういう仕組みを考えながら作って、上手く動作するとうれしいんだよね。お城の地下に移動していい?」

「ああ、仕組みは分かったからな。だが、よくこれだけ魔獣が掛かるな」

「最初はなかなか掛からなかったんだけど、一匹掛かって倒したら、次々来るようになったよ。多分倒す時に出た血の匂いとかに寄って来るんだと思う」

「なるほど、釣り餌要らずでいいな」

「でしょ」

「おい、階段を浮いて上がるのはズルくないか?」

「だってここ一階層だよ。お城まで歩いて上がったら、途中でへこたれるって」

「……来客用の宿舎は、一階に作るべきかもしれんな」

「どうせお城で面会したりするんだから、上の階の方がいいでしょ。魔導車用の登坂道が三本あるから、あそこ使って昇り降りすればいいじゃん」

「あの広い坂道は、そのためのものか」

「登りと下りで対向できるようにしてあるの。歩きなら各層七か所に階段があるよ」

「どこまで至れり尽くせりなんだ。おい、俺を置いていくな」

「ああもう。ほら、一緒に飛ぶよ」

「うおっ!?」

「ね、飛ぶと楽々」

「……鳥はこんな感じなのか。捕まる場所や地面が無いから心細い感じだが、風は気持ちいいな」

「でしょ。ほら、着いたよ」

「なかなかの体験だった」

「フランツって、今レベル12?」

「ああ、確かそのくらいだ」

「もう充分飛べるレベルなんだから、練習すればいいのに」

「は? 俺は飛べるのか?」

「盾魔法を地面に展開してみて」

「こうか?」

「うん、その上に立って」

「ああ」

「そのまま盾魔法を、少し上に移動」

「……盾魔法の上に立ってるだけだが、浮いてはいるな」

「とりあえずその盾を、低空のまま進めたら」

「おおお! 少しバランスをとる必要があるが、空中を進めるぞ」

「盾魔法をコップ状にしたら、こけなくなるよ」

「…アンジェリカやマーガレーテもこうして飛んでいるのか?」

「二人は盾を動かすんじゃなくて、自分自身を動かしてるの。だけど身体全体を浮かせるようにしないと、力が掛かった部分が痛かったり、足だけ浮かせるとひっくり返るから慣れが必要なの」

「…二人はすでにそこまで習得してしまっているのか。自分なりに頑張って鍛えていたつもりだったが、姪に負ける程度の努力だったか」

「アンジェリカとマーガレーテの努力は、人類最高峰かもしれないよ。あれほど真摯に努力し続けられる子に、私は初めて会ったから。最高の妹たちでしょ」

「く、ここで妹自慢が来るか。だがそれなら、俺にだって言わせろ。最高の姪たちだろう」

「ぷ、やっぱり自慢しぃ仲間だわ」

「だな」


仲間意識が再確認できたので、スライムをプールに放り込んでから残りの魔導車の改造を始めました。

フランツは報告書の下書きを始めるそうです。

昨日のうちに、机と椅子を作っといてよかったね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る