ただいま
崖の自宅近くに来たら、崖の前にジョセさんの反応が。
ジョセさん、わざわざ出迎えに来てくれたんだ。うれしいな。
「ジョセさん、ただいまー」
【お帰りなさい、アカリ。その子が精霊化しかかってる子ね】
「うん。フィリーネって言うの」
「初めまして精霊様。エルフのフィリーネと申します」
【初めまして。アカリからはジョセと呼ばれてるから、あなたもそう呼んで。でも、様付けは無しよ】
「あ。大変失礼しました。ジョセさんでいいでしょうか?」
【ええ、それでお願い。ところでアカリ、随分早く帰って来たわね】
「いやぁ…。それがね、ちょっと派手に動きすぎちゃって、あちこちから私を探されそうだったから、雲隠れに帰って来たの」
【派手って、何をしたのよ?】
「私の大好きな子が住んでる町がスタンピードに襲われたから、翼出して殲滅しちゃった」
【あなたねぇ…。精霊が人の前に姿を表したら、追いかけられるって注意したじゃない。何やってるのよ】
「分かってはいたんだけど、どうしても助けたくて…」
【アカリらしいと言えばらしいわね。でも、人に追いかけ回されたでしょ?】
「それがね、天使と間違えられて精霊探しにはなってないの」
【ああ。アカリの羽は鳥の翼だったわね。じゃあ、まだいても良かったんじゃない?】
「天使探しで神気に気付く人が来るといけないから戻って来たの。それと、フィリーネをちゃんと精霊化させてあげたかったから」
【そういうことなのね。だけどその子を完全に精霊化させるんだったら、ここじゃなくて精霊の森に住んだ方がいいわよ。アカリと違って水の大精霊から神気を補充されるわけじゃないから、精霊の果実だけだと相当な年数が掛かるわ】
「え? ……ひょっとして私、ディーネさんのお水を毎日飲んでたから二年で精霊化できたの?」
【実質は一年と少しだけど、そういうことね】
「おう、どうしよう。精霊の森のみんなに許可もらって家を建てなきゃ」
【もう住む許可はもらってあるわよ。私はそのつもりなんだと思ったから、先にみんなに話しておいたわ】
「ジョセさん、ありがとう。私、精霊の果実毎日食べれば二年くらいで完全精霊化すると思ってたよ」
【アカリの場合は事情が特殊過ぎたものね】
「精霊の森に住んだら、どのくらい?」
【普通なら三年ってところかしら】
「そうなんだ…。フィリーネ、そういうことらしいけど、大丈夫そう?」
「はい、問題ありません。というか、アカリ様の自宅が精霊の森の外だと今初めて知りました」
「ここって私が人だったころに、精霊のみんながいる場所で用を足すのが嫌で作ってもらったの」
「さすがにそれは不敬ですし、恥ずかしくもありますね」
「でしょ。だけどそうなると、しばらくここに住みながら精霊の森に家を建てるべきだね」
【その方がいいわ。アカリも初級精霊になってから神力ほとんど増えてないでしょ。せっかく帰って来たんだから、あなたも精霊の森に住んで神力を増やしなさい】
「うん、そうするよ。だけど困った。精霊の森は神気が強いから、魔獣は入れないよね? そうすると、スライムで下水の浄化ができないよ」
【スライムは神気に当てられて死んじゃうわ。だからここと同じ仕組みは無理ね。魔法で何とかしなさい】
「う~ん、これは難問かも。とりあえずしばらくはここに住んで色々考えてみるから、中を拡張するよ」
【そうね。手伝ってあげるわ】
「ありがとう。だけどその前にひとつだけお願い。ジョセさんの胸に埋まりたい」
【相変わらずねぇ…。ほら、いいわよ】
「わーい!」
ジョセさんのお胸でモフモフを堪能した後、崖の自宅の改築を始めました。
ここって元々私サイズで作ってあるから、フィリーネは天井に頭が付いちゃう。
だから部屋の追加だけじゃなくて、上への拡張もしなきゃなの。
最初に天井を高くして、部屋の広さも拡張。そしてフィリーネのお部屋も作った。
床はフローリングを敷いて、ベッドルームにはヴォイツで見つけた可愛い木目調ベッドを配置。
さらにお風呂とトイレは魔導機器化して、照明や換気扇、コンロやエアコンの魔導機器も設置したよ。
ただ、フィリーネに浴室にあった『実験禁止』の文字を見られて、ジト目を向けられちゃった。
私ってば初級精霊のくせに魔力だけは上級精霊並だから、ガンガン工事しても魔力は枯渇しない。
しかもフィリーネもレベル20は越えてるし、ジョセさんはフウタ以上に魔法が使える。
結果、夕方までには改築が終わりました。
「ジョセさん、ありがとう。すごく助かったよ」
【あなた、神力や魔力はほとんど増えてないのに、魔素の制御は格段に上がったわね。自分一人でも充分できたでしょう】
「できるけど、それだと夜中になっちゃうよ。魔素制御は、出て行ってからも毎日頑張って練習してたんだ」
【魔力量だけじゃなくて、もう魔素制御も上級精霊並ね】
「神力と精霊としての経験が、圧倒的に足りてないけどね」
【それが分かってるならいいわ】
「ジョセさん、今日は泊ってく?」
【…一緒に寝たいのね】
「ばれてた」
【もう…。仕方のない子ね】
「だって、久しぶりなんだもん」
【まだ一年も経ってないじゃない】
「それがさぁ、人間社会にいたら時間感覚が人間基準に戻っちゃって。だから精霊の感覚に戻そうと思って帰って来たの」
【…私にも覚えがあるから、強くは言えないわね。でも、違う時間の流れにいることは、常に忘れちゃダメよ】
「…実は、精霊であることすら忘れかけてた」
「早く帰って来て正解ね。あと、今日はここで泊まれないでしょ」
「え、もう改築終わったよ?」
「帰って来たなら、みんなに顔を見せなさい。そっちの子もみんなに紹介してあげなきゃ」
「あ」
「今夜は朝までおしゃべりね」
「そうだった。挨拶だけで帰れるわけない…」
「少し休憩したら、精霊の森に行くわよ」
「はあい」
そのあと、精霊の果実で軽く夕食を済ませてから精霊の森へ。
最初にフウタに挨拶しようと本体の横に降り立ったら、みんな魔素感知で私が来たこと分かるもんだから、わらわらと精霊たちが集まって来た。
おおう、一気にメルヘンワールド。
フィリーネなんて、たくさんの精霊に囲まれて固まってたよ。
そして始まる怒涛の質問攻撃。
みんな目をキラキラさせながらちょっとした出来事にも感嘆の声を漏らし、話の流れで出した私の魔導車なんて、精霊に集られてボディが見えなくなってた。
フィリーネも精霊たちが気軽に話しかけて来るもんだから、徐々に緊張も解けて笑顔が出るようになってた。
だけど、当然朝帰りでした。
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