魔導車改造
2024.8.18 誤記修正(ご連絡、ありがとうございました)
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翌日、男どもの朝食をフィリーネに任せ、私は魔導車の改造。
魔導機器の取り付け場所をいじって、ベクトル方向を可変式にしました。
普段は水平前進のベクトルだけど、レバーで仰角六十度まで上方向に上げられるようにしました。
平原に降りてへこみを見つけ、わざと車輪を嵌らせて脱出試験。
仰角四十五度くらいで、アクセル少し開ければ脱出できた。
気をよくして色々実験したら、この方式には安全装置が必要になったよ。
前輪が嵌った時は仰角多めで少しアクセルを開けたら脱出できた。
だけど後輪が大嵌りすると、ベクトル推進機が前輪の前に付いてるから、後輪までの距離分ベクトルの仰角が低くなっちゃうの。
で、アクセル全開にしたら、前輪浮きました。四輪車ウイリー状態。
仰角は車体の水平方向に対しての角度なので、フロントが浮けば浮くほど地面との仰角は増え、いずれはひっくり返ります。
四輪車体でバク転失敗とかシャレにならん。
なので再度改造。
今度は仰角調整レバーが車体と水平以外の時は、ベクトル出力が半分になるようにしました。
これでフロントは持ち上がらないし、脱出でアクセル開けても、抜け出したとたんに疾走することもありません。
仰角付けると出力が半分になっちゃうけど、その分アクセル調整が楽になります。
アクセル全開でも後輪のド嵌りは抜け出せないけど、後輪の径を大きくすれば何とかなると思う。
それに車重が軽くなる分持ち上げやすくもなるから、人力対処も楽なはずだし。
まあまあの性能の軟弱地走破車ができたので、六人を乗せて試乗会。
わざとデコボコ軟弱地を走ったけど、最初から仰角付けて走ると嵌りにくいことに気付いた。
前進スピードかなり落ちちゃうけど、どうせデコボコ道走る時はスピード落とすんだから問題ない。燃費悪いけど。
後輪ド嵌りも試してみたけど、二人が降りて後ろを持ち上げただけで抜け出せたよ。
「昨日の今日でもうこれか。街道の整備などせずに済むのは非常に助かるが、あきれるほどの対処能力だな」
「だって、早くみんなで町づくりしたいし」
「楽しみは後にとっておいた方が良くないか?」
「待ってるの長いとじれちゃうよ。さっさと楽しみ尽くして、次の楽しみ見つけた方がお得じゃない? これが私の基本的なスタンス」
「享楽的な奴め」
「周りの人が苦しんでるのに、自分だけ楽しんだりはしないよ?」
「その結果がこれか。悩んでいることを解決されるのはありがたいが、即座に解決されると自分が情けなくなるぞ」
「いや、私の得意分野で解決策出しただけだし」
「……言われてみればその通りか」
「フランツは欲張り過ぎなんだよ。何でも自分で解決しようとしてるじゃない。その姿勢は人として好感が持てるけど、餅は餅屋だよ」
「…俺は欲張りなのか?」
「騎士団長が、団員のためにって自分で武器作り始めたら?」
「それは自分の領分を超えているな」
「今のフランツは先遣隊の任を全うさせるのが責務であって、町への交通手段を考えるのは、先遣隊がもたらした情報を基にしてお義父様がすることじゃん。フランツはお義父様の仕事にまで手を出そうとしてるよ。ある意味越権行為」
「…そういう意味なら確かに欲張りだな」
「今回はお義父様に情報が届く以前に、たまたま私が得意分野で解決策を見つけただけだよ」
「ああ、なんかすっきりしたそ。解決ありがとうな」
「うん、その対応が正解」
よし、なんとかフランツを落ち込ませずに済んだ。
でもまさか、フランツが交通手段の改善方法まで考えようとしてたとはね。
フランツはいずれ、ここを町に拡張して運営して行くのが最終的な目的になるはず。
そうなると交通手段の確保も仕事のうちと言えなくは無いけど、もし通るのが他領の土地なら、フランツはそこの領主に改善策を求めるのが筋だ。
今回はたまたまシュトラウス領の土地だったから、フランツは兄である領主を家族として手助けしたくて悩んだんだと思う。
たとえ自分の領分外であっても、家族を助けるために動こうとするのはフランツのいいところだけど、要らないことまで背負い込んじゃう性格かも。
今回の場合、フランツから悪路の報告を聞いたお義父様が解決策を模索して、魔導車の改造という解決案を私が出すのが本来の流れ。
たまたま私がお義父様より先に問題点を聞いて解決策思い付いちゃっただけで、魔導車の改造までしたのは独断専行と言えなくもないんだよね。
だって、お義父様の承認どころか、知らせてさえいないのにやってるし。
事後承諾取る気満々の私が悪びれてないのに、フランツが落ち込んじゃったら私はしっかり反省しなきゃいけなくなるじゃん。
『問題点はあったけど現地で解決策見つかったから、現場指揮官の裁量範囲内で対処しました』。
今回はそういうことでいいじゃん。
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